2021年 春季労使交渉にのぞむ経営側のスタンス調査

人事

春季労使交渉にのぞむ経営側のスタンス調査
掲載している雑誌:賃金事情

6割の企業で新型コロナが「賃上げ」に影響

賃上げ率が「2020年を下回る」企業は26.5%

人事労務分野の情報機関である産労総合研究所(代表・平盛之)は、毎年、春季労使交渉に先がけて「春季労使交渉にのぞむ経営側のスタンス調査」を実施しています。このたび2021年の調査結果がまとまりましたので、ご報告いたします。

 

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2021年 春季労使交渉にのぞむ経営側のスタンス調査
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主なポイント

(1)2021年の賃金改定の見通し

  • 6割の企業が賃上げの世間相場を「2020年を下回る」と予測
  • 2021年に自社の賃上げ(定期昇給含む)を実施予定の企業は7割、大企業では6割
  • 自社の賃上げ率を「2020年と同程度」とする企業は55.9%、「2020年を下回る」は前回調査より大幅増の26.5%
  • 6割の企業で新型コロナウイルスの感染拡大が2021年の賃金改定に影響すると回答

(2)定期昇給制度の有無と賃金改定に向けた経営側のスタンス

  • 「定期昇給制度がある」企業は8割で、定期昇給の平均額4,863円・率1.73%
  • 定昇のみ実施予定は60.1%、定昇もベアも実施予定は7.7%

(3)2020年の賃金改定状況と経営状況

  • 2020年に賃上げを実施した企業は2019年と比較して9ポイント減の87.2%
  • 2019年度と比較した2020年度の所定外労働時間手当は「減少した」が大幅増の65.5%

(4)賞与の状況と今後の見通し

  • 2021年の年間賞与の見通しは「減少する見通し」が23.8%

(5)非正社員の雇用・賃金

  • 同一労働同一賃金に関する待遇差の見直しは、各種手当の支給要件が7割

 

調査要領

【調査名】  「2021年 春季労使交渉にのぞむ経営側のスタンス調査」
【調査対象】 全国1・2部上場企業と過去に本調査に回答のあった当社会員
       企業から任意に抽出した3,000社
【調査時期】 2020年12月
【調査方法】 郵送によるアンケート調査方式
【集計対象】 締切日までに回答のあった 235 社について集計

●集計企業の内訳

グラフ

 

調査結果の概要

(1)2021年の賃金改定の見通し

【賃上げの世間相場予測】6割の企業が賃上げの世間相場を「2020年を下回る」と予測

図1 2021年の賃上げ予測

グラフ

 企業の担当者に賃上げの世間相場予測についてたずねたところ、最も回答の多かったのは、「2020年(前年)を下回る」の58.3%であった。前回調査の20.9%から37.4ポイントの大幅増となった。ここ数年、最も回答の多かった「2020年(前年)と同程度」は20.4%であった。2018・2019・2020年調査と続けて5割程度で推移していたが、2割にまで落ち込んでいる。
「2020年(前年)を上回る」は0.9%で前回調査(8.9%)から8.0ポイント減少している。「上回る」「同程度」が減少し、「下回る」の回答が大幅増となった。
 企業規模別にみると、どの規模でも傾向は同じだが「2020年を下回る」とする企業は300~999人企業(以下、中堅企業)では5割、299人以下企業(以下、中小企業)、1,000人以上企業(以下、大企業)では6割を超える。また、「2020年と同程度」とする企業は、大企業では1割、中堅、中小企業では2割であった。


 

【自社の賃上げ予定】自社の賃上げ予測は「賃上げを実施する予定」が7割、大企業では6割

図2 2021年の自社の賃上げ予定

グラフ

 自社の賃上げについては、最も多かったのが「賃上げ(定期昇給を含む、以下同じ)を実施する予定」72.3%(前回調査68.9%)で、次いで「現時点ではわからない」21.7%(同25.1%)、 「賃上げは実施せず、据え置く予定」3.8%(同4.3%)、前回調査では回答のなかった「賃下げや賃金カットを考えている」企業も2社(0.9%)あった。
 企業規模別にみると、「賃上げを実施する予定」は大企業では61.1%、中堅企業では75.0%、中小企業では73.9%と、大企業よりも、中堅、中小企業で回答が多くなっている。「現時点 ではわからない」(2020年12月時点)と態度を保留する企業も大企業では4割弱、中堅、中小企業では2割あった。


表1-1 2021年の自社の賃上げ予定

グラフ

 

【自社の賃上げ率予測】自社の賃上げ率を「2020年と同程度」とする企業は55.9%、「2020年を下回る」は前回調査より大幅増の26.5%

図3 2021年の自社の賃上げ率予測

グラフ

 2020年と比較した際の2021年の自社の賃上げについて、「賃上げを実施する予定」と回答した企業(72.3%、170社)に聞いたところ、最も多かったのは「2020年と同程度」とする企業の55.9%(前回調査63.6%)で前回調査から7.7ポイント減少、次いで多かった「2020年を下回る」とする企業は26.5%(同 18.5%)で、前回調査から8ポイントの増加、「2020年を上回る」企業は4.7%(同9.9%)で前回調査から5.2ポイントの減少となっている。「上回る」と「同程度」が減り、「下回る」が増加した形だ。
 規模別にみると、大企業は他の規模よりも「上回る」が多く9.1%で、「同程度」「下回る」については他の規模よりも少なくなっている。産業別にみると、製造業の「下回る」は33.8%で、非製造業(21.2%)よりも12.6ポイント多い。


表1-2 2021年の自社の予想賃上げ率

グラフ

 

6割の企業で新型コロナウイルスの感染拡大が2021年の賃金改定に影響すると回答

図4 新型コロナウイルス感染拡大による自社の賃金改定への影響

グラフ

 新型コロナウイルスの感染拡大の収束の目途がたたないなか、厳しい経済情勢が続いている。今回調査では、新型コロナウイルスの感染拡大が、自社賃金の改定に影響を与えるかを聞いた。
調査結果をみると、新型コロナウイルスの感染拡大が「影響すると思う」が59.1%、「影響しないと思う」は22.1%、「わからない」が18.7%であった。
 企業規模別にみると、大企業、中小企業では「影響すると思う」が6割と高く、「わからない」は中堅企業が3割弱と高い傾向にあった。
 産業別にみると、製造業では「影響すると思う」が69.0%、非製造業では51.9%と、17.1ポイントの開きがある。本調査は昨年12月時点の企業の態度を聞いたものだが、年明けの状況から「影響すると思う」とする企業がさらに増えることも予想される。


 

(2)定期昇給制度の有無と賃金改定に向けた経営側のスタンス

「定期昇給制度がある」企業は8割で、定期昇給の平均額4,863円・率1.73%

図5 定期昇給制度の有無と 2021 年賃金改定の予定

グラフ

 「定期昇給制度がある」とした企業は77.9%(前回調査 80.0%)、「定期昇給制度はない」は19.6%(同19.1%)であった。額・率に記入のあった企業の定期昇給の平均額・率は4,863円・1.73%で、前回調査(4,682円・1.71%)からは額・率は若干増加している。
 企業規模別にみると、「定期昇給制度がある」は大企業72.2%(平均額4,924円・率1.61%)、中堅企業76.3%(平均 額5,137円・率1.86%)、中小企業80.7%(平均額4,66 3円・率1.69%)で、導入率が高い中小企業と低い大企業では8.5 ポイントの差がある。また平均額・率は中堅企業が高かった。
 産業別にみると、製造業81.0%(平均額5,009円・率1.81%)、非製造業75.6%(平均額4,742円・率1.66 %)で、導入率、額・率ともに製造業のほうが高くなっている。


表2-1 定期昇給制度の有無

グラフ

 

定昇のみ実施予定は 60.1%、定昇もベアも実施予定は7.7%

 定期昇給制度のある企業に、2021年の賃金改定について聞いたところ、「定期昇給のみ実施する予定」は60.1% (前回調査47.9%)、「定期昇給もベースアップも実施する予定」は7.7%(同16.0%)であった。連合のベースアップ要求が復活した直近8年の状況をみると、定期昇給もベースアップも実施する予定は2014年の6.3%を底に、2015~17年は10%前後で推移し、2018年15.4%、2019年13.3%、そして2020年16.0%と上昇傾向にあったが、2021年は7.7%に落ち込んだ。


表2-2 2021年の賃金改定について(定期昇給制度がある企業)

グラフ

 

(3)2020年の賃金改定状況と経営状況

2020年に賃上げを実施した企業は2019年と比較して9ポイント減の87.2%

 2020年に「賃上げを実施した」企業は87.2%(前回調査 96.2%)、「賃上げを実施しなかった(据え置き)」企業は5.5%(同2.1%)で、前回調査では回答のなかった「賃下げを実施した」企業は0.9%であった。1人平均賃上げ額・率は5,129円・1.85%である。
 企業規模別・業種別にみると、「賃上げを実施した」企業は、大企業は91.7%で1人平均賃上げ額・率は4,621円・1.64%、同様に中堅企業は83.8%、5,462円・1.94%、中小企業は88.2%、5,097円・1.86%であった。
 産業別にみると、賃上げを実施した企業は製造業89.0%(1人平均賃上げ額4,980円・率1.84%)、非製造業85.9%(同額5,250円・率1.85%)となっている。


表3 2020年の賃金改定状況

グラフ

 

2019年度と比較した2020年度の所定外労働時間手当は「減少した」が大幅増の65.5%

図6 前年度と比較した時間外労働手当の推移

グラフ

 2019年度と比較した2020年度の所定時間外労働手当が「ほぼ同額」は27.2%(前回調査44.7%)、「増加した」は5.1%(同21.3%)、「減少した」は65.5%(同32.3%)で、前回調査と比較すると「減少した」が33.2ポイントの大幅増で、大企業では8割近い回答となっている(77.8%)。
 時間外労働も含めた直近1年間の総労働時間の増減状況については、「一部減少している」が42.1%(同34.0%)で最も多く、次いで「全員減少している」25.1%(同8.5%)、「とくに変化はない」16.6%(同29.4%)、「一部増加している」11.1%(同23.8%)となっている。総労働時間が「増加している(全員増加している+一部増加している)」は12.4%(同25.5%)、「減少している(全員減少している+一部減少している)」は67.2%(同42.5%)と、総労働時間が減少している企業が7割近くとなった。
 時間外労働手当や総実労働時間が減少した背景には、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、一時帰休や残業規制、時差出勤などを行った企業が多かったこともあるだろう。
 また、コロナ禍を機に、在宅勤務をはじめとするテレワークを導入した企業が増えたことも一因と考えられる。在宅ワークは労務管理の難しさもあり、厚生労働省のテレワークにおけるガイドラインやモデル就業規則では、在宅勤務者の時間外労働、休日労働および深夜労働は原則認めない規定例を推奨している。


 

(4)賞与の状況と今後の見通し

2021年の賞与の見通しは「減少する見通し」が23.8%

 2020年に比べて年間賞与が「増加する見通し」とした企業は6.4%(前回調査7.2%)で前回調査より0.8ポイントの減少、同様に「ほぼ同額」は23.0%(同37.0%)で14.0ポイント減少、「減少する見通し」は23.8%(同15.7%)で、8.1ポイントの増加となった。
 企業規模別にみると、「増加する見通し」は中小企業(8.4%)で、「減少する見通し」は中堅企業(28.8%)で高くなっている。産業別では、「減少する見通し」が製造業では34.0%と、非製造業よりも17.7ポイント高い。なお、調査時点である2020年12月での見通しを聞いていることもあり、例年同様「現時点ではわからない」も4割ほどある。
 また、業績連動型賞与制度を導入している企業は34.9%(前回調査37.0%)で、前回調査から2.1ポイントの減少となった。経年でみるとおおよそ3割台で推移している。業績連動型賞与制度を導入している企業のうち、「最低保障がある」とした企業は34.1%(同34.5%)だった。


 

(5)非正社員の雇用・賃金

同一労働同一賃金に関する待遇差の見直しは、各種手当の支給要件が7割

図7 正社員と同じ仕事をしている非正社員の
待遇差の見直し状況(複数回答)

グラフ

 同一労働同一賃金への対応状況を聞いたところ、まず「正社員と同じ仕事をしている非正社員がいる」企業は55.7%で、中堅企業では65.0%と割合が高くなっている。「正社員と同じ仕事をしている非正社員はいない」は41.7%だった。
 正社員と同じ仕事をしている非正社員がいる企業のうち、待遇差について「見直しが完了した」とするのは35.9%、「見直しに着手した」は39.7%で、「見直していない」は20.6%あった。企業規模別にみると、昨年4月から施行となった大企業では68.4%が「見直しが完了した」としている一方で、適用が今年の4月からとなる中小企業では33.3%が「見直していない」と回答している。
 待遇差の見直しについて「完了した」「着手した」と回答した99社に、待遇差の見直し状況を聞いた。最も回答の多かったのは「各種手当の支給要件の見直し」71.7%、次いで「休暇制度の見直し」41.4%、「非正社員の基本給」27.3%、「非正社員の賞与」25.3%と続く。


 

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※ 詳細データは「賃金事情」2021年2月5日号にて掲載しています。

 

本リリースに関する取材などのお問い合わせ

株式会社産労総合研究所「賃金事情」編集部   担当:境野、伊関
TEL 03(5860)9791   MAIL edt-a2@sanro.co.jp

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