事例 No.047 グッドウェーブプロモーション 特集 これからのパート・アルバイト教育
(企業と人材 2016年2月号)

有期社員教育

記事の内容およびデータは掲載当時のものです。

一人ひとりと信頼関係を築き、仕事の意味を伝える
仕事を任せて、現場スタッフをまとめる“ディレクター”を育成

ポイント

(1)アルバイト募集の要項には任せたい仕事内容を明確に記載し、求人広告の制作にも細かく口を出す。面接では独自の分析に基づいたユニークな質問も織り交ぜ、素直さと責任感を見極める。

(2)導入研修では2、3時間かけて「仕事の意味と目的」を伝える。他のアルバイトを率いてイベントを切り盛りするディレクターの選抜・育成もそこからスタート。

(3)経営トップが毎月登壇し、経営理念や今後の事業運営について語る「基礎研修」。理念共有が何より大事と、アルバイトも年2回の受講が必須。

会社としてアルバイトを育てていくことを決意

主にキャンペーンやイベントの企画制作、運営管理を手掛ける株式会社グッドウェーブプロモーション。多数の人員が必要となる事業だけに、大勢のアルバイトスタッフを管理している。
案件によって事情は異なるが、イベントの仕事の場合、アルバイトだけで運営される現場も少なくない。その場合は、「ディレクター」と呼ばれるアルバイトが、他のアルバイトスタッフを管理しながらリーダーとして現場を回していくことになる。
このような“スーパーアルバイト”を育成するため、同社ではさまざまなノウハウを蓄積してきた。常務取締役の鈴木亮さんが中心になって築き上げてきたものだ。
「私自身も30歳までフリーターだったんです。イベントの現場でディレクターとして働いていました。この業界は昔から、アルバイトが主力になることが多かったのです。仕事を任せてもらえるのが楽しくてやりがいは感じていましたが、当時は育成や能力開発のシステムなどはまったくないといっていい状態でした」(鈴木さん)
それだけにスタッフの質も、本人の意欲や仕事への取り組み姿勢によって個人差が大きかった。時間に遅れたり、無断欠勤したりするケースもあったという。
鈴木さんが社員として同社に入社したころ、「これではいけない」と痛感した出来事があったという。問題のあるアルバイトスタッフとの電話を切った途端、担当の社員がそのスタッフを非難しはじめたのだ。日ごろから社内でアルバイトスタッフへの陰口が飛び交っている様子をみて、まるで自分のことを言われているように感じていたこともあった。
「それでぶち切れてしまいました(笑)。事業の主力を担うアルバイトスタッフの悪口をいうのは、メーカーにたとえると自社商品をけなしているようなものです。何より私たちが手掛けるイベントは、クライアントからお預かりした仕事です。何か問題が起きれば、クライアントにご迷惑をかけてしまいます。そこで、これから会社の責任として、アルバイトスタッフの質の向上を図っていこうということになったのです」
現在、同社のアルバイトスタッフは、年間延べ人数で国内1万8,000人に上る。定期的に仕事に入っている稼働人数では400人弱に絞られるが、社員数は40人強と1割程度。いかにアルバイトスタッフのインパクトが大きいか、人数からもうかがえる。登録しているアルバイトスタッフのほとんどが20代から30歳前後。このうち半数近くが学生だという。つまり、その多くが実務経験の浅い若者だということだ。

▲キウイフルーツの試食販売

▲キウイフルーツの試食販売

▲イベント抽選会の様子

▲イベント抽選会の様子

イベントの仕事といっても、単発に発生する案件ばかりではない。同社では年間を通じて請け負っている仕事も多い。たとえば、大手私鉄グループのポイントカード会員獲得キャンペーンや年末のクリスマスイベントの運営であったり、キウイフルーツの販売を手掛ける会社の店頭プロモーション、さらには、キャラクターショップの運営も年間をとおして受託している。いずれも、同社のアルバイトスタッフが、日常業務のオペレーションを担っているという。

人を集める募集広告のノウハウを蓄積

責任ある仕事を安心して任せられる人材をいかに育成しているのか。
スーパーアルバイトの育成は、募集段階から始まっている。近年、募集をかけてもなかなかアルバイトが集まらないという企業は少なくない。鈴木さんは採用が難しい時代だからこそ、募集のかけ方から工夫が必要だという。
イベントの運営代行を担う同社では、多種多様な案件が随時発生する。詳細は後述するが、ディレクターへと育成する過程で、幅広い仕事に挑戦させることはある。ただし、募集段階では、基本的に任せたい仕事内容を明確にしている。
「かつてこの業界では、ライブやフェスなど人気の高い仕事で募集をかけ、実際に割り当てられるのはまったく違う仕事ばかりということもありました。応募者の立場に立てば、それでは自分がどんな仕事をするのかわからず、不安や不信が募るだけです。当社では、『各種イベントの仕事です』といった曖昧な求人はせず、やるべきことがわかるような形で募集しています」
募集は求人媒体を使うことが多いが、広告制作も媒体側に任せきりにせず、細かく指示を出しているという。
鈴木さんは、「求人媒体に出稿することは、ショッピングモールに出店するのと同じ」だという。ショッピングモールに自分の店を出すとなれば、そのモールがどんな立地なのか、両隣にどんな店があるのか、何を強みとして訴求しているのかなど、現場に足を運んでリサーチするはずだ。
求人広告も同様で、その媒体のどの辺りに自社が掲載されるのか、実際に画面を見にいくことが重要になる。同社でも、競合しそうな会社の広告と比較して、時給では勝てそうもないなら別の切り口を打ち出したり、赤系統の色を使う会社が多ければ違う色を使うなどして、細かく差別化を図っている。
また、端末を意識することも必要だ。若い世代の多くが、PCではなく携帯電話やスマートフォンで求人広告を検索している。そのため、実際にスマートフォンで広告を見て確かめることを徹底している。たとえば写真の上に文字を載せた広告は多いが、実際にスマホで見ると、小さな画面では読みにくいと気づくこともある。
「一気に応募が倍増する方法はありませんが、こうした小さな工夫を積み重ねて、1%ずつ可能性を高めていくことはできます。アルバイトの採用単価は高くなる一方なので、採用担当者も経営者視点で危機感をもつ必要があります。過去のデータを分析して、少しでも可能性を高めるためにノウハウを蓄積していくことが重要です」

面接では素直さと責任感を多様な質問から見極める

面接では、能力よりも人物を重視している。具体的には、素直さと責任感を見極めるという。
「アルバイト採用においては、能力評価は必要ないと考えています。大切なのは人物評価。素直に人の話を聞けて、責任感をもって動ける人であれば、教育次第でいくらでも成長していくものです」
では、どのようにして人物を見極めるのか。同社では、過去の採用データを徹底分析し、評価の高い人、低い人の共通点を探った結果、独自のノウハウを確立してきた。
責任感の強さをみる質問として、「これまでのあなたの人生は、ツイていると思いますか」というものがある。病気をしたなどの特別な事情がある場合は別として、同社では、「ツイてなかった」と答える人には、何か問題が起こったときに他人のせいにする傾向が強いという分析をしている。責任者として仕事を任せるには心配なタイプだ。
ポジティブにみる要素もある。ビジュアル系バンドが好きな人は、興味のベクトルが仕事に向くと大いに活躍する傾向が強いのだそうだ。
そのほかにも、「地球が明日滅亡するとして、一人だけ感謝の気持ちを伝えるとすれば?」、「親の誕生日に何かしている?」、「いままでで一番の仕事の失敗談は?」といったユニークな質問で、応募者の実像を探るのだそうだ。
「これらは、あくまでも当社の過去データからみえてきた傾向に過ぎず、ビジュアル系バンドが好きな人は即合格といった単純な話ではありません。最終的には面接担当者の総合評価となりますが、私たちの仕事に向いている人を探し出すために、過去のデータや経験値を最大限活用するようにしています」

仕事の意義や会社の価値観を常にスタッフと共有する

図表 グッドウェーブプロモーションの導入研修マニュアル(一部)

図表グッドウェーブプロモーションの導入研修マニュアル(一部)

採用が決まったあとは、育成に力を入れている。特徴的なのは、企業理念の浸透にかかわる教育だ。
導入研修では、最初に「レンガ積み職人」の話をして、仕事の目的を説明する(図表)。
たとえばサンプリングの配布業務は「無料で商品を配る仕事」というとらえ方をされがちだ。しかし、多くの関係者が苦労した末にその商品が誕生したことをイメージできるようになれば、サンプルを大切に扱うようになり、1人でも多くの人に伝えたいという気持ちも芽生えてくるのだという。
「最近は『バイトテロ』などと呼ばれるアルバイトの不祥事が社会問題化していますから、仕事上のルールや禁止事項についても厳しく伝えています。ただ、バイトテロのような悪ふざけも、おそらく本人たちにそれほど悪気はない。つまり、仕事の意義や目的を理解していないことも原因の1つだろうと思うのです。その点でも、会社として大切にしている価値観を共有することが大切だと考えています」
導入研修では2、3時間かけて、仕事の目的や意味を伝えていく。アルバイトスタッフのなかには、「仕事は仕事」と割り切っている人もいて、必ずしも企業理念に共感する人ばかりではないが、少なくともリーダーを任せるには必要な資質だと同社では考えている。レンガ積み職人の話に熱心に耳を傾けている人には、のちにディレクターとして成長する人も少なくないそうだ。
仕事が始まってからも、理念を共有する場が用意されている。毎月開催される「基礎研修」では、毎回、同社の馬場大介社長が登壇し、経営理念や今後の事業運営について講演している。これは、アルバイトスタッフも含めた全従業員を対象とした1日がかりの研修で、社員・スタッフは、年に2回は必ず受講しなければならない。アルバイトには受講時間分の時給も支給するという。参加人数は1回に10~30人程度のため、車座で経営トップとコミュニケーションをとることができる。
トップと社員が触れ合う場を設けている企業は少なくないが、アルバイトスタッフまで対象を広げている例は珍しいのではないだろうか。
「どういう人がこの会社を経営しているのか、何を大切にしているのかを常に伝えていかないと、どこかでミスマッチが起きてしまう。それはお互いにとって不幸なことですから」
このほかに、アルバイトスタッフを対象とした社内表彰制度も用意している。社員、クライアント、一緒に仕事をしたアルバイトスタッフの3者を対象に360度評価を実施。評価の高かったスタッフは全社イベントで表彰するとともに、海外研修旅行にも参加させている。

社員は会社の顔としてスタッフと接する

アルバイトだけでイベントを運営するといっても、すべてをアルバイトに任せるということではない。舞台裏では、社員による細かなマネジメントがあってこそ成り立つものだ。
社員は担当案件ごとにアルバイトスタッフの管理を行う。社員1人で10人から100人程度の主力アルバイトをみているが、日ごろから一人ひとりをよく観察するよう努めているそうだ。
イベントの仕事は、基本的に、仕事場も時間もメンバーも毎回異なる。店舗での仕事と違って、社員とアルバイトスタッフが直接顔を合わせる機会も少なく、事務連絡や確認の電話が接点の中心になる。会う機会が少ないぶん、社員は意識的にスタッフと向き合うことが重要になる。
アルバイトスタッフからみれば、担当の社員は「会社」そのものといえる。同社には20代の若手社員も多いが、入社当初からスタッフをマネジメントする立場になるわけだ。スタッフに活躍してもらえなければ、自分の仕事は回っていかない。意欲をもって長く働いてもらうためには、信頼関係の構築が欠かせない。
前述した社内表彰のアンケートでは、担当社員や会社に対して言いたいことを自由に書けるフリーコメント欄が用意されている。そこにあがってきたアルバイトスタッフからのクレームに、迅速・適切に対応することが信頼構築のチャンスでもあるという。
「私自身も経験がありますが、スタッフが社員に不信感をもつ最大の原因は、誠意ある対応をしてくれないことにあります。言ったのに聞いてくれない、何もしてくれないというケースです。たとえ自分の希望どおりにならなかったとしても、社員がじっくりと耳を傾けてくれるだけでも、納得感はまったく違います。
社員には、不都合なことは会社や上司のせいにしてかまわないから、目の前のスタッフとしっかり向き合うようにと、常に伝えています。信頼関係が築けなければ、叱ることもできませんから」
そうした日常的な観察と360度評価の結果などを参考に、ディレクターとして成長が期待できるスタッフには、新しい案件で責任のある仕事を任せてみるなど、さまざまなチャンスを与えていく。

自主的に運営されているディレクター研修

現在は、ディレクター研修を定期的に開催している。2、3カ月に一度、チームごとに社員とディレクターが集まって、現場の課題について話し合うほか、ディレクターとしてのスキルアップを図っている。初めてディレクターを任せるスタッフには、ディレクターの基本姿勢を学ぶ場でもある。

▲基礎研修の様子。経営トップが直接登壇する

▲基礎研修の様子。経営トップが直接登壇する

「大きなイベントになるほど、ディレクターは自分で動いてはいけない。管理者ですから、自分は動かず、人を動かすことが大事なのです。さらに、ディレクターの仕事の大半はトラブルシューティングみたいなものですから、何か想定外のことがあれば自分で勝手に判断せず、“報・連・相(ほう・れん・そう)”を徹底させています」
たとえば、遅刻者が出たときにどうするのか、酔っ払いが乱入したときにどう振る舞うべきかなど、ケーススタディを行うチームもある。業務に直結した具体的な課題をディスカッションするチームもある。研修の内容はさまざまだが、どのチームも自発的に開催している点は変わらない。
「ディレクター研修」と呼んではいるものの、アルバイトスタッフは参加が強制されているわけではなく、時給も発生しない。ディレクター自らの意思で参加しているのである。
「ディレクターになると、時給も大きく上がります。ただし、モチベーションの源泉はお金ではなく、仲間のためにという思いをもつ人が多いですね。仲間のため、チームのために、現場をより良くしたいと思って集まっているわけです」
高い意識が必要な役割だけに、そう簡単にだれもがなれるわけではない。クライアントの意向もあるため、ディレクターになる道のりは仕事によっても異なる。現在、ディレクターは約35人。学生アルバイトは毎年一定数卒業していくので、常に新たなリーダーを育成していかなくてはならない。「50人くらいまで増やしたい」と鈴木さんはいう。
ディレクターとして実績を積んだ人には「ぜひ社員に」と声をかけることも多い。社員登用は制度化されているわけではないが、現在の社員の半数近くがアルバイトスタッフ出身だそうだ。会社の方針や価値観を理解したうえで入社するのでミスマッチも少なく、会社としてもメリットが大きいと感じている。

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同社は今後、主力のイベント事業と並んで、新規事業にも力を入れていく方針だ。グループ企業のBemix(ビーミックス)は、リラクゼーション店舗やキックボクシングスタジオの運営を手掛けており、やはりアルバイトスタッフが中心となって活躍している。
「いまやBtoC事業も順調に拡大しており、アルバイトスタッフの活躍の場も広がっています。イベント事業で培ったスタッフ育成のノウハウを活かして、今後もさらなる事業の拡大をめざしていきます」
同社の今後の展開に注目したい。

(取材・文/瀬戸友子)


 

▼ 会社概要(2014年6月1日現在)

社名 株式会社グッドウェーブプロモーション
本社 東京都渋谷区
設立 1998年2月
資本金 1,800万円
売上高 10億3,000万円(2015年6月時点)
従業員数 45人(2016年1月末時点)
平均年齢 29歳
事業案内 各種イベントの企画、運営、プロデュース事業
URL http://www.goodwave.co.jp

常務取締役
鈴木亮さん


 

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