2019年 研修時の日当、時間外・休日労働の取り扱いに関する実態調査

人事

研修時の日当、時間外・休日労働の取り扱いに関する実態調査
掲載している雑誌:企業と人材

時短の取り組みが人材育成の足かせに? 働き方改革によって、「研修運営に影響が出ている」とする企業が約5割

 人事労務分野の情報機関である産労総合研究所(代表・平盛之)は、このたび「2019年 研修時の日当、時間外・休日労働の取り扱いに関する実態調査 」を実施しました。2005年以来、14年ぶりの調査となります。
 前回調査時に比べ、「時間外に行う研修も一部ある」とする企業が増えているなか、およそ2社に1社は、働き方改革の取り組みによって、研修日程やプログラム内容などに影響が出ているという結果となった。

 調査は、大企業を中心に、312社の人材開発部門の担当者に聞いたもの。本リリースでは、調査結果のうち「社内研修が時間外、もしくは休日に及ぶことがあるかどうか」、そして「働き方改革の取り組みが進むなか、そうした研修の運営・実施に影響が出ているかどうか」について紹介します。

 

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2019年 研修時の日当、時間外・休日労働の取り扱いに関する実態調査
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調査結果のポイント

(1)時間外での社内研修の実施状況

  • 「一般社員が日帰り研修を受講する場合」に限定してみてみると、約6割の企業が「時間外には研修は行わない」とした。ただし、前回調査と比較すると、「時間外には行わない」企業は減っており、かわりに「時間外に行う研修も一部ある」が約2割から4割へと倍増している。

(2)休日での社内研修の実施状況

  • 「一般社員対象の研修を法定外休日に行う場合」に限定してみると、約7割の企業が「休日には研修は行わない」とした。こちらは、前回調査と比べても、大きな違いはみられなかった。

(3)働き方改革が社内研修の運営・実施に及ぼす影響

  • 働き方改革の「時間外労働削減」などの取り組みが,人材開発部門が実施する社内研修に影響を及ぼしているかどうかをたずねたところ、「影響あり」企業(大半の研修で影響+いくつかの研修で影響)と「まったく影響なし」企業とが、ほぼ半分ずつという結果になった。「影響あり」は1,000人以上企業では63.2%。

(4)働き方改革による影響の具体的内容

  • 「影響あり」企業に、どのような面で影響を受けているのかをたずねると、「研修の開始・終了時間を変更」77.9%、「宿泊型の研修を縮小・休止」27.9%、「事後課題の軽減、休止」15.6%などという結果であった。

 

調査要領

【調査対象】 上場企業および当社会員企業から任意に抽出した約3,000社
【調査時期】 2019年1〜3月
【調査方法】 郵送によるアンケート調査方式
【集計対象】 締切日までに回答のあった312社について集計

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調査結果の概要

(1)時間外での社内研修の実施状況

「時間外には研修は行わない」58.7%、「行う研修も一部ある」40.4%(一般社員・日帰り研修の場合)

 まず、企業研修には、人材開発部門などが自社の社員を対象に実施する「社内研修」のほか、外部の教育会社・団体などが開催する「社外研修」があるが、本調査では、社内研修において、研修時間が就業時間外に及ぶことがあるかどうかをたずねている。
 対象を、「一般社員が日帰り研修を受講する場合」に限定してみてみると、約6割の企業が「時間外には行わない」とした(図1、表1)。ただし、これを前回2005年調査と比較すると、「時間外には行わない」割合は減少しており、かわりに「時間外に行う研修もある」の割合が、ほぼ2倍に増えていることがわかる。
 その理由の1つとしては、この十数年の間に、研修のスタイルが「知識インプット中心」から「グループディスカッション中心」へと変化してきていることがあるだろう。ディスカッション中心の研修は、十分に議論し考えを深めることを目的とするため、研修時間を長めにとることが多い。また、議論が迫熱した場合には予定を変更し、時間を延長したりする場合もあるだろう。研修を企画・実施する人材開発部門の担当者としては、研修効果の最大化を図るため、最初から時間外に及ぶ研修プログラムとすることも少なくないと考えられる。

図1 時間外での社内研修の実施状況(一般社員・日帰り研修の場合)

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表1 時間外での社内研修の実施状況(一般社員・日帰り研修の場合)

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(2)休日での社内研修の実施状況

「休日には研修は行わない」68.0%、「行う研修も一部ある」31.7%(一般社員・法定外休日の場合)

 次に、研修が休日に実施されることがあるかどうかについて見てみたい。これについても、対象を「一般社員が法定外休日に行われる研修を受講する場合」に限定してみる。
 調査結果は、約7割が「休日には研修を行わない」としている。前回調査と比較しても、こちらはそれほど大きな違いはみられない。また、規模、業種によっても違いはない(図2、表2)。

図表2 休日での研修の実施状況(一般社員・法定外休日の場合)

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表2 休日での研修の実施状況(一般社員・法定外休日の場合)

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(3)働き方改革が社内研修の運営・実施に及ぼす影響

働き方改革の取り組みによって、約5割の企業が「研修の運営・実施に影響を受けている」

 企業の研修においては、「時間を忘れて議論や作業に没頭する」ような経験が、決定的に重要となることもある。また、近年、反転学習やアクティブ・ラーニングの実践が広まりつつあり、「事前課題によって知識を修得したうえでディスカッションやワーク中心の集合研修を行う」、「研修での学びを職場で実践するためのフォローアップ策をあらかじめプログラムに組み込む」といった取り組みも盛んになってきている。
 しかし、こうした研修の進め方は、研修に参加する社員に対し、職場での作業を増やすことにもなりやすい。現在の時間外労働削減の流れのなか、現場からの不満も聞こえてきそうである。
 本調査では、働き方改革の「時間外労働削減」などの取り組みが、研修の運営・実施に影響を及ぼしているかどうかをたずねた。すると、「まったく影響を受けていない」49.8%の一方、「いくつか影響を受けているものもある」45.3%、「大半の研修で影響を受けている」4.8%となり、影響あり企業(大半の研修で影響+いくつかの研修で影響)と影響なし企業とが、ほぼ半分ずつという結果になった(図3、表3)。
 規模別にみると、1,000人以上企業で「影響あり」が6割(63.2%)となっており、規模が小さくなるにしたがって「影響なし」の割合が高まる。これは、実施している研修の本数にも関係していると思われる。

図3 働き方改革の「時間外労働削減」などの取り組みによる研修運営面での影響

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表3 働き方改革の「時間外労働削減」などの取り組みによる研修運営面での影響

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(4)働き方改革による影響の具体的内容

働き方改革による影響は「研修の開始・終了時間の変更」「宿泊型研修の縮小」など

 前項の影響あり企業(大半の研修で影響+いくつかの研修で影響)に、どのような面で影響を受けているかをたずねてみると、いちばん多かったのが「研修の開始・終了時間を変更」77.9%で、「宿泊型の研修を縮小・休止」27.9%、「事後課題の軽減、休止」15.6%がこれに続く(複数回答・図4、表4)。
 「研修の開始・終了時間を変更」の割合を規模別にみた場合、1,000人以上と299人以下で8割超と高くなっている。また、業種別では、製造業では「開始・終了時間を変更」の割合がやや高く、非製造業は「事後課題の軽減、休止」が高くなっている。

図4 働き方改革による影響の具体的内容(何らかの影響が生じている企業=100、複数回答)

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表4 働き方改革による影響の具体的内容(何らかの影響が生じている企業=100、複数回答)

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働き方改革の取り組みにおける研修運営・実施面での課題(自由記述・抜粋)

 最後に、自由記述形式でたずねた「研修の運営・実施面で、いま一番悩んでいること」について、調査回答の一部を紹介する。本調査結果を補完するものとしてご参照いただきたい。

・日程や終了時間の延長が難しくなり、十分に時間をかけて進行できないことがある(1,000 人以上・製造業)。
・研修の日数削減により、教えるべきことを時間をかけて教えられない。そのため、かけ足になってしまったり、休憩が十分に取れなかったりする(1,000 人以上・非製造)。
・時間外労働時間の削減に取り組む際、研修時間の削減ばかり注目しがちになり、2 日間の研修開催となると、「1 日にできないのか」という声があがる。効果から考えると 2 日かけるほうがよいため、研修効果を考えた所要時間を納得して確保してもらうことが課題(1,000 人以上・製造業)。
・事前・事後課題の負担が大きく、量を減らすべきか悩んでいる。研修開催月が限られるため、講師のスケジュール調整に苦労している(1,000 人以上・製造業)。
・労働時間の削減により、事前課題に「参考書を読む」ということがしづらくなった。それにより、社員は知識不足で研修に臨むことになってしまっている(1,000 人以上・非製造)。
・研修に参加することによって職場での実働時間が減り、その分は過勤務で対応する事態になることもある。結果的に、研修に対してネガティブな印象をもつ社員が増え、研修効果が下がることを懸念している(1,000人以上・製造業)。
・残業縮減の副産物として、自己啓発、自主参加型の研修の応募が相当減った。本務を効率良く片づけられる社員のみが教育に参加できる。こんな図式でいいのだろうか(300~999 人・非製造)。
・働き方改革で空いた時間を自己研鑚、自己啓発に充ててほしいが、そのような意識は薄い(1,000人以上・ 製造業)。

 

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※ 詳細データは「企業と人材」2019年5号に掲載しています。

 

本リリースに関する取材などのお問い合わせ

株式会社産労総合研究所「企業と人材」編集部   担当:石田、綿貫、黒田
TEL 03(5319)3605  MAIL edt-e@sanro.co.jp


※上記電話番号はリリース発表当時のものです。お問い合わせは 03-5860-9795 にお願いします。

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