医療経営情報研究所が発行する『医事業務』(編集長・田中利男)では、医療機関が独自に設定する自費料金の実態について、初めて調査を行いました。厚生労働省が定める「療養の給付と直接関係のないサービス等」のうち88項目の取り扱いについて明らかにしています。このほど調査結果がまとまりましたので、その概略をご報告いたします。
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調査結果のポイント
(1)自費料金の費目別金額水準―[1]各種予防接種
- 病院が設定する自費料金には、金額的にばらつきが大きいものも
- インフルエンザ予防接種は全国平均3,332.1円、風疹ワクチンは同5,867.1円
(2)自費料金の費目別金額水準―[2]大人用紙おむつ、テレビカード
- 大人用紙おむつの購入代金は、全国平均127.6円、最高600円、最低20円
- テレビカードは1枚あたり平均1,003.2円、最高3,000円、最低500円
(3)自費料金の費目別金額水準―[3]診療録(カルテ)関連
- 診療録(カルテ)に関する自費料金の平均額は、開示基本手数料2,732.7円、医師の説明(30分)5,450.2円、複写59.2円など
(4)地域別にみた自費料金の費目別金額水準
- 全体的に金額水準が高いのは「関東」と「甲信越、中部」
調査要領
【調査対象】 当所会員施設等から一定の方法で抽出した7,467医療機関
【調査時期】 2013年9月
【有効回答数】581施設
(北海道55、東北70、関東160、甲信越・中部85、近畿65、中国・四国64、九州72、沖縄10)
※無回答は集計から除外しているため、回答数は設問ごとに異なる。
医療機関の「自費料金」について
医療経営情報研究所では、今回、初めて保険医療機関が独自に設定する自費料金の実態について調査を行いました。以下、調査実施の趣旨および背景事情について簡単にご説明します。
日本では公的医療保険制度が整備され、政府が診療・調剤に関する価格を決定しています。しかし、ごく一部ですが、医療機関が独自に価格決定できるものもあり、それらは「自費料金」と呼ばれています。
自費料金には大きく分けて、「[1]保険外併用療養費」と「[2]療養の給付と直接関係ないサービス等」の2つがあります。[1]保険外併用療養費は入院時の差額ベッド代や時間外診療などのことで、これらは各地方厚生局に徴収金額を届け出ることが義務付けられています。一方、[2]療養の給付と直接関係ないサービス等は、おむつや病衣など日常生活で必要となるものや、予防接種など保険診療に該当しないものを言います。こちらは行政への届出義務はありませんが、患者の同意や説明義務があり、適切なルールを遵守しなければなりません。
自費料金に関する問題の1つは、料金設定の基準について「社会常識上妥当適正な額」としか定められていないことです。そのために、かえって各医療機関では料金設定が難しくなっているようです。特に届出義務のない[2]療養の給付と直接関係ないサービス等においては、料金設定に苦慮している担当者が少なくありません。
そのような事情から、今回の自費料金調査では「療養の給付と直接関係ないサービス等」の主要88項目を取り上げて、料金の実態を調査しています。
折しも来月4月1日からは、診療報酬と消費税のダブル改定が施行されます。診療報酬に関しては、消費税増税補填分を除けば実質マイナス1.26%の改定率です。今後は、それぞれの機能、体制、人員、設備などによって、医療機関の経営状況は大きく変わってくるでしょう。そのような中で、保険診療による自己負担金に加えて実費徴収する自費料金の動向は関係者の注目を集めるところとなっています。
調査結果の概要
(1)自費料金の平均額と金額分布―[1]各種予防接種
病院が設定する自費料金には、金額的にばらつきが大きいものも
インフルエンザ予防接種は全国平均3,332.1円、風疹ワクチンは同5,867.1円
本調査は、国が定める「療養の給付と直接関係ないサービス等の取り扱い」から88項目の自費料金を独自に調査したものである。ここでは、その一部を紹介したい。
自費料金の身近な例として、各種予防接種の費用がある。例えば、図表1-1の「インフルエンザ予防接種(大人・1回目)」では、全国平均3,332.1円、最高額が6,000円、最低額が953円。全国的には最高・最低額の開きは大きいが、金額区分ごとに分布をみると、大半が2,000円台から4,000円台に集中しており、比較的ばらつきは少ない。
他の予防接種では、金額のばらつきが大きいものも見受けられる。図表1-2は、比較的よく知られているものについて、金額区分の分布をみたものである(中心的な金額帯により区分が異なる点に留意されたい)。
図表1-1 インフルエンザ予防接種(大人、1回目)の自費料金の分布
図表1-2 各種予防接種の自費料金の分布
(2)自費料金の平均額と金額分布―[2]大人用紙おむつ、テレビカード
大人用紙おむつの購入代金は、全国平均127.6円、最高600円、最低20円
入院時など、医療機関で「大人用紙おむつ(テープタイプ・Mサイズ)」を購入した場合の料金は、1枚あたり全国平均で127.6円。金額的に最も高かったところでは600円、最も低額だったところでは20円であった。
金額区分で分布をみると、中心層は「100~149円」と「50~99円」となっている(図表2-1)。
図表2-1 大人用紙おむつ(テープタイプ、自院単品、Mサイズ)の自費料金の分布
テレビカードは1枚あたり平均1,003.2円、最高3,000円、最低500円
入院時にベッドサイドに設置してあるテレビはプリペイドカード式のものがほとんどである。カード1枚あたりの料金については、平均1,003.2円、最高3,000円、最低500円となっているが、回答の95%は1,000円台で、ばらつきは少ない(図表2-2)。
続いて、1,000円台のカードを採用している医療機関について、カード1枚あたりの限度時間(テレビを見ることができる時間)をみてみると、最も多いのは「12時間~18時間未満」で40.4%。次いで「18時間~24時間未満」という結果であった(図表2-3)。
図表2-2 テレビカード(1枚あたり)の自費料金の分布
図表2-3 テレビカード(1枚あたり)の限度時間の分布(1,000~1,999円のテレビカードを採用している医療機関=100)
(3)自費料金の平均額と金額分布―[3]診療録(カルテ)関連
診療録(カルテ)に関する自費料金の平均額は、開示基本手数料2,732.7円、医師の説明(30分)5,450.2円、複写59.2円など
まず、診療録(以下、「カルテ」)の開示基本手数料は、全国平均で2,732.7円、最高15,000円、最低300円である。同様に、カルテに関する医師の説明(30分)は平均5,450.2円、最高22,000円、最低2,000円であった。金額の分布をみると、開示基本手数料は2,000~3,000円台が中心、医師説明のほうは5,000~6,000円台が中心である(図表3)。
いずれも最高・最低額の開きは大きくばらつきもあるが、医療機関によってはカルテの開示基本手数料のほかに「閲覧料」を設けているところもあり、また、医師説明の料金を開示基本手数料に含めるケースもあるようで、一概にはいえない。自費料金は個々の医療機関が独自に決めるため、必ずしも料金の設定範囲が統一的でないのが実態だ。
なお、カルテの複写は平均59.2円、最高5,000円、最低5円であった。最高額の5,000円は例外的といえ、大部分は10~30円台に集まっている。
図表3 診療録(カルテ)の開示基本手数料、医師の説明、複写の自費料金の分布
(4)地域別にみた自費料金の平均額
全体的に金額水準が高いのは、「関東」と「甲信越、中部」
最後に、これまでみた項目について、全国を8つのブロックに分け、地域ごとに算出した平均額をみることにしたい。
図表4で全国平均を100とした場合の指数をみると、東京を含む「関東」がいずれの項目でも100を超えており、金額水準が高い。これに続くのは「甲信越、中部」である。「近畿」は、項目によっては「中国、四国」や「九州」よりも金額水準が低くなっており、興味深い。
図表4 地域別にみた自費料金の平均額
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※ 詳細データは「医事業務」2014年3月1日号にて掲載しています。
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