事例 No.197 スコラ・コンサルト 特集 イノベーティブ組織の実像
(企業と人材 2019年8月号)

組織開発

記事の内容およびデータは掲載当時のものです。

メンバー全員が経営に携わる習慣を仕組み化し
個の自由と組織の一体感との両立をめざす

ポイント

(1)新人コンサルタントは、まず50人のメンバー全員と個人面談し、今後やりたいこととその準備の工程表を作り込む。社内の課題解決プロジェクトにも参加して、コンサルティングの基本を学びつつ、独自の手法も身につける。

(2)「情報」の共有、「挑戦」機会の創出、スポンサー機能という3要素を重視。意思をもったメンバーが経営に携わる全員執行責任者体制をつくる。

(3)年1,2回、2泊3日で全員経営合宿を実施。次年度に取り組む経営課題を議論し、その執行責任者を決める。決定プロセスをオープンにし、責任の所在・範囲を明確化することで、個の自由と組織全体との統合を図る。

クライアント企業に伴走し、一緒に最適解を考える

株式会社スコラ・コンサルトは、組織風土改革を専門とするコンサルティング会社である。組織の序列構造や人と人との関係性、暗黙のルールなど、目に見えない要素が会社に及ぼす影響に着目し、そこに働きかけて、「自ら変わり続ける組織能力」を育むコンサルティングサービスを提供している。

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同社は創業時から、個の自由と自己責任を重んじ、部署、役職、階層のないオープンでフラットな組織形態をとってきたという。同社代表取締役の辰巳和正さんはこう語る。
「私たちが大切にしているのは、『問い直せること』です。おかしいと感じたときに、『仕方ない、黙っていよう』ではなく、『あきらめずに問題を解決していこう』と考える。そのような姿勢が、組織の成長にとって重要だと、私たちは考えています。コンサルティングでは、クライアントの社員とともに経営の課題と向き合い、その組織にとって最適と思える答えを、一緒につくっていきます」
コンサルティング会社として、あらかじめ課題解決策のひな型を用意するのではなく、支援先の社員と一緒に、顕在化していない本質的な問題を探っていくのだという。伴走者となるコンサルタントは、「主体的に考え、問い直し、答えを導き出せる人材」でなければ務まらない。それはそのまま、同社の求める人材像となっている。
同社には現在、コンサルタント25人、スタッフ12人、元社員を中心とするパートナーコンサルタントが13人の総勢50人のメンバーが在籍している。全員が転職組で、とくにコンサルタントは、自社の改革に一当事者として取り組んだ経験をもつ人が多いという。辰巳さんもその1人だ。ちなみに、同社は2015年から選挙によって社長を選出しており、辰巳さんは初めての“公選社長”でもある。
「組織には、正論を述べるだけでは解決できない課題がたくさんあります。そのため、組織風土改革に取り組むコンサルタントには、正論と現実が乖離するなかでも、あきらめることなくどうすれば現実課題を乗り越えられるかを考えてサポートするなど、イノベーティブな発想とチャレンジする意思が求められます」
そのため、イノベーティブな組織づくり、創造的な人材育成には、非常にエネルギーを使ってきたという。

全員面談と社内の課題へのコミットで成長支援

同社では、コンサルタントとして新しい人が入社すると、まずメンバー一人ひとりと個人面談をするのだという。お互いに自己紹介をして、これまで何をやってきたのか、現在どのようなプロジェクトにかかわっているかなどを話す。プライベートも含めてざっくばらんに、どんなことを大事にして、どんな思いでやっているのかを理解し合う。
それと並行して、採用やHRM担当スタッフと話し合いながら、今後どういうことをやっていきたいか、そのためにどのような準備をするか、2年間の工程表を作成し成長プランを実行していく。
そのうえで、新人は最低でも1年以上かけて、同社独自のコンサルティング手法を身につける。以前は、先輩コンサルタントに同行して現場の経験を積むことを主体にしていたが、現在は、まず社内の課題解決プロジェクトのどれかに加わり、そこでチームづくりやチームによる課題解決をはじめとするコンサルティング技術を学ぶようになっているという。
人材育成において重視するのは、「組織が個々人に及ぼす影響」だと、辰巳さんはいう。
「教育研修や育成プログラムは、何かしらの正解を用意して、その習得を目的とするものですが、それでは組織風土改革のコンサルタントに求められる能力を育むことはできません。
当社では、『人材育成』という言葉はあまり使われず、『成長支援』ということが多い。大切なのは、実際に一人ひとりが主体的に考え、答えを導き出して、それを行動につなげていける環境があること。それはつまり、イノベーティブな組織をつくり、維持していくことだと思っています」

イノベーティブ組織が必ず直面する課題

ただし、イノベーティブ組織には大きな課題があると、辰巳さんはいう。
同社のコンサルティング手法は、大企業病に対するアンチテーゼから生まれている。創業者の柴田昌治氏が『なぜ会社は変われないのか』(日本経済新聞社・1998年)を著した当時、日本の大企業には上意下達の硬直的な風土があり、それが社員のやりがいを阻む要因となっていた。
ところが、時を経て、いまや多くの企業がイノベーティブな組織風土をつくろうと、懸命に環境を整備している。そうすると、次に何が起こるか。
創業時から個の自由を重んじ、チャレンジすることが奨励されてきた同社では、辰巳さんの社長就任当時、個の自由が強くなった一方で、組織のまとまりやガバナンスが弱くなっていたという。
「イノベーティブ組織をめざして個々人に自由を認めていくと、必然的に組織としての意思決定が難しくなる。私たちがここ数年取り組んできたこの問題は、今後、多くの企業が経験することではないかと考えています。
そのときに、部分、つまり一人ひとりの思いを大切にしながら、全体のまとまりを保つにはどうするか。イノベーティブな組織づくりの成否を分けるのは、そこです」
以下、この組織課題に対して、同社がどのように対処してきたのかを紹介していく。大きくいえば、同社は、メンバー全員が経営に携わる環境・仕組みづくりを通じて、「部分」の自由と「全体」の一体感との両立をめざしてきた。
一般的にみられる管理統制型の組織とは異なる生い立ちをもつ同社が、イノベーティブ組織づくりを進めるにあたって重視したのは、①「情報」の共有、②「挑戦」機会の場、③スポンサー機能、という3つの要素である(図表1、2)。

図表1 スコラ・コンサルトのイノベーティブ組織づくりのプロセス

スコラ・コンサルトのイノベーティブ組織づくりのプロセス

図表2 個と全体の統合マネジメントの重要性

個と全体の統合マネジメントの重要性

辰巳さんは、どんな組織でも、イノベーティブな組織になるためには、「個の突出プロセス」と「全体のかかわりプロセス」を、常に強化し続ける必要があるという。同社の場合は、個の突出をさらに一歩進めて、「個の発意と自己選択による主体的行動」を促すための成長支援環境を整備している。具体策としては、3つの要素のうちの①「情報」の共有と、②「挑戦」機会の場がそれに該当する。
個の突出が当たり前にみられるようになると、今度は、それぞれの個と全体とを統合するフェーズが必要になってくる。そこで必要となる施策が、③スポンサー機能である。

情報共有と機会提供で個の主体的行動を促す

順を追って説明しよう。まず、①「情報」の共有についてだが、主体的に組織のあり方を考えるためには、だれもが前提となる情報に接することができないといけない。同社では、一部の人事情報を除き、経営情報はすべて社内に公開されている。売上、コスト、給与などのほか、取締役会や経営ミーティングの議事録もグループウェア上で公開し、社員は自由に接することができる。
また、月1回、全員が集まって開催される「スコラミーティング」は、情報共有と同時に「皆の意見を聞き、自分の意見を伝える」場としても位置づけられている。さらに、年に1、2回、開催される「全員経営合宿」では、当年度の振り返りや、次年度の経営課題に対する執行責任者決めなどを行う(図表3)。

図表3 全員経営合宿のタイムテーブル

全員経営合宿のタイムテーブル

そのほか、学びを得るための書籍購入や外部研修参加については、原則、全額補助としている。インフォーマルな意見交換も奨励しており、社員2人以上で飲み会を申告すると、月3,000円まで費用補助する制度もある。
次に、②「挑戦」機会の場についてだが、同社は、メンバーのだれもが経営課題の解決を目的とする活動を立ち上げ、その執行リーダーを務めることができる「全員執行責任者体制」をとっている。通常であれば、経営課題を抽出し、それに対する解決策を意思決定するのは経営の役割であろう。だが同社では、その経営の機能をできるだけ小さくして、優先課題・重点項目を決定するにとどめ、基本的には企画立案からチームでの推進までを、メンバーに委ねている。
今期は、経営課題の重点項目として、「事業」、「内部管理」、「提携」など5つの領域が設定されている。それぞれの領域で「こういう事業を立ち上げたい」、「こんな制度があったらいい」といった意思をもつメンバーが、全員経営合宿の場で立候補し、内容についてのプレゼンや議論を経て承認を受ければ、次年度にはその取り組みの執行責任者となる。2019年は15人が執行責任者に任命され、それぞれの活動に取り組んでいる。

個と全体を統合するスポンサー機能

社員に対して情報をオープンにするとともに、チャレンジする「機会」を提供することによって、個の発意による主体的行動を促す。それによって、各人がそれぞれ強い思いをもって自由に活動するとき、懸念されるのは、どうやって組織全体の一体感を保ち、意思決定していくのか、という問題である。
辰巳さんは、そこでの課題は大きく2つあるとする。
「1つは、だれかが手をあげて課題に取り組もうとするときに、欠点や不備を指摘する意見が出てくることで、チャレンジする人の足を引っ張るという問題です。これをそのままにしておくと、チャレンジしようとする社員がいなくなってしまう。
もう1つは、自分のやりたいことをやる社員が増えることによって、組織がバラバラ状態になり、ガバナンスが利かなくなるという問題です。これらの問題が発生することを想定し、対処できるようにしておくことが、経営のいちばん重要な機能であると、私は考えています」
その対応策が、③スポンサー機能である。これは、ひと言でいえば、個々のメンバーの活動に対する支援とその活動が組織全体にもたらす貢献とのバランスをとるということで、辰巳さんは、これだけは経営が担うべき役割だという。
具体的に説明しよう。「足を引っ張る意見が出てくる」問題は、多くの場合、そのチャレンジの目的への理解が不足し、不信感が高まることが原因だ。そこで、まず全員経営合宿での執行責任者を決める議論のなかで、その活動が全体にとってどういう貢献をもたらすのかを徹底的に話し合う。
そして、最終的に経営の活動として取り組むことが決まれば、経営が、会社としてその活動を応援していくこと、また、周囲からどのような意見があったとしても、意思決定は執行責任者がすべきものであることを宣言する。
もう1つの、組織がバラバラになってしまう問題についても、辰巳さんはこう述べる。
「活動の自由を保障しながら組織のまとまりを保つためのポイントは、『責任』です。自由は大切ですが、自由だけでは独り善がりの部分最適になってしまう。そこには責任が伴わなければいけないし、その責任を経営の文脈のなかにきちんと位置づけることが重要だと思っています」
全員経営合宿では、執行責任者に「なぜその活動が私たちに必要なのか」を説明してもらい、メンバーが納得するまで議論するという。また、活動後には詳しい振り返りも行う。さらに、活動を全体のなかに位置づける意味で、あらかじめ使用可能なリソース(お金、時間)の幅を設定し、活動後の評価軸も決めておく。

イノベーティブとは、制約なく行動できること

「組織内のだれもが経営に携わる環境と仕組みづくりの成果については、手応えを感じています」と辰巳さんは語る。
「この取り組みを通じて、風土改革ノウハウの形式知化や新サービスの開発など、新しいプロジェクトがいくつも立ち上がってきて、メンバーが成長し、成果も積み上がってきました。ゼロから実現させたものも多数ありますから、手応えは大きいです」
同社は2017年に現在のオフィスに移転したが、これも「現在のオフィスでは、この会社がやるべきことができないから、最適なオフィスを選んで移転しよう」と提案したメンバーが執行責任者となり、プロジェクトが立ち上がって実現したものだ。
「イノベーティブ組織を私たちの言葉で表現するとしたら、『問題を感じたときに制約なくチャレンジできる、行動できる組織』ということになります。チャレンジする課題には、経営の中心課題もあれば、かなり遠いものもありますが、それらをできるだけ経営課題として位置づけて、チャレンジできる環境をつくったということです」
ここまで紹介してきた全員執行責任者体制のほかに、同社には「旗制度」というものがある。これも個のチャレンジを促す仕組みの1つだが、旗制度は経営課題としては取り上げられないチャレンジを扱うものだという。
「会社としては、できるだけ個人の思いを経営課題に結びつけたい。けれども、それが難しい場合にも取り組みを会社として応援できる仕組みはもっていたい。それが旗制度です。
冒頭でお話しした『問い直し』ということでいえば、経営が指し示す方向性や枠組みすら、だれもが遠慮なく問い直せるような組織でありたい。それができる組織であってはじめて、自ら考えるということを大切にできるイノベーティブな組織になれると思うので。もちろん、それは経営課題にはできないけれども、旗制度があれば、そういう余地も残しておけます」
社員一人ひとりが主体的に活動し、力を発揮できる組織の実現をめざす同社の取り組みが、今後、どこまで拡大していくのか、引き続き注目したい。

(取材・文/外﨑 航)


 

成果とやりがいはトレードオフではない

野崎治之輔さんに、スコラ・コンサルト入社後の仕事とそのなかでの学びについて聞く
私は、分野の違うコンサルティング会社から転職して3年目になります。現在はマーケティング業務を中心に、広報やイベント企画なども担当しています。

 この会社で働くようになって、いちばん驚いたのは、本当にだれでも何でも言っていい、ということです。企画内容がしっかりしていれば、だれの発案でも採用されます。私の企画が最初に採用されたのも入社3カ月目でしたし、その後も、周囲の後押しを受けながら、いくつもの企画で中心的に携わらせてもらっています。そのように働いているうちに、仕事に対する価値観も変わってきたように思います。売上や利益から仕事のプロセスを考える習慣が染みついていましたが、いまはまず「だれのため、何のためにやるのか」を考え、「関係者全員がどうやったら満足できるか」を軸にして、仕事に取り組むようになりました。

 イノベーティブであるために心掛けていることが5つあります。1つ目は、新しいことを学んでアクションを起こすことを意識すること。2つ目は、これまでのキャリアで培ってきた「構想を実務に落とし込む」という自分の得

意領域を活かすために、社内外からリソース(理想や構想)を集めること。3つ目はアウトプットを大きくするためにも、仲間を増やすこと。4つ目はウソをつかないこと。ウソをつく人がいるとプロジェクトの効率はかなり下がります。そして5つ目が、イノベーションをサステナブルにするために三方良しの仕組みを考え、つくっていくということです。

 「事実、実態を大事にする」とか「言行一致」などの言葉を掲げる会社は多いですが、入社して、それを本当に実践しているのをみて、非常に驚きました。社員一人ひとり、あるいは1つひとつのアイデアを、組織がしっかりインキュベートしている印象があります。私自身もすごく恩恵を受けていると思っていて、仕事の幅も年ごとに拡大しています。

 しかも一方で、ワークライフバランスもしっかりとれていて、好きな海外旅行に行く回数も増えています。いままで、成果とやりがいはトレードオフで、やりたいことをするためには何かを犠牲にしなければいけないと思い込んでいましたが、そうではないのだと知りました。こういう組織を維持していくには、経営層をはじめ、だれかがしっかりと組織をまとめ上げないとバラバラになってしまいます。私自身、その役目を担っていきたいので、これからも仕事のなかで、学びを重ねていくことができればと思います。

▼ 会社概要

社名 株式会社スコラ・コンサルト
本社 東京都品川区
設立 1986年1月
資本金 4,000万円
売上高 非公開
従業員数 37人(2019年3月31日現在)
平均年齢 47.3歳
平均勤続年数 13.1年
事業内容 組織風土改革コンサルティング
URL www.scholar.co.jp/

PR・広報・マーケティング プロデューサー 野崎治之輔さん(左)
代表取締役 辰巳和正さん(右)


 

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