事例 No.037
アイワ広告
特集 元気な中小企業の教育施策

(企業と人材 2015年12月号)

組織開発

「人間としてのあり方」をベースに、多彩な仕掛けで
モチベーション日本一の組織をつくる

ポイント

(1)人材育成のベースは「人間としてのあり方」。社内の掃除にも取り組むほか、地域のボランティアにも積極的に参加する。

(2)社内に貼り出した「星取り表」で、毎月、上司や先輩とスキルレベルを確認。レベルアップすればシールを貼り替える。

(3)本気モードで取り組めば達成感が得られることを確認するために、毎週1回、全員で「本気ですれば」と唱えて、「本気のじゃんけん大会」。

基本理念に共感できる人材を採用し切磋琢磨

1983年に創業されたアイワ広告株式会社は、数ある広告媒体のなかでも“集客できる看板”に特化して事業を展開している企業である。「集客看板製作のオンリーワンメーカー」を標榜し、感性工学などの科学的なアプローチに基づいて、店舗等の集客効果を高める看板のコンサルティングから、企画・デザイン、製作、設置まで、すべて一貫して自社で手がけているのが最大の特徴だ。
また、同社はJTBモチベーションズが実施した社員の仕事へのモチベーション調査で、全社員の仕事への満足度の結果が90.3点となり、全国平均69.3点を大きく上回って約4,000社のなかで最高得点を記録。「日本一モチベーションが高い会社」としても知られている。

図表1 アイワ広告の経営理念

図表1 アイワ広告の経営理念

同社の人材育成の基本的な考え方について、創業者の小山雅明社長はこう語る。
「人間の価値観は多様ですから、会社にもいろいろな価値観があるのは当然で、どれが優れているというものではありません。ただ、当社には当社の理念・価値観があるので、それに合った人材を求めています。採用の時点から掲げている『3つの経営理念』に共感した人材に入社してもらいたいし、入社後もその理念を実践できる人材を育てていきたい。そういう同じ方向を向いた人たちだからこそ、お互いに切磋琢磨でき、成長もできると考えているのです」
同社の経営理念は、図表1のとおりである。そして、「求める人材像」も、この経営理念に対応した形で、以下のようにあげられている。
(1)すべての部門において、自分の都合ではなく、なにがなんでもお客様店舗の集客UPを図るという120%の熱意、マインドで貢献する姿勢をもった人。
求める人材像の第1は、「社会人としての本質=常に相手の立場に立って考え、相手の利益のために働く」を体現している。同社は看板を使って企業の成長を支援することをめざしており、実際にも創業間もないころから同社がかかわり、現在は日本を代表する企業にまで成長したクライアントも何社かあるという。そういうなかでは、働く人材も自分中心ではなく、お客様第一の精神や熱意が求められるわけである。
(2)社会人・プロとして自らを律し、お客様、会社、チームに対する利他の精神で、困難に正面からチャレンジし人間的成長を図ろうと努力する人。
人材像の第2は「人間としての本質=常に自分を磨き、高め、成長しようと努力する」を体現する。働く人にとっては、生活時間帯のなかで仕事の時間が最も多くなるのが一般的であり、そこにやりがいや達成感があることが重要というのが基本的な考え方だ。
(3)社会にとって、真の存在価値をもつ会社として、ナンバーワンサインメーカー、サイン業の電通をめざすという、ワクワクする夢を共有化し、ベンチャースピリットで、たゆまぬ企業革新を続ける変革の歴史の主体者となることができる人。
人材像の第3は「仕事の本質=社会に貢献するために、仕事の質を常に高める」を体現している。同社の業務は、顧客から求められて仕事が発生するという側面が強いが、受け身のままでいるだけでは永続発展は望めないのであって、たゆまぬ企業革新が不可欠との考えから、既存の看板・サイン関連事業の深耕に加え、出版やブランディング支援等、新たなビジネスにも乗り出しつつある。そうしたチャレンジにも積極的に取り組む人材を求めているのだ。

▲境川クリーンアップ作戦の様子

▲境川クリーンアップ作戦の様子

なお、同社では現在、新卒を定期採用しているほか、中途採用者も新卒とほぼ同数採用しているが、そこでも理念に共感する社員を採用するというスタンスは変わらない。中途採用の場合はスキルや経験を重視する企業も多いが、同社では「理念に共感できないと組織を乱してしまう」ので、それらは最優先の選考基準ではないという。むしろ、理念の共感が得られた人材であれば、入社後の育成によってスキルは高められると考えているのだ。

階層別研修は毎週2回30分ずつ細かく行う

こうした理念および人材像をベースにして、それを実現していくためのさまざまな教育施策を用意している。
「もちろん技術やスキルの研修もありますが、それ以外にもさまざまな育成施策を用意しています。ベースになるのはやはり、理念にも掲げる『人間としての成長』です。挨拶や礼儀、掃除といったあたり前のことを含めて、人間としてのあり方を学び、成長してもらうという教育が中心ですね。たとえば掃除一つとっても、最近は不衛生だから自分では掃除しなくていいと親にいわれて、掃除の仕方を教わっていない人が多いそうです。そういう人たちに、いかにあたり前のことをあたり前にやるということを身につけてもらうか。たしかに掃除などは、業者に外注すればきれいになるし所要時間も少なくてすむかもしれません。でも、自分たちの環境を自分たちでつくっていくことで、いろいろな気づきが生まれます。なにより、本人が『やればできる』という達成感を味わうことが大切なのです」(小山さん)

図表2 研修カリキュラムの全体イメージ

図表2 研修カリキュラムの全体イメージ

階層別教育もユニークだ。毎週2回、30分程度ずつ、入社1年目、2年目、3年目からマネージャー層まで、階層ごとに集まって実施する(図表2)。全階層共通で、たとえば「なぜ何のために働くのか」といったテーマを設定して行うが、その具体的な中身や研修にかける時間は階層ごとに異なる。あるテーマについて、新人は1年間かけて学び、マネージャー層は短時間で確認するだけというケースもある。また、テーマは同じでも、その中身をより深く、またアプローチを変えて実施することも少なくないという。定例のものとしてはこのほかに、毎週3回、朝の15~30分程度をマインド面の研修にあてている。
一方、業務スキルなどの研修(業務研修)は各部署単位で行っている。常務取締役の大塚悦代さんは次のように話す。
「当社が手がけている看板のコンサルティング業務の場合は、日本国内はもちろん、おそらく世界でもあまり類例のない事業だと思います。現在そのノウハウを走りながら蓄積し、研修やOJTで新人を含めて共有化し、さらに蓄積しているという段階ですが、今後はこれを体系化していきたいと考えています」
そして、業務研修の内容については、次のように説明してくれた。
「業務研修では、各業務に応じた形での報告・連絡・相談の仕方や仕事のスケジュールの立て方、指示の受け方なども教えています。また、会社が掲げる『繁盛店づくり』という大きなテーマをベースにして、全部署がそのノウハウを学ぶ勉強会を開いたりもしていますね。
あとは、他の部署のことを知っていないと仕事がスムーズに進まないので、入社1年目の研修では、各部署からピックアップしてもらった必須の専門知識を身につけるプログラムを組み入れています。これにより会社全体の流れがわかるようになったので、どの部署に配属されてもある程度のイメージをもって入っていくことができています」(大塚さん)

地域のボランティア活動を積極的に取り入れる

同社はまた、広い意味での教育施策として、いくつかのボランティア活動への参加を、社員に呼びかけている。これも経営理念と密接に結びついた施策であり、自分中心に物事を考えるのではなく、利他の精神で社会貢献などに取り組み、人間的な成長をしてもらおうというねらいである。
・ゴミゼロ運動
月2回、定期的に近隣地域のごみ収集と清掃をする。
・境川クリーンアップ作戦
毎年1回、近隣の境川の河川敷や遊歩道の清掃、川の中まで入ってごみ収集をするとともに、地域のコミュニティをつくっていこうという活動である。境川クリーンアップ作戦実行委員会という緩やかな地域組織が主体となり、15年前から活動しているそうだ。同社
は5年ほど前から同委員会のスタッフとなり、地域に事業所のある企業の社員や大学生らと一緒に活動している。
・まち☆クリ(町田クリーンアップ作戦)
町田青年会議所が主体となり、町田の街をクリーンアップしていく「らくがき消し」中心の清掃活動である。
これらの活動は、いずれも強制ではないが、当日に仕事や家庭の都合等のある人を除いて、同社の社員はほとんどが自主的に参加している。また、正社員だけでなく、パートタイマーやアルバイトにも呼びかけていて、参加者の輪も次第に広がってきているそうだ。

「星取り表」などのユニークな施策でモチベーションアップを図る

▲星取り表

▲星取り表

このほか、通常の研修とは少し異なるスタイルで、社員の達成感やモチベーションを高めるためのユニークな施策を多数実施している。
(1)星取り表
同社では、部門別にスキルの具体的内容を細分化した一覧表をつくり、社内に貼り出している。項目は製作部門や営業・事務部門では60ほどもあるという。その項目ごとに、S(チェックができる)/A(教えることができる)/B(不測の事態にも対応できる)/C(1人でできる〔チェック必要〕)/D(教えてもらった)の5段階でレベルを判定。レベルに応じて異なる色のシールをその項目のマスに貼っていくのだ。これを「星取り表」と呼んで、社員のスキルアップの月間目標とも連動させ、
また賃金評価にも反映させている。「月に一度、各社員とその上司または先輩社員が一緒に星取り表の前に来て、どのスキルがどのレベルまで達しているかを話し合います。現状よりも1段上に到達しているとお互いに確認できれば、その場でシールを貼り替えます。『その場で貼る』というのがポイントで、本人も納得感があるし、レベルアップできたときは非常に大きな達成感が得られるのです。ひととおり確認が終わったら、次にどのスキルでどういうレベルをめざすかを話し合って、今度はそれを翌月の目標にします。翌月はまた振り返りをして、次の目標設定をするというふうに、毎月繰り返してスキルアップを図っていくわけです」(大塚さん)
なかには、上司はもう達成できたとみなしていても、本人のほうが「まだ自分はできていない」という場合もあるそうだ。そうした場合も、お互いによく話し合って決めているが、そうしたやりとりから社員の気質がある程度わかってくる面もあるので、その後の育成にも役立っているという。
(2)じゃんけん(本気ですれば)
これは、週1回、朝礼時に全社員でじゃんけんをするというもの。じゃんけんをする前には、「本気ですれば」という詩「本気ですれば大抵のことができる。本気でしていると何事も面白い。本気でしていると誰かが助けてくれる。人を幸福にするために本気で働いているものは皆幸福で皆えらい」(もとになっているのは明治の教育者・後藤静香の言葉)を全員で唱和する。
常に本気モードで全力を尽くすと達成感があり楽しいものであるということを、じゃんけんを通じて実感してもらうのがねらいである。
同社では、1人の顧客に対して企画営業や施工等、複数の異なる部署の社員がチームを組んで仕事をする。全員が同じマインドで、1つの目標に向かって本気で仕事をして、それを成し遂げたときの達成感は素晴らしく、非常に楽しい。だから本気になることが大切で、そのエンジンをかけるのが「じゃんけん」というわけである。
ちなみに、このじゃんけんは採用に応募してきた人にもまず体験してもらい、趣旨を説明するようにしている。
(3)月次決算報告会でのチーム発表
毎月1回、月次決算の発表に合わせて、チーム単位(4~5人程度)での目標と各個人の目標に対する振り返りを、全社員の前で発表する。
「月次決算では、その成果を共有し合います。また、もし目標が達成できていない場合は新たに目標を設定し直して、それに向けてこういう活動をしていくといったことを中心に発表します。また、月によっては四半期ごとの発表もしています」(大塚さん)
発表会の場では、他の人にも興味をもって話を聞いてもらうことも大切との考え方から、各チームで発表の仕方を工夫しており、BGMを流しながら発表するチームもあるという。
(4)社員食堂での懇親会
月1回程度、会社の食堂スペースで、パート・アルバイトも含め全員でコミュニケーションを深めるための社内懇親パーティーを開催している。社員が楽器を演奏したり全員で歌を歌ったりすることもあるそうだ。
最近は、飲み会などに参加したがらない若い人が増えているといわれるが、あまりそうしたコミュニケーションを好まない人たちでも、実際にその場に入ってみると意外と楽しいということがわかるとのことで、あえて居酒屋やパーティー会場などを使わずに社内で実施している。準備や後片づけまで全員でやることで一体感が生まれるという面もある。
(5)がんばった賞(社員表彰)
年間で最優秀社員賞、優秀社員賞、優秀新人賞などいくつかの賞を設け、表彰をしている。その際にも同社の場合は、人間的な成長を重視しているため、たとえば短期間で大きな成果を遂げたといった部分ではなく、前出の星取り表
でみた1年間の成長率(どのくらいレベルアップできたか)で最優秀社員を選んでいる。
(6)サンクスカード
同社のような仕事では、営業やデザインといった仕事が脚光を浴びがちだが、その人たちが活躍できるのも、たとえば営業事務や総務といった陰で支えてくれる存在があるからこそである。ただ、それは十分わかっていて、感謝の気持ちももっていたとしても、あらためて口にするのはなかなか気恥ずかしい面もある。
そこで、そういう縁の下の力持ち的な仕事をしている社員に、日ごろの感謝の気持ちを表すために、カードに感謝の言葉を書いて渡すという場面を定期的に設定している。カードをもらう側は、これがまたモチベーションにつながるわけだ。

高い目標を掲げることが重要、今後は研修の事業化もめざす

同社の社員が「日本一」と評価されるほど高いモチベーションをもち続けている理由として小山さんがあげるのは、1つには、ここまで紹介してきた教育・研修やモチベーション施策をずっと反復・継続させていることだ。とくに研修は、1回だけだと終わってしばらくすると忘れてしまったりしてなかなか身につかないので、細かく何度も繰り返し行っているのである。
また、「高い目標を掲げる」ことも非常に重要だという。
「目標の設定の仕方は難しいのですが、あまりにも高すぎて届かないと思ってしまうとやる気が出ない。でも、低くてもいけません。一見、不可能に近いけれども、やればできるのではないかというところが、一番モチベーションが高まります。それは、不可能を可能にするという達成感があるからです。
だから当社では、私自身が掲げる会社としての目標もそうだし、社員にもそういう高い目標を設定させるようにしています」(小山さん)
今後は、とくに研修については、社内で実施するだけでなく、新規事業として取り組み、外部企業に販売していくことも視野に入れている。それにより、社内の研修もより高度化させ、いっそう充実した人材育成を手がけていくことが大きな目標である。
日本一モチベーションの高い会社が手がける研修が広がっていけば、社員のモチベーションの高い元気な企業が続々誕生するという可能性も十分で、今後が楽しみである。

(取材・文/中田正則)


 

▼ 会社概要(2015年3月末時点)

社名 アイワ広告株式会社
本社 東京都町田市
設立 1984年5月
資本金 9,000万円
売上高 7億2,000万円(2014年度)
従業員数 60人
平均年齢 29.0歳
平均勤続年数 7.0年
事業案内 看板製作・屋外広告業(集客アップコンサルティング事業、看板製造・施工事業)
URL http://www.aiwa-ad.co.jp/
(左)
常務取締役
大塚悦代さん
 
(中)
代表取締役社長
小山雅明さん
 
(右)
人財開発推進部
井上惠美子さん


 

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