人事の地図

インタビュー

「雑誌 × web」クロスインタビュー

Episode5

人事担当者に本当に必要なこと

編集部

最近はCHRO(最高人事責任者)という言葉がかなり前に出てきていますけれど、HRBPはどっちかっていうと生え抜きで、育てた方がいいとかそういった勘所ってあるんでしょうか?

寺崎氏

経営サイドの観点と、一人ひとりの働く側の観点の2つがあって、経営の観点で言えば、CHROは下積みを積んできて、会社のビジネスをちゃんとわかっている人の方がいいでしょう。HRBPを経由したキャリアを積んでCHROになるというのが一番望ましいのですが、ただ、そこに人事の専門性をどこまで求めるかというと、それはまた別の話なんです。

いろんな会社の人事部長を見ていると、人事の専門家じゃない人が人事部長やっていることも多いわけです。営業部門とか生産部門、技術部門でオペレーションやビジネスセンスを積み上げた人が、たまたまHRの部門長をやっているという感覚なので、ある意味ゼネラリストの果てにCHROがあるというたてつけになっちゃっている。ではこれはダメかというと、会社のビジネスはちゃんとわかっているので、ダメじゃない。

とはいえ、人事のことをある程度わからなくちゃいけません。日本のなんていうのかな、メンバーシップ型転職ローテーションの果てに人事部長になった人の中で、人事のことをある程度わかっている人ってどれだけいるかっていうと、意外といなかったりするわけです。

そしてわかっていたとしても、OpEx系の人事のことしかわからない人も結構多いので、外からCHROを連れてきた方が手っ取り早い、という考え方が出てきちゃう。あるいは、人事制度改革とか専門性が必要な場合は、コンサルタントに頼もう、という選択肢が出てくるわけですね。

だけど最近は、OpExの人事担当というのはさっき言ったように絶滅危惧種的な感じで、経営サイドとしては、「実は会社にCoEとOpExってそんなにたくさん必要ないよね、やっぱりHRBPとしてのCHROだよね」となってくるわけですね。

そうなると、やっぱり30代の半ばぐらいで、自分がCoE、OpEx、HRBPのどれをどこまで極められるかがポイントになってくるわけです。
僕もコンサルタントになったのは30代前半で、そこまでインハウスで人事の経験積んで流れ流されてコンサルタントになったわけですけれど(笑)、それでもいろいろな知見があったからコンサルの仕事ができた。

30代の前半ぐらいまでに、自分のキャリアのゴールっていったところを早めにセッティングして、それに向けて経験積んでいった方がいい。場合によってはもう外に出ちゃうのもありだよ、と。

特に今までの日本はジョブ型じゃなかったので、ジョブスペシフィックにキャリア形成や人材育成ができていなかった。だからもうちょっとだからきめ細かくやろうぜと。

日本企業って、結局これまでメンバーシップ型である以上、ジェネラリストを前提とした人材開発しかやってこなかったんで、スペシャリスト育成についてはものすごくしょぼい。人事だけに関わらず、もうちょっとジョブを前提として人材育成を強化していく、その一環として、人事スタッフの開発も考えていきましょうね、ぐらいに考えるといいのかもしれませんね。
まあ人事は人事の仕事やってんだから自分で何とかしましょう(笑)。

編集部

寺崎さんが以前お話しされていた、ヤクルトスワロ-ズの高津臣吾監督の著書にある言葉でいうならば、「気づきが学習のスタート」というお話でしょうか。
監督の仕事っていうのは、選手に気付かせることで、個々人の気づきっていうのを促すのが大事だというお話でしたよね。

寺崎氏

そうです。人事に紐づけていえば、気づきというより「キャリアデザインどうするの?」って方が重要ですね。
まずそもそも、メンバーシップ型で、会社に言われるがままに、ジョブローテーションで人事異動して、会社がやれって言われた研修に参加して、っていうのは、内向きで自主性、自律性がないキャリア形成、キャリア開発になってしまいます。

では、自分はどのようなキャリアを形成していきたいのかと考えた時のゴールが、今は60歳ではないよと。メンバーシップ型で、60歳定年65歳まで同じ会社で勤め上げる時代ではないですし、仮にメンバーシップ型の会社でも、もう40歳過ぎたら、次のキャリアを考えろっていうのが今です。

それを考えたら、もう最初のキャリアはやっぱり30代半ばぐらいに設定しておかないと、遅すぎる……というところに戻ってきたわけです(笑)。

編集部

「今あなたがやっている人事の仕事って、あなたのキャリアにとってどういう意味を持っています?」、そういう話ですよね。それ自体はずっと変わらずあったのでしょうけど、特にその年齢が早まっている?

寺崎氏

ええ、早まってます。そういう意味では、キャリアに対する意識っていうのは昔と比べれば高まってきていますね。

Episode 6 へつづく