人事の地図

インタビュー

「雑誌 × web」クロスインタビュー

Episode3

文章書けて喋れて、一人前

編集部

寺崎さんは、執筆はもちろんですが、セミナーなどの講演も結構やられていますよね。きっかけはなんだったんですか?

寺崎氏

何だったっけかな(笑)。どっちが先かでいえば執筆の仕事の方が先だったのは覚えているんですけど……一番最初にお付き合いが始まったのは日本経営協会ですね。そこでセミナーをしているうちに、それなりに喋れるなってことがわかったらしく、いろんなところから話が来るようになりました。

コンサルタントって今と昔でかなり違っていて、今はもうそれぞれのファームのツールとかメソッド、フレームワークみたいなものを中心に、誰がやっても均質なクオリティをそれなりに担保できるように整っているんですけれど、僕らが活動し始めた頃って個人芸の世界だったんです。
自分の芸風みたいなものが重要な時代だったので、「文章書けて喋れて、一人前だ」というのがコンサルティング初期の時代でした。

でもね、書くこと自体は得意だったんですけど、書くのって面倒くさかったわけですよ(笑)。喋る方は、とにかく喋ってたらお金もらえますからね(笑)。

編集部

(笑)。そんなこと言ってらっしゃいますけれど、書くのも喋るのもどちらも的確で、最先端の理論とかを紹介していただけるんで、こちらとしては安心して頼めますから(笑)。
でも、気になったんですが、そんなにコンサルタントのお仕事って、変わってきているんですか?

寺崎氏

先ほど話をしたように、もうメソッドやツールといったものが、コンサルティング会社それぞれにあるので、「それをいかにクライアントの会社にフィッティングさせてインストールしていくか」っていうのが、コンサルティングの主な業務になっているって気はしますね。
そういう意味で、先ほど話をした、ビジネスのパフォーマンスに対して、このツールってどうなのか、みたいな紐づけ方ができていない感があります。

編集部

それはつまり、ツールありきだから、クライアントにとってもっといいメソッドがあるとわかっていても、ツールにマッチしていない場合は提案できないということですか?

寺崎氏

はい。「もしかしたらこのメソッドじゃなくって、他の方がいいんじゃないか」って、言えないわけですよ、今のコンサルティングファームって。
うん。これ以上はあんまり喋らない方がいいですね(笑)。

コンサルは経験を積めば積むほど……

編集部

25年お仕事をされてきて、すごく印象に残った出来事とかエピソードってありますか?

寺崎氏

これはもうね、書けないここだけの話だっていうのなら、いくらでもありますよ(笑)。
大体人事の話ってやばい話がほとんどなので、印象に残ってることは全て言えないです(笑)。墓場まで持ってきますよって感じです。

編集部

そういう事情の所にも入っていくお仕事だったってことですよね。

寺崎氏

はい。でもね、コンサルティングの経験を積めば積むほど……なんていうのかな、予測可能性が非常に高まるんですね。
「この会社の問題はここだよね」っていうのが、最初に社長と話をすると大体わかっちゃうので、コンサルを始めて10年ぐらい過ぎたあたりから、印象に残ることが少なくなったというのはありますね。

記事でも触れましたが、結局CoEという仕事は、経験を積まないと意味がない仕事なので、一つの同じ会社にいるだけでは、経験を積むのがすごく難しいんですね。
それこそ100社200社、300社ぐらい、「いろんな会社の賃金制度、評価制度を見ました!」みたいな経験を積んでいかなくちゃいけない。

そして経験を積めば積むほど、アルゴリズム的なものができてきて、「今回はこのケースかな、あっちかな」となっちゃって印象に残らないんですよ。だから印象に残る出来事っていうのを語れるコンサルタントって、若手しかいないんじゃないかなって僕は思います。

単純な話、インハウスの人ならば転機みたいなものがあると思うんですよ。40歳の時に重要な仕事を任されたとか、そのあとはリストラ担当して大変だったねとか。でもコンサルタントっていうのは、もう山ほど経験して当たり前になっちゃっている。

ということはコンサルタントをやればやるほど、ある程度収斂されてだんだんつまらなくなってしまうんです。
なので本当に新しい動きみたいなものがない限り、コンサルタントの仕事っていうのは、実はそんなに楽しくない。だから僕にこういう話を聞いても大したこと話せないよって、よく言ってるわけです(笑)。

Episode 4 へつづく