「高齢者の急増」から「現役世代の急減」に局面が変化
株式会社CBメディカル 小林大介

医事業務

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記事の内容およびデータは掲載当時のものです。

今回から『医事業務メルマガ』を複数回にわたって書かせていただきます。
私は普段、病院・介護施設の経営支援を行っています。
最近は病床再編や建て替え、医業承継といった相談が増えています。
これらは社会保障費の抑制や建物の老朽化、少子化といった社会問題を背景にした、医療介護業界共通の課題ではないでしょうか。
今回の連載を通して、皆さまが、それぞれの地域の将来について理解し、これらの課題に向き合う一助になればうれしく思います。

高齢者数の推移

さて、医療介護の現状として、まず知っておきたいことは 「高齢者の急増」から「現役世代の急減」に局面が変化しているということです。
2年ほど前から、厚生労働省の各種会議資料にて、目にするようになったフレーズです。
グラフ1によると、2000年~2015年の15年間では53.7%も高齢者が増加しており、2015年~2025年の10年間でも8.6%の増加が見込まれています。

グラフ1 高齢者者数の推移

高齢者者数の推移

(出典)2020年6月1日 第177回社会保障審議会介護給付費分科会(オンライン会議)資料

しかし、2025年から2040年の15年間では6.6%しか高齢者は増加せず、2025年以降、高齢者の増加は緩やかになります。
高齢者数と医療介護需要は相関関係にありますので、2025年以降、医療介護需要の増加も緩やかになっていくと考えられます。
一方で、生産年齢人口(15~64歳)は2025年から2040年の15年間で16.6%減少する見込みです。
支え手不足による社会保障費の抑制はもちろん、職員の確保もさらに難しくなっていくことが想定されます。

東京と秋田県の人口増減

地域別の現状も見てみましょう。
試しに東京都と秋田県の様子を比べてみます。
国立社会保障・人口問題研究所が公表している将来推計人口をもとに65歳以上の人口と、65歳未満の人口の増減率をグラフ2にしました。

グラフ2 人口増減の推移

人口増減の推移

出典:国立社会保障・人口問題研究所 日本地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)をもとに独自に集計。

グラフ2では、2015年を基準として、各年でどれだけ人口が増減するかを示しています。
例えば、2020年時点では、2015年に比べて65歳以上人口が5%増え、65歳未満人口が1%増えていることが分かります。
10年区切りで増減率を見ていくと、東京都では、以下のように高齢者(65歳以上)が増えていきます。

2015年~2025年で、高齢者は7%増加
2025年~2035年で、高齢者は13%増加(7%→20%)
2035年~2045年で、高齢者は16%増加(20%→36%)

全国的には、2025年以降は高齢者の増加が緩やかになると言われていますが、東京都では2025年以降むしろ増加ペースが加速することが分かります。
東京都では、当分の間、医療介護需要の増加は継続していくことが分かります。
では、秋田県の様子を見てみましょう(グラフ3)。

グラフ3 秋田県の人口増減率の推移

秋田県の人口増減率の推移

出典:国立社会保障・人口問題研究所 日本地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)をもとに独自に集計。

秋田県では、2020年をピークに高齢者が減少していくことが分かります。
2045年では、2015年に比べて13%も高齢者が減少する見込みです。
65歳未満人口の減少も深刻で、2045年には2015年と比べて56%も減少する見込みです。
秋田県では、医療介護需要の減少と人手不足の両方が深刻化していくことが分かります。
このように全国的に局面変化が起こると言われている状況ですが、どのような局面変化が起こるのかは地域別に異なります。
地域別の現状を理解したうえで、医療機関の将来像を考えてくことが重要です。
次回は、各自の地域の将来像を調べることができるように、国立社会保障・人口問題研究所の人口推計を使ったデータの見方についてご紹介します。



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