事例 No.088 フレスタ 特集 広島の人材育成に学ぶ
(企業と人材 2017年3月号)

有期社員教育

記事の内容およびデータは掲載当時のものです。

「スマイル社員」の評価・処遇制度を導入
評価を直接フィードバックし、スキルアップを促進

ポイント

(1)従業員の8割を、パートタイマーなど「スマイル社員」が占める。スマイル社員の育成・活用にも力を入れており、公平な評価・処遇やモチベーション向上を図るため、「スマイル社員職務能力評価制度」を導入。

(2)「共通項目」と「選択項目」からなる「評価シート」でスマイル社員を評価。店課長が一人ひとりとフィードバック面談を行い、研修受講を促し納得性を高める。

(3)職務能力評価制度を導入したことにより、スマイル社員のなかから部門責任者や店長に登用される人も出てくるなど、やる気のある人が多く活躍するようになる。

130年の歴史をもつ老舗スーパーマーケット

株式会社フレスタは、広島県を中心に岡山県・山口県の3県で58店舗(グループ企業を含めると64店舗)を展開しているスーパーマーケットチェーンである。企業理念は「私たちは、お客さまの笑顔を原点に、信頼される品質と安心を提供し、食から広がる豊かで快適な『暮らし』の創造提案企業をめざします」である。
最近は「健康経営」を掲げ、健康維持・向上に役立つ商品の開拓・販売にも力を入れている。プライベートブランドである「FRESTABimiSmile」のなかで、カロリーを減らした弁当、塩分を減らした漬物など、健康、安心・安全をコンセプトにした商品を取り扱う「健康BimiSmile」を展開している。一般的に、プライベートブラントというと安さを売りにすることが多いが、同社は品質を担保するため、むしろ価格は高めだ。それでも人気を集めている。

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創業の精神として大切にしているのは、「正直な商売」と「進取の気性」である。先の企業理念は、この2つを現代風に表現したものだという。
「スーパーマーケットは変化対応業。当社には新しいことをどんどん取り入れようという文化があります」。こう話すのは管理本部人事グループ・グループ長の渡辺裕治さん。
それを表すものの1つが生鮮宅配だ。いまではいろいろな企業が行っているが、同社が宅配事業を始めたのは2001年である。当初は苦戦したそうだが、1人暮らしの高齢者から注文が入ると、別の場所に住む家族にメールで知らせる「見守りサービス」が人気となり、軌道に乗ってきた。街全体が高齢化するなか、今後も「来てもらう商売から近づいていく商売へ」発展させていく予定だという。
このように、さまざまな新しいことにチャレンジしている同社だが、創業は明治20年。130年もの歴史を重ねてきた老舗だ。
「広島は川と橋が多く、商圏が比較的狭い。そのため、小さな商店が生き残りやすいということがいえると思います。地域の気質も保守的です。それは、一度信用を損なうと事業を続けていくことが難しくなることでもあります」
同社も地元密着で「正直な商売」を続けてきた。大阪や東京への進出は、現時点では考えていないという。将来的には、広島で街づくりにも取り組んでいきたいとする。「フレスタウン構想」としてあげているもので、病院やスポーツジム、行政と連携を図りながら、店の周囲に健康的な街をつくっていきたいとのことだ。

スマイル社員の公平な評価・処遇制度を導入

同社の従業員数は約4,400人、そのうち正社員は570人。現場のオペレーションを担っているのは、ほとんどがパートタイマーだ。
同社ではパートタイマーを「スマイル社員」と呼んでおり、役割や勤務時間によって、「フレンド・スマイル(初級職)」、「パートナー・スマイル(中級職)」、「リーダー・スマイル(上級職)」、「スマイル・チーフ(ベスト職)」に区分している(図表1)。

図表1 スマイル社員の等級と役割

図表1 スマイル社員の等級と役割

従業員の8割以上を占めるスマイル社員の育成・活用にも力を入れており、2012年4月には、職務能力を適正に評価し、賃金に反映させる「スマイル社員職務能力評価制度」を導入した。この制度導入にも、地元密着型の同社ならではの考えがあった。
「当社は広島では一定のブランド力をもっていますが、近くには全国展開している大手スーパーの店舗もあります。そういうところと比べると、たとえば時給水準などでは勝ち目がありません。だからこそ、スマイル社員の人材育成には力を入れていますし、気持ちよく働いてもらうための環境整備にも知恵を絞っています」
スマイル社員が気持ちよく、長く働いてくれることが、サービスの向上、ひいては業績向上につながっていく。職務能力評価制度は、その柱として導入されたものだ。
制度導入以前は、店長にとって「使い勝手の良い」パートタイマー、たとえば、人手が足りないときにシフトに入ってくれるといったような人が評価・重宝される傾向が強く、店長の印象によって決められることも多かった。スマイル社員の多くは、家庭や学校などそれぞれに事情・制約があり、そのなかで精一杯働きたいと考えている人たちだ。「使い勝手の良さ」が評価に結びつくと、当然、不満の声が高まる。
そこで同社は、スマイル社員職務能力評価制度を導入。職種ごとに評価シートを設け、評価の累積により時給が算定される仕組みを構築したのだ。
「導入時にアンケートをとったのですが、『どうしてそういう評価になったのか理解できてよかった』という人がほとんどでした。それまで曖昧だったところがなくなり、公平感が担保できるようになりました。商品の発注の精度や接客力などの『能力』を評価せずに、使い勝手の良さばかりを重視していたら、サービスレベルは上がりません」
評価内容を本人にフィードバックすることで、教育効果も期待できるようになったという。

評価シートの項目で評価し、面談でフィードバックする

スマイル社員職務能力評価制度の軸となる評価シートは、「共通項目」と「選択項目」からなる。
共通項目は、すべてのスマイル社員に求められるもので、「信頼性」、「協調性」、「規律性」、「自主性」、「挑戦性」、「ビジネスマナー」、「職場・環境への適応」、「健康の管理・維持」、「顧客満足の提供」、「食の安全・安心の提供」、「コストに対する意識」、「お客様対応」の15ユニットである。各ユニットには、評価項目となる行動指標が示されている。
たとえば「信頼性」は「上司、部下、同僚との信頼関係を築くため、誠実で責任ある行動ができている」、「協調性」は「周囲の人間(部下、上司、同僚)と協力して円滑に業務を進めることができる。また、そのための声かけを積極的に行っている」、「規律性」は「社内ルールや法令などを理解し、店舗の方針や上司の指示を遵守している」といったものである。
一方、選択項目は、各部門の業務で求められる能力で、こちらもそれぞれ評価項目が設定されている(図表2)。たとえば、レジ部門であれば、「OA機器運用」、「チェックアウト業務」などのユニットに分かれており、選択項目数は業務によって異なるが、各部門、だいたい40項目くらいになるそうだ。当然、そこにはどの業務の優先順位を高くするかという経営判断も含まれる。

図表2 スマイル社員の「選択項目」評価項目例(レジ部門・一部)

図表2 スマイル社員の「選択項目」評価項目例(レジ部門・一部)

「評価項目を策定するにあたっては、人事部と店舗のオペレーションを担当している商品部で、何ができればどのレベルになるかを検討しました。以前は、スマイル社員の方には主に周辺業務に就いてもらっていたのですが、もっとチャレンジしてもらってもいいのではということで、たとえば水産部門では、刺身の加工なども評価項目に入れることにしました。
じつは制度を導入する前は、レジ業務についての評価は行っていませんでした。『だれでもできる仕事』と考えていたわけです。しかし、どんなときでも笑顔を絶やさずに接客するのは、大変なことです。接客した人によって、店に対するお客さまのイメージも違ってきてしまいます。そこで、レジ業務は会社にとって重要なポジションだということを打ち出すため、評価制度に組み込みました」
評価は4月と10月の年2回実施している。評価は、ABCの3段階で行い、まず本人が自己評価したあと、チーフ・マネージャーが一次評価を行う。その後、店長による二次評価、フィードバック面接を経て、全項目の合計点によって時給や等級が決定する。評価項目には「勤務○年」といった年功要素はいっさい入っていない。職務能力が上がることで、時給も上がっていく仕組みだ。
評価結果は、店課長がスマイル社員一人ひとりと面談を行い、フィードバックしている。同じ部門のスマイル社員は同じ評価シートを使用しており、時給や等級に差があるとすれば、どこがどう違うのかを本人にはっきり説明しなければならない。
面談については、制度導入後、スマイル社員を対象に満足度調査を実施したところ、フィードバックの面談時間が15分以上だと満足度が高い傾向が出ていた。それらの結果を示しながら、店課長などが集まる営業会議などで、面談の重要性について伝えている。あわせて、面談の方法も細かく指導しているそうだ。
「スマイル社員のモチベーションが、店長によって低くなったら困ります。そこで、人事が質問方法などを細かく指導しています。たとえば、1つ指摘したら2つ褒めるというようなことです。一人ひとりと面談するのは大変ですが、店長の仕事は人を活かすこと。そこに100パーセントの力を注いでも、損にはなりません。とはいえ、現場任せにしてしまっては、従業員のモチベーションは上がりませんから、人事がきちんとみるようにしています」
足りないスキルや能力があれば、研修を受講するようアドバイスすることもある。正社員向けの研修のほか、スマイル社員向けにも、等級ごとの必須・推奨研修、必須・推奨資格を提示している(図表3)。
そのほか、自己啓発のための手上げ研修として、全従業員向けのオープン研修や通信教育も実施している。たとえば、オープン研修では「マーケティング」や「ラッピング研修」、「伝える力研修」などを実施。通信教育では、「段取り力」、「ストレスコントロール」などの講座を提供している。

図表3 社員等級とスマイル社員の等級・研修・資格

図表3 社員等級とスマイル社員の等級・研修・資格

なお、新規採用のスマイル社員については、次の評価時(4月、10月)までは募集時の時給で働いてもらい、定期評価で昇格・昇給する。
ちなみに、正社員の育成・処遇で活用している評価シートは、スマイル社員の共通項目と一部重複するところはあるものの、マネジメント要素を入れた異なるものを使用している。また、正社員は部門別ではなく階層別になっており、一般社員、チーフ、マネージャー、管理監督者、執行役員の5シートで運用しているそうだ。

スマイル社員のなかから部門責任者や店長に登用

同社では、スマイル社員の部門の責任者への登用も行っており、スマイル・チーフがそれにあたる。
パート・アルバイトは、まず研修職として入社し、最初の評価を受けてフレンド・スマイル(初級職)となる。その後、パートナー・スマイル(中級職)に上がり、試験を受けてリーダー・スマイル(上級職)になるが、上級職からの評価シートはマネジメント色の強いものになる。
そして、リーダー・スマイルのなかから一定の昇格要件を満たした人に対して、本人の意思を確認し、社員と同じ試験・研修を受けたうえでスマイル・チーフとなる。スマイル・チーフは勤務地限定、フルタイム勤務の契約社員(1年間)。給与は月給制で、役職手当も正社員と同額が出る。職務内容は正社員のチーフ職と同等で、評価方法も正社員と同じ(毎年10月)になる。
入社して順調にいくと、上級職には7、8年で昇格し、その後は状況にもよるが、2~3年でスマイル・チーフになる人が多いという。現在、上級職は139人、スマイル・チーフは12人である。
制度導入から約5年が経過し、力量のあるスマイル社員が多く活躍するようになってきた。オープン研修の受講を希望するスマイル社員も増えてきたという。
「小売業では『パートさんは能力が低い』という先入観は強いと思います。それは、子育てしているから4時間しか働けないなど、何らかの条件をもとにみているからではないでしょうか。それと能力の有無は別の話です。エリアや時間のなかでどう活かすかを考えれば、本当に力のある人は自然と出てきます。いまの制度は、力量のあるパートさんを活用するためのよい仕組みだと思います」
通常、能力の高い人を雇おうとすれば、時給を上げるなど費用をかけなくてはならない。しかし、同社は公平な評価・処遇制度を導入したことで、あまり費用をかけることなく、スマイル社員のモチベーションを上げているのだ。実際に、ある店舗の近くに進出した大手スーパーが高い時給でパートタイマーの募集をかけたことがあったが、同社からそちらに移る人はいなかったという。
来期からは、スマイル店長の導入も予定しているそうだ。社員と同じ試験をパスしたスマイル・チーフを、店長に登用していくという。将来的には、社員もスマイル社員も1つの制度で評価・処遇していけるのではないかという。
「雇用の違いではなく、能力と役割で処遇していけばいいだけです。正社員だから、パートタイマーだからという枠で考える必要はないでしょう。今後は、すべての従業員を『制限がない』、『地域に制限がある』、『時間に制限がある』という3つの区分で整理できるのではないかと思います。そうなると、勤務時間が短い役員が出てきたりするかもしれません。役割さえ明確にしておけば、正社員でもパートさんでもかまわないということです」
スマイル・チーフになる人は、子育てが一段落して、次のランクアップをめざす、接客好きの40代中盤から40代後半の人が多いという。現在の最年少は37歳で、最年長は59歳。同社では、定年は60歳で、その後、最長70歳まで再雇用する制度が設けられている。これは、正社員もスマイル社員も同じだ。
今後の課題としては、学生アルバイトからの採用があげられる。毎年、卒業によって1,000人弱が入れ替わっており、このなかからやる気のある人を正社員に登用していく「チャレンジ制度」を設けた。アルバイトとして働いている間の仕事ぶりを見て、社員になってほしい人を各店舗に推薦してもらうもので、この制度を使えば、採用試験の一次、二次試験が免除される。来年度の新入社員の半分はチャレンジ枠の採用だという。
チャレンジ制度で採用された人は、業務内容にも店長や同僚たちとのやり取りにも慣れている。また現場の評価も高く、経営的な意識をもっている人も多いため、会社にとってのメリットは大きい。

スマイル社員をはじめ、全従業員のための職場づくり

以上、同社のスマイル社員を対象とした職務能力評価制度を中心に説明してきた。同社には、このほかにもユニークな制度がある。
たとえば、新入社員研修の一環として行われる「お弁当研修」。これは、新入社員研修が行われる2カ月半の間、旬の食材を使ったお弁当を自分でつくってくるというものだ。
「最初のうちは、朝4時に起きてつくったという社員もいました。食べ物をつくるのには手がかかるという苦労を知ってもらうことと、旬の食材に興味をもってもらうことを目的に、3年前から実施しています」
つくってきたものを採点することはないが、みんなで一緒に食べるため、自然と見せ方や内容を工夫するようになる。研修期間中に料理の腕やセンスも上達していくという。
ほかには、エリアマネージャーとスマイル社員が食事をしながら、ざっくばらんに話し合う「FESTAの会」がある。当初は、社長や役員と話せる場としてスタートしたそうだが、スマイル社員が緊張するということで、エリアマネージャーと話す場として再スタートした。そうはいっても、スマイル社員とエリアマネージャーがふだん話すことはあまりないため、なかなか意見が出ないこともある。そこで現在は、数店舗合同で実施し、人事もアテンドとして入る。毎年6回ほど実施しており、役員や社長が来ることもあるという。
このように、スマイル社員の評価・処遇を含め、全従業員が働きやすい職場づくりに取り組んでいるフレスタ。顧客に満足してもらうためには、まずは働く人たちがやりがいをもって仕事をしていることが大事だとして、試行錯誤しながらも地道に取り組んでいる。こんなところに、130年続く老舗企業の秘密があるのかもしれない。

(取材・文/小林信一)


 

▼ 会社概要

社名 株式会社フレスタ
本社 広島県広島市
設立 1951年10月(創業1887年)
資本金 9,300万円
売上高 701億円(2016年2月現在)
従業員数 4,445人(うち正社員570人・2016年7月現在)
平均年齢 38.0歳(2016年7月現在)
平均勤続年数 男性14.7年、女性10.5年(2016年7月現在)
事業案内 スーパーマーケットの運営
URL http://www.fresta.co.jp/company/

管理本部
人事グループ
グループ長
渡辺裕治さん


 

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