2013年 春季労使交渉(春闘)にのぞむ経営側のスタンス等に関する調査

人事

春季労使交渉にのぞむ経営側のスタンス調査
掲載している雑誌:賃金事情

民間のシンクタンク機関である産労総合研究所(代表・平盛之)では、毎年、春季労使交渉に先がけて、「春季労使交渉にのぞむ経営側のスタンス調査」を実施し、民間企業各社の賃上げ予定、ならびに賃上げ相場の予測等について明らかにしてまいりました。このほど、2013年の労使交渉に向けた調査結果がまとまりましたので、ご報告いたします。

 

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2013年 春季労使交渉にのぞむスタンスと人事賃金管理の方向に関する調査
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調査結果のポイント

(1)2012年の自社の賃上げの実施見通し

  • 回答企業の7割近くが「賃上げを実施する予定」、4社に1社は「現時点では未定」

(2)2013年の自社の賃上げ率の予測

  • 賃上げ率は「2012年と同程度」が9割弱(86.8%)
  • 予想賃上げ率は1.4~2.4%の範囲、前年よりばらつき目立つ

(3)定期昇給制度の有無と今後の取扱い

  • 「定昇制度がある」企業は全体の8割、うち7割が「今後も現状の制度を維持」

(4)賃金改定に向けた経営側のスタンス

  • 賃上げは「定昇のみ実施」が66.1%、「定昇もベアも実施する」が5.8%

(5)正社員以外の労働者の処遇改善・活用状況と2013年の見通し

  • 非正社員の賃金を「2012年に増額した」29.0%、「2013年に増額予定」16.8%で、いずれも増加傾向続く

(6)業績連動型賞与の導入状況

  • 中小企業で導入率が3割に達する一方、大企業では減少に転じる
  • 「最低保障」部分を設定する企業は38.5%で大幅に増加(前年25.5%)

(7)雇用関連の法律改正への対応状況

  • 改正高年齢者雇用安定法については、9割が対応済み、あるいは検討中

(8)団塊世代リタイア後の昇進・昇格管理

  • 10年前と比べて「昇進スピードが速くなった」企業は約3割

 

調査要領

【調査対象】全国1・2部上場企業と過去に本調査に回答のあった当社会員企業から任意に抽出した3,000社
【調査時期】2012年11~12月
【調査方法】郵送によるアンケート方式
【集計方法】締切日までに回答のあった155社

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調査結果の概要

(1)2013年の自社の賃上げの実施見通し

回答企業の7割近くが「賃上げを実施する予定」、4社に1社は「現時点では未定」

2013年の自社の賃上げについて、どのようなスタンスでのぞもうとしているのかをみると、「賃上げを実施する予定」と回答した企業は68.4%で、前回2012年調査(以下、単に「前年」ともいう)の67.8%から若干の増加となった。一方、「賃上げは実施せず、賃金を据え置く予定」の企業は4.5%。前年の5.7%からわずかに減少した。
また、「現時点(2012年12月)ではわからない」とした企業は4社に1社(24.5%)で、前年の23.6%から約1ポイント増加している。

図表1-1 2013年の自社の賃上げ予定

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図表1-2 2013年の自社の賃上げ予定

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(2)2013年の自社の賃上げ率の予測

賃上げ率は「2012年と同程度」が9割弱だが、一部に企業間格差が広がる傾向

賃上げを実施すると回答した企業の予想賃上げ率をみると、「2012年と同程度」が86.8%(前年83.9%)と圧倒的多数を占め、予想賃上げ率の平均は1.7%で前年調査と同じであった。他方、「2012年を上回る」は前年の8.5%から5.7%に減少、「2012年を下回る」は同5.9%から若干増えて6.6%となった。
なお、予想賃上げ率についてみてみると、1.4~2.4%の範囲と、これまでになく大きく差が開く結果となっており(前年1.7~1.9%)、ほとんどの企業では前年並みである一方、一部では賃上げ率の企業間格差が開く傾向にあると考えられる。

図表2-1 自社の予想賃上げ率(「賃上げを実施する予定」の企業=100)

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図表2-2 自社の予想賃上げ率(「賃上げを実施する予定」の企業=100)

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(3)定期昇給制度の有無と今後の取扱い

「定昇制度がある」企業は全体の8割、うち7割が「今後も現状の制度を維持」

定期昇給制度(以下「定昇制度」)が「ある」と回答した企業は前年から6.8ポイント増えて78.1%(前年71.3%)、「ない」とした企業は20.0%(同24.7%)。
規模別に「定昇制度がある」企業をみると、大企業(1,000人以上)が74.3%、中堅企業(300~999人)が81.1%、中小企業(299人以下)が77.6%となっている。
本調査では、「今後の定昇制度の取扱い」についても調べている。調査結果をみると、「現状の定昇制度を維持する」が71.1%(前年74.2%)、制度は維持しつつも「定昇額を縮小する」が14.9%(同8.9%)、「適用対象を限定する」が6.6%(同8.1%)で、定昇制度を廃止すると回答した企業は1.7%(同1.6%)のみとなっている。

図表3-1 定期昇給制度の有無

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図表3-2 今後の定期昇給制度の取扱い(定期昇給制度がある企業=100)

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(4)賃金改定に向けた経営側のスタンス

賃上げは「定昇のみ実施」が66.1%、「定昇もベアも実施する」が5.8%

定昇制度のある企業が2013年の賃金改定にどのようなスタンスでのぞむのかをみると、「定昇のみ実施する予定」と回答した企業が最も多く66.1%、次いで「現時点(2012年12月)ではわからない」が28.1%で、前年とほぼ同様の結果に。「定昇もベアも実施する予定」と回答した企業は、前年の4.0%から若干アップして5.8%となった。
規模別にみると、中小企業で「定昇もベアも実施する予定」が、11.5%(前年5.8%)と倍増しており、注目される。

図表4-1 賃金改定に向けた経営側のスタンス(定期昇給制度がある企業=100)

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図表4-2 賃金改定に向けた経営側のスタンス(定期昇給制度がある企業=100)

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(5)正社員以外の労働者の処遇改善・活用の状況と2013年の見通し

非正社員の賃金を「2012年に増額した」29.0%、「2013年に増額予定」16.8%で、いずれも増加傾向続く

2012年に正社員以外の労働者(パート・アルバイト、契約社員、派遣社員、嘱託社員等。以下、「非正社員」)の賃金、手当等について見直しを行ったかどうかをみると、前年同様、「見直していない」が61.9%(前年63.2%)で最多となったものの、「賃金を増額した」企業も29.0%(前年25.3%)に増加した。
では、2013年はどのような見通しをもっているかをみると、「見直す予定はない」が43.9%(同45.4%)で、「現時点(2012年12月)ではわからない」の34.8%(同35.1%)を上回っている。一方、「賃金を増額する予定」の企業は16.8%(同15.5%)と、わずかではあるが増加傾向を維持した。

図表5-1 非正社員賃金の見直し状況と2013年の見通し

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図表5-2 非正社員賃金の見直し状況と2013年の見通し

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(6)業績連動型賞与の導入状況

中小企業で導入率が3割に達する一方、大企業では減少に転じる

業績連動型の賞与原資決定方法を「導入している」企業の割合は、全体では33.5%(前年31.6%)と増加傾向にある。しかし、導入率を規模別に詳しくみると、中堅(前年27.8%→今回34.0%)、中小(同27.3%→31.3%)で増加した反面、大企業(同44.2%→37.1%)ではやや減少している。

業績連動型賞与に「最低保障」部分を設定する企業は38.5%で大幅に増加

業績連動型賞与は、業績指標の結果に対して、あらかじめ設定された配分基準をデジタルに対応させる方式であり、業績の変動によって賞与の支給額も変動する。しかし、賞与・一時金のもつ生活保障機能に配慮して、業績変動の影響を受けない最低保障を設ける例も少なくない。
今回の調査結果によれば、「最低保障がある」企業は前年の25.5%から大幅に増加し、38.5%となった。すべての規模区分で前年の数値を上回った。ただし、最低保障の月数等については企業によってかなり幅がある。

図表6-1 業績連動型賞与の導入状況

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図表6-2 業績連動型賞与の導入状況

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図表6-3 最低保障の有無

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(7)雇用関連の法律改正への対応状況

改正高年齢者雇用安定法については、9割が対応済み、あるいは検討中

今春には、雇用関連法の改正事項の施行がいくつか予定されている。各改正事項について、現時点における対応状況についてたずねた。

まず、改正労働契約法(有期労働契約に関して、無期労働契約への転換、不合理な労働条件の禁止等。2013.4.1施行)については、「すでに対応策を決定」は11.0%にとどまり、「検討中」60.6%、「取り組んでいない」12.3%などとなった。

改正高年齢者雇用安定法(継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止、義務違反企業の公表等。2013.4.1施行)については、「すでに対応を決定」が19.4%、「検討中」が71.6%で、あわせて9割の企業は対応済みか対応検討中という結果になった。

障害者雇用安定法(障害者雇用率の1.8%から2.0%への引き上げ等。2013.4.1より)については、「すでに対応策を決定」が18.1%、「検討中」が52.9%。

労働者派遣法(日雇派遣の禁止、グループ企業派遣の8割規制等。2012年10月1日施行。なお、違法派遣等の労働契約申込みなし制度は2015.10.1施行)については、「経営にほとんど影響ないので、対応策は考えていない」が52.9%と過半数を占めた。

図表7 2013年度に予定される法改正への対応

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(8)団塊世代リタイア後の昇進・昇格管理

10年前と比べて「昇進スピードが速くなった」企業は約3割

団塊世代が60歳の定年を迎えてからすでに5年程度が経過し、多くの企業では再雇用等を経て、団塊世代の「完全リタイア」期を迎えているはずである。本調査では、団塊リタイア後の昇進・昇格管理についてたずねた。
まず、団塊一斉リタイア後の役職の状況をみるために、昇進管理について聞いてみた。10年前と比べて昇進スピードが「速くなっている」と答えた企業は全体の32.3%で、「遅くなっている」22.6%を10ポイント程度上回った。

図表8-1 昇進スピードの変化

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資格等級制度等を導入している企業では、従来から、運用上の問題として、管理職の一歩手前の資格等級に多くの者が滞留し、モラールダウンを引き起こしてしまう問題(滞留問題)が指摘されてきた。この滞留問題が現在発生しているかを聞いてみると、「発生しており、対策が必要」とする企業は26.5%。「近い将来発生が予想される」を併せると、過半数の企業が滞留問題を抱えていることがわかった。とりわけ大企業では、「発生しており、対策が必要」が4割に上っている。

図表8-2 管理職直前の資格等級に滞留者が増加する問題

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※ 詳細データは「賃金事情」2013年2月5日号にて掲載しています。

 

本リリースに関する取材などのお問い合わせ

株式会社産労総合研究所「賃金事情」編集部   担当:吉田
TEL 03(3237)1611   MAIL edt-a2@sanro.co.jp


※上記電話番号はリリース発表当時のものです。お問い合わせは 03-5860-9791 にお願いします。

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