事例 No.207 ココネ 特集 成長につなげる社員意識調査
(企業と人材 2019年12月号)

組織開発

記事の内容およびデータは掲載当時のものです。

半年に一度の会社アンケートと月次アンケートを中心に
社員の意識を探り、リーダー層と議論して施策に活かす

ポイント

(1)定例アンケートに加え、入社時、異動時、復職時、評価後など、ことあるごとにアンケート調査を行い、社員の声を集める。「アンケートはとってからが始まり」として、集計・分析結果から仮説を立て、社員の成長支援、制度改定につなげる。

(2)「会社アンケート」は、雇用形態別にアレンジして、全社員に実施。「言葉遣いに気を配っているか」など、企業理念にかかわる設問を設けることで、会社が何を求めているかを示す。

(3)月次アンケートは、設問を「職場のわくわく度/心身の健康度/仕事の充実度」の3つに固定し、勤怠データなどともつきあわせて推移をみる。

女性向けSNS事業を展開 2つの評価軸で成長支援

ソーシャルネットワークサービス事業を中心に、語学事業、教育事業を展開するココネ株式会社。メインサービスは、女性好みのかわいいキャラクターを作成して楽しむ着せ替えアプリ「ポケコロ」である。同サービスは今年9月で8周年を迎え、利用者は1,500万人を超える。ほかにも、ディズニー初のアバターアプリ『ディズニーマイリトルドール』などを展開中だ。
同社は、こうした事業を「CCP(CharacterCoordinatingPlay)」と表現。「Character」(キャラクター)をとおして、「Coordinating」(アイテムを組み合わせること)によって、「Play」する(楽しんでもらう、癒されてもらう、つながってもらう)というものである。
このようなジャンルのネットサービス全体を自社で開発・運営している企業は、グローバルにみてもほかにほとんどなく、そこのノウハウを蓄積している点が同社の強みだという。
同社の人材育成方針について、人事部長の北村公一さんはこう語る。
「事業であれ人材であれ、強みをどう強化していくのかが基本路線です。弱みを克服することよりも、その人の持ち味をいかに発掘するかに重点を置いています」
そのために行っているのが、事業別組織/職種別組織の2軸による評価である。同社の組織は、サービスの成長、発展を追求する事業部ごとの組織と、デザイン部門、開発部門など職種別に知識・経験を共有し、メンバーの成長を追求する職種別の組織(委員会)が組み合わさってできている。大半の社員が、両方の組織に所属することになる(図表1)。

図表1 ココネの組織体制のイメージ

ココネの組織体制のイメージ

2つの評価軸が示すように、同社は「自分の成長・成果」と「周囲への貢献」を重要視しており、常にこの2つで考えて行動することを社員に徹底しているという。
人事部の小嶋秀征さんは、「育成のアプローチについても、この2つを常に考えながら、策定していっています」と説明する。
その1つの例が、新人が入社3カ月後の試用期間終了前に行う「試用期間プレゼン」だ。
「試用期間プレゼンは、本人の成長はもちろんですが、周囲の社員も刺激を受ける機会にしたいと考えました。内容としては、試用期間中にどのような目標を立て、どんな成果があったのか、会社やチームの課題をどう感じたか、今後どのようなチャレンジをしたいかなどを、1人7分間で発表してもらいます」(小嶋さん)
発表の場には、役員やリーダーだけでなく、社員も自由に参加することができる。これから正社員をめざす人も聴きに来るという。終了後はコメントや質問が出される。そこで新人は、自分への期待や要望されている点を理解するわけだが、発表を聴きに来た社員側も刺激を受けることになる。
「会社というのは、長く在籍していると入社時に抱いていたチャレンジ意欲などが薄れてしまいがちです。外からきた新人の発表を聞くことで、入社当時に抱いていたことを思い出したり、新しい課題に気がついたりします」(小嶋さん)同社では、毎月5〜10人が入社するため、試用期間プレゼンも、毎月実施されているという。

半期ごと/月次を中心に何かあればアンケート調査

同社では、ときに「アンケートが多すぎる」と社員から言われるほど、ことあるごとにアンケート調査を行い、社員の意見を集めているという。定期的に全社員が行うものとしては、半期に一度の「会社アンケート」と、毎月の「月次アンケート」が大きな柱となっている。
これに加えて、「入社時」、「異動時」、「復職時」、「評価後の振り返り」など、対象者を特定したワンタイム・アンケートも実施されている。研修後やイベント終了時などの不定期アンケートも含めると、たしかに相当な数だ(図表2)。

図表2 人事部が行っている主なアンケート調査

人事部が行っている主なアンケート調査

さらに、アンケートを実施するのは、人事部だけではない。たとえば社内イベントを担う総務では、今年10月、ファミリーデーやハロウィンパーティーを開催し、各イベントの終了後にアンケートを実施したという。
数あるアンケートのなかでも、人事施策の軸となるのが、会社アンケートと月次アンケートである。
まず、会社アンケートは、正社員、契約社員、アルバイト社員のそれぞれを対象に、若干異なった設問を用意。切り口は多種多様で、正社員の場合は30近くの質問項目がある。
たとえば、「自分の意見や周りのメンバーの意見を集約して、リーダーに何回くらい提案を行いましたか?」という設問では、「1回〜2回」から「10回以上」までの4項目に回答が分散した。また、少しではあるが「0回」という回答もあった(図表3)。

図表3 会社アンケートの例(リーダーへの提案)

会社アンケートの例(リーダーへの提案)

「この設問では積極性をみていますが、同時に、本当は提案したいのだけれども、何か理由があってできないのかもしれない、ということも考えます。そういう場合には、対策を練る必要が出てきます」(小嶋さん)
また、同社では、「ココネの生き方」として、3点を掲げる。
・潔く生きよう
・健康に生きよう
・人生を磨こう
そして、「人生を磨こう」のなかに「言葉遣いを磨こう」という項目があり、アンケートでも「自分の言葉遣いに気を配っていますか」という設問を設けている。
「アンケートの項目に入れることによって、会社が社員に何を求めているのかを、メッセージとしても伝えていきたい」(小嶋さん)
北村さんは続ける。
「ココネという社名は、ココロとコトバとネットワークの頭文字に由来します。社員に対しても、一人ひとりの心がどうなっているのか、言葉がちゃんと伝えられているのか。また、ネットワークというのはコミュニケーションですから、それがしっかりとれているのかを重視しています。それで、アンケートでも、そうした視点の設問が多くなっています」
アルバイト社員に対しては、「仕事を選ぶときのポイントは?」という設問も設けている。「アルバイト社員は正社員に比べて働く期間が短いので、今後の採用の参考にもしています。
また、各種申請について不備はないか、必要な情報共有ができているかなども聞いています。これはアルバイト社員や契約社員に対して情報共有が手薄になっていないかを確認するためです」(小嶋さん)
同社では、このアンケート調査を3年前から実施している。当初は、経営トップがすべての調査回答に目を通し、出された疑問に答えたりコメントを付したりしたうえで、社内に公開していた。全社集会の場で、トップがその場で調査回答の疑問に答えたりしたこともあったという。
社員数が増えてきた現在は、人事部とシニアマネージャー層による職種別委員会のメンバーが参加する定例会議で議論する方法をとっている。

月次アンケートは社員の状態を複合的にみる土台

もう1つの柱である「月次アンケート」は、短期間に簡易的な調査を行ういわゆるパルス調査である。設問は、次の3つだけで、5択で答える形式だ。
・職場がわくわくする場所か
・心身の健康状態はどうか
・仕事は充実しているか
たとえば、仕事の充実度については、「前月の仕事は充実していましたか?」という設問で、「とても充実している/充実している/ふつう/あまり充実していない/充実していない」のなかから1つ選んで回答してもらう。深く考えず、即時的に回答してもらうのがポイント。月次アンケートの集計結果は社内に公開され、設問ごとに推移をみられるようになっている(図表4)。人事部内ではさらに、社員一人ひとりについて、各設問の直近3カ月の回答を色分けして一覧化し、「青が濃いほど健全、黄色はアラート、赤になるとレッドゾーン」として変化をみている。

図表4 月次アンケート「仕事の充実度」の推移

月次アンケート「仕事の充実度」の推移

「たとえば、持病を抱えていたりする社員の場合は、心身の健康度の部分は全部赤くなったりしますし、前月まで青だったのが、突然赤になることもあります。また、仕事が充実していないと職場のわくわく度が下がり、そうなると、心身の健康度にも良くない影響が出る、というような相関関係もみえてきます。
最近でいえば、夜型の生活スタイルを尊重し、朝の通勤ラッシュを避け、仕事の生産性を高めるため、今年の夏からフレックスタイム制のトライアルを開始しました。その後は、心身の健康度が向上してきています」(北村さん)
最初は正社員のみを対象にしていたが、月例会議で契約社員やアルバイト社員の状態も知りたいという声が上がり、今年からは雇用形態を問わず全員に実施している。
調査結果は、勤怠データとつきあわせたうえで、会社アンケートと同様に、人事部と各職種別委員会との月例会議で議論されることになる。
会議では、人事として留意しておきたい人や部署をあげ、それについて意見を求めるのだという。するとシニアマネージャーらから「じつは自分もそういうことを考えていた」、「○○さんとは先日面談をした」、「彼女はリーダーになったばかりだから、リーダー教育をお願いしたいと思っていた」といった、生きた情報がやりとりされる。
「1つの設問ですべてがわかるというよりは、複合的に重ね合わせてみていくと、『つまり、こういうことなのではないか』ということがみえてきます。そうした仮説を立てて議論し、必要であれば重点課題の1つとして取り組んでいきます」(小嶋さん)
「情報は、鮮度が高いうちに現場にフィードバックするのが鉄則です。そうして、議論の結果、この部門のこの人には注意したいとか、いまはそっとしておいたほうがいいといったことがわかってきます。そこから、たとえば、この層にはリーダー教育が必要だといった、人事がやらなければならないことを見定めていきます」(北村さん)
そうした議論を経て、自由記述欄に書かれた案件が実現した最近の例として、同社の社員食堂で実施されたフランスフェア、中国フェアなどがある。
「当社には、さまざまな国籍の社員がいます。そのため、各国の食事を提供してはどうかとの提案がありました。料理を提供するとともに、その国の食文化を書いて掲示したら、話題づくりのきっかけになったと好評でした」(北村さん)
同社の社員は、皆、アンケートに慣れており、自由記述欄にも包み隠さず、たくさん書いてくれるのだそうだ。「なかには手厳しい内容もあります」と小嶋さんは苦笑するが、それだけ人事部に対する信頼度が高いということでもあるだろう。社員の声を十分に活用しているといえるが、北村さんは「書けば会社がなんとかしてくれるだろう、となってしまうと、自分から動かなくなる可能性もあります」とも指摘する。

評価振り返りアンケートで制度の改善点もたずねる

もう1つ、評価制度に関連して実施されている「評価振り返りアンケート」についても紹介しておきたい。
同社は、個々人の成長につながる評価のあり方を模索しており、現在は自己申告を基点に、リーダの評価や周囲のメンバーからのレビューを受ける評価制度を実施している。
評価振り返りアンケートは、最終的に評価結果のフィードバック面談を受けたあとに回答するもので、評価満足度、透明性、公平性、自分の評価の納得度のほか、評価に対する意見や提案を自由記述式で回答してもらう。
アンケートの結果は、職種別委員会で議論されたあとに、「評価総括」にまとめられる。アンケートでの指摘を踏まえた評価制度の変更点や自己評価の分布、職種別の傾向などに加え、経営トップや各委員会の委員長が今回の評価に対する思いや総括を述べている。
最近では、評価ガイドラインの改訂を行った。委員会との議論のなかで「もっとフィードバックの精度を上げていけば納得度が高まるだろう」という仮説を立て、従来は「リーダーはメンバーに対して書面を渡し、必要があれば面談を行う」となっていたガイドラインを、「書面を渡し、必ず面談を」と改定したのだ。
そして、リーダー層に対しては、事前に面談の教育も実施した。すると、評価される側のメンバーの納得度が、前回の88%から93%にアップした。
「人材育成は、ただ巷で流行っているテーマを取り上げて、外部講師を呼んで実施しても、なかなか身につかず、やっておしまいになりがちです。
当社では、自社の課題を解決するために、どういう教育的手段をとるかというアプローチで実施しています。アンケートもそうですが、外部に頼らず自分たちでコンテンツをつくり、リーダーがメンバーに伝えていくことを大事にしています」
北村さんはそのように語る。

アンケートは公開し活用し継続することが大事

アンケートをうまく活用する秘けつについて聞くと、北村さんは「やりっ放しが一番よくありません。PDCAを回して、社員に公開することが大事」と力説し、さらに「続けること」と「トップの意識」の2点をあげる。
「単発のアンケートだと一過性で終わってしまいますが、当社の月次アンケートのように、たった3つの質問でも、長く続けると傾向がみえてきます。そして、なぜそうした傾向が出るのか、ほかの要因とも合わせて分析すれば、方策がわかってきます。また、アンケートを続けるには、経営陣の思いも大きく影響します。当社の場合、社員一人ひとりに存在感をはっきり出してほしいという、トップの強い思いがありました。ですから、こうしたアンケートは有用なのです」(北村さん)
つまり、自社のねらいに応じた設計と活用が必要だということである。
今後について、北村さんは「必ずしも数字的なものばかりではありませんが」と前置きしたうえで、次のように語る。
「これまでは、組織を整えるという観点での成長をめざし、会社の成長、人の成長として、スキルアップを図ったりナレッジを獲得したりしてきました。
次の段階としては、ビジネスとして業績に結びつけるような成長をめざしていくことになります。これまでは社員の成長をリードする職種別委員会の影響が大きかったのですが、これからは事業部の役割責任を強化していきたい。そのために、業績への貢献度合いを評価のなかでより重要視することを検討中です」
もちろん、アンケート自体は今後も活用していく考えだ。ただし、「アンケートのボリュームを増やすことは目的ではありません。集計したら活かすことが大事です」(小嶋さん)、「活用の仕方は会社の風土にもよるでしょうが、アンケートはとってからが始まりです」(北村さん)と、2人は口をそろえる。
組織の規模が大きくなっていっても、アンケートの活用は可能なのだろうか。

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「規模が大きくなっても、集計は問題ないでしょう。ただ、そこから何が読み取れるかは、結局は人間の判断になるということです。それをどうやって進めていくか。やがてAIによる判定もできてくると思うので、必要に応じてテクノロジーも使っていくことになるでしょう」(北村さん)
アンケート調査により「一人ひとりの状態」と「全体の傾向」を把握し、人事施策につなげている同社。今後、テクノロジーを導入しての分析・活用をどのようにしていくのか、これからの取り組みにも注目したい。

(取材・文/江頭紀子)


 

▼ 会社概要

社名 ココネ株式会社
本社 東京都港区
設立 2008年9月
資本金 10億1,400万円
売上高 非公開
従業員数 338人(2019年11月1日現在)
平均年齢 32.0歳
事業内容 ソーシャルネットワークサービス事業、語学事業、教育事業
URL https://www.cocone.co.jp/

(左から)
人事部長 北村公一さん
人事部 小嶋秀征さん


 

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