事例 No.128 大東建託 特集 気づいて動く接遇を学ぶ
(企業と人材 2018年2月号)

接客教育

記事の内容およびデータは掲載当時のものです。

接遇コンテストで社員の接遇レベルを向上
お客さまに対して自分で考えて行動できる人材を育てる

ポイント

(1)2013年ごろから、顧客と直に接する仲介部門および管理部門の社員について、接遇レベル向上をめざした取り組みを強化。“自分で考えて行動できる人材”を育成する。

(2)新卒および中途入社者を対象に、入社初年度に複数回の集合研修を実施。場面別ロールプレイングなどで接遇の基本を学んでもらう。また、OJTと組み合わせて育成する。

(3)社員の接客技術やホスピタリティの向上を目的に、毎年「接遇コンテスト」を開催。接遇に対する意識とスキルの向上につなげる。最優秀者の競技の様子はDVDに収録し、社員教育などに活用する。

接遇の重要性を認識し、取り組みを強化

賃貸不動産の最大手である大東建託株式会社。現在は、同社と、仲介部門の大東建託リーシング(2017年に同社から分社。以下、リーシング)、管理部門の大東建託パートナーズ(旧大東建物管理。以下、パートナーズ)を、大東建託グループの主要3社と位置づけ、事業を展開している。グループが連携し、土地オーナーから賃貸建物の建築と管理を請け負うとともに、入居希望者に最適な住まいやサービスを提供する事業を行っている。

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各分野でそれぞれの専門性を発揮できるよう、事業部門別の組織体制を採っているが、建物のオーナーとも入居者とも、長いつき合いになる。顧客とのより良い関係づくりのために、社員の接遇レベル向上は欠かせない。
リーシング、パートナーズ両社の社員教育を担当する同社不動産事業教育推進センター管理教育課課長の白井智之さんは、次のように話す。
「当社は、賃貸建物の建築のご提案に始まり、建てた後の入居者さまの募集・あっせん、建物の管理までを一貫して行っています。アパートを建てて終わり、地場の仲介会社さんに任せて終わりではなく、最初から最後まで、建物のオーナーさま、お部屋を探されている方、入居された方たちの近い存在であることを意識しています。
オーナーさまやお部屋を探されている方と直接かかわる社員の配慮と誠意が足りていないと、これからの時代は生き残れません」
同社が接遇の教育を重視するようになったのは、2013年ごろから。きっかけは、顧客から社員の応対について苦言をいただいたことだ。「いくら仕組みや商品がよくても、お客さまと接する社員の応対に問題があると、お客さまの満足は得られない」と考えるようになった。また、同社の事業では、直接の顧客だけでなく、近隣住民とのかかわりも無視できない。同社が地域に密着していないと、オーナーも入居者も困ることになる。
マナーなどの教育は以前から行っていたが、以前はどちらかというと、専門知識の習得や業績向上・収益確保に重きを置いていた。企業経営においては、それらももちろん重要だが、「それだけでは足りない」と、接遇レベルの向上をめざすようになった。

自分で考え、自分で行動できる人材を育成

今回取り上げる接遇の教育と「接遇コンテスト」の対象者は、リーシングとパートナーズの社員だ。両社の社員の大半は、賃貸建物のオーナーや入居者と直に接する職種である。
リーシングには約1,100人、パートナーズには約2,900人の社員(アルバイト除く)がおり、一人ひとりの教育にかけられる時間はどうしても限られる。また、顧客は当然、感じ方や求めるものなどが一人ひとり異なるので、臨機応変な接遇が求められる。そのため、社員たちが自分で考え自分で行動できるように育てる、という方針をとっている。
「企業理念や教育方針、接遇の考え方などを腹落ちさせて動機づけできれば、一人ひとりが自分の判断で動くようになります。やらされるのではなく、『このお客さまにはこのように対応したら喜ばれるのでは』と、現場の社員が常に自分で考え、自分で動くところまでもっていければ、自然とおもてなしや接遇ができる組織になります」

入社初年度の研修で接遇の基本を学ぶ

リーシングの新卒入社は、年100〜120人。一方、パートナーズは年60〜70人ほどである。また、中途入社は2社を合わせると、年間200〜300人にのぼる。
新入社員の育成は、入社初年度の複数回の集合研修と現場のOJTを組み合わせながら進めていく。階層別に、入社したら3カ月でここまで修得してもらう、6カ月経ったらこのレベルに到達してもらえるようにする、と段階的に目標を定め、それぞれのタイミングで集合研修を行っている。
まず、新卒社員は入社したらすぐ、研修施設に泊まり込みで約2カ月間の集合研修を行う。ここで社会人としてのマナーや業務の基礎知識とともに、接遇・おもてなしの考え方を理解してもらい、お客さま対応の基本を修得させOJTへとつなげていく。

図表 中途社員向け集合研修(入社月)プログラム

図表 中途社員向け集合研修(入社月)プログラム

また、中途社員については、入社月に2社合同で3日間の研修を実施(図表)。中途社員は通常、社会人としての基礎を身につけており、業界経験者も多い。それでも、ここでは基本マナーと接遇の重要性の理解を徹底させる。そして、2社合同で行うことでお互いの事業を知り、顧客に対して協力して対応することの大切さを学ぶ。
新卒社員、中途社員ともに、入社月の研修では、顧客満足の重要性や、接遇・おもてなしの考え方をしっかりと理解させる。そうすることで、自分から「お客さまに何かをしてあげたい」と思うようになり、自分で考えて行動できる人材に育っていく。
「お客さまを思う気持ちは新人でももてますので、入社月の研修でそれを徹底します。考え方を理解して、やらされ感なく動けるようにすることが大切です。
一方で、外見や所作のような目で見てわかるところも大事です。型が身についていると、自分で考えて行動したときに、自然と気持ちのよい接客になります。最初は形からでもよいととらえ、所作などの指導にも力を入れています」
さらに、業務理解を深めながら、場面別のロールプレイングを行う。実施後は、自分のどこがよかったか・悪かったかを振り返り、ほかの研修生らと意見交換をすることで、自分で考える習慣を身につけてもらう。
また、「接遇コンテスト」(社員同士の対応スキルを競うもの。後述)の最優秀者の実際の映像を見せ、「この人の接遇のどこがよかったのか」、「自分がお客さまだとして、こういう接客を受けたらどう感じるか」を研修生同士で話し合ってもらう。「自分もこうなりたい」と意欲も高まり、ここでも自分で考える訓練をさせることができる。
2回目以降の研修では、2社それぞれで各階層ごとに業務知識の確認と絡めながら、接遇のケーススタディを行う(パートナーズは入社3カ月後および8〜9カ月後、リーシングは入社6カ月〜1年後に実施)。ロールプレイングを取り入れて、「こういうとき、どう対応すべきか」を考えてもらう。そして、研修生同士でよかったと思う点を共有し、改善点をアドバイスし合う。
このように期間を置いて複数回の研修を実施することで、前回の研修以降、仕事に追われて意識が薄れていた社員に、あらためて接遇の大切さを感じてもらうことができる。実際の苦情や失敗例も共有し、接遇の大切さを再度実感してもらう。
各研修の講師は、主に教育部門が務める。ただし、新卒社員の研修では、外部講師の協力も得る。現場経験があり、業務をよく理解している自社の社員が教えることにもメリットがあるが、外部講師の熱意ある姿に刺激を受け、「私もああいうふうになりたい」とモチベーションが高まる面もある。

OJTと組み合わせて育成現場の判断を尊重

集合研修で基本を徹底する一方で、現場のOJTも重視している。教育の方向性を伝えはするが、現場の判断や考え方に沿って指導してもらうことが大切だとしている。
「たとえば、関西と北海道・東北とでは、お客さまに同じ対応をしても反応が違います。お客さまによって臨機応変に、社員自身で考えて行動する組織にしないと、接遇は成り立ちません。そのため、詳細なマニュアルを定めてガチガチに固めてしまうのではなく、かなりの部分を現場の判断にゆだね、現場の管理職を中心に新人を指導してもらいます」
OJTを担当する先輩は、入社3〜5年目くらいの社員が多い。指導する側も、教えることで成長できる面があるので、先輩社員の成長を促すことにもつながる。先輩社員は、顧客訪問の際に新人を同行させたり、実際に本人に対応させたりしながら、自分が教わったことや仕事のなかで学んだことを伝えていく。

社員の接遇意識を高める接遇コンテスト

同社では、リーシングとパートナーズの各拠点の全社員(管理職は除く)を対象に、2013年より毎年「接遇コンテスト」を開催している。これは、社員の接客スキルやホスピタリティの向上を目的とし、社員同士で応対スキルを競うものだ。
「接遇、おもてなしを強化していくにあたって、まずは社内の注目を集めるために始めました。現場には、われわれが思っている以上に、しっかりと取り組んでくれている社員がたくさんいます。その現場の優秀事例を共有することも目的の1つです」
リーシングは仲介事業、パートナーズでは、建物を管理する管理課、営業所の電話窓口となる業務課、不動産会社との窓口となる賃貸マーケティング課の3つに分かれているため、コンテストでは、合わせて4つの部門で競技を行う。
コンテストの流れをみてみると、まず、例年5月ごろに全国を4ブロックに分けた地区大会を開催。各部門から4〜5人ずつ出場し、マネージャーらが審査を行う。そして、勝ち上がった各部門1人の地区代表が、6月の全国大会へ進む。全国大会では、両社の社長を中心とする役員らが審査員となる。
出場者の選び方はその年によって異なり、エリアマネージャーの推薦で決めたこともあれば、地区大会の前に予選会をしたこともある。2018年度は、2017年11月〜2018年2月に、全国17〜20エリアで予選会を実施。以前は現場の目で審査してもらったが、今回は本社(教育部門)の社員が各エリアに出向き、現場と本社の両方の目で見て審査することにした。代表に選ばれなかった社員のなかにもよい部分があり、それを本社でも共有したい、という事例があったためだ。
大会(地区および全国)では、ロールプレイングによる実技が行われる。部門(職種)ごとに設定を決め、プロの俳優が演じるお客さま役を相手に接客をする。1競技の所要時間は15分前後。審査する側の負担も考慮し、必要以上に長くならないようにしている。
実技の際の場面設定は、教育部門が考える。お客さま役に無理難題や苦情をいってもらうほか、気づかいができるかをチェックするため、風邪を引いたふうに装ってもらうこともある。
2017年6月に行われた前回の全国大会では、次のような場面設定がされた。まず、パートナーズ管理課が、建物が完成したタイミングでオーナーを訪問し、管理を開始するにあたってサービスの説明をするというもの。そして、リーシングがその建物を入居希望者に紹介する、というように両社でストーリーをつなげた。
この年は、店舗のスタッフ全員で接客する体制を築いてもらえるよう、各店舗より2人1組のペアで競技を行った。「接客してくれた担当の人はよかったが、ほかのスタッフはそっけなかった」という顧客の声が、一時期目立ったためだ。現場の課題を踏まえた設定にすることで、単なるイベントに終わらせないようにしている。
続いて、入居者から苦情の電話がかかってきたという設定で、パートナーズ業務課の電話応対の競技を実施。最後に、その建物が10年経ち、オーナーさまに事業報告するという設定で、パートナーズ賃貸マーケティング課の競技を行った。
「俳優の方に想定問答集を渡してセリフの練習をしてきてもらい、競技に臨みます。予定どおりに進まないこともあり、舞台裏で、『次はこの場面でこう言ってください』と指示しながら進めますが、あまり肩に力を入れ過ぎず、楽しみながら運営しています」
その後、審議の時間を設けて、審査員一人ひとりに点数と順位をつけてもらう。審査項目は非公表だが、10〜15項目ほど設け、お客さまの発言にどう答えたか、対応に心がこもっているか、いっていることに間違いがないか、などをチェックする。
審議時に順位を出すが、必ずしも、順位が高ければ選ばれるわけではない。競技参加者のなかには、全体的にまあまあよかったという評価の人もいれば、明確に「ここがよかった」という人もいる。それらを踏まえて、審議する際は、お客さまの立場に立って評価していく。
最終的に、各部門から最優秀賞、審査員特別賞(該当者がいる場合)を選出し、受賞者には賞状とクリスタルトロフィー、副賞として国内家族旅行などを贈呈する。
なお、回を重ねるうちに、同じ社員が全国大会に勝ち上がってくる傾向が見られたため、2016年からは、一度受賞したら“殿堂入り”とし、次回以降の出場はなしということにしている。
受賞者の競技の様子はDVDに収録し、全国の店舗・営業所へ模範事例として紹介する。また、前述のように、新人研修をはじめとする各研修プログラムでも活用し、全社的な接遇のレベルアップにつなげる。

▲接遇コンテストにて。来客応対の競技の様子

▲接遇コンテストにて。来客応対の競技の様子

家族も巻き込んでコンテストを盛り上げる

大会には、同じ店舗の同僚に応援に来てもらう。出場者の緊張を和らげてもらう意味もあるが、見学する側に学ばせるねらいもある。
最近は、出場者の家族も招待している。ただし、競技の様子をみられることを恥ずかしがる参加者もいるため、表彰式と懇親会のみの招待となる。その日は会場のホテルに宿泊してもらい、翌日、家族で東京観光ができるようにしているので、家族からの評判もよく、会社や仕事に対する理解にもつながっているという。
出場者と家族が東京観光をしている様子は、本人たちの声とともに社内報で紹介する。社内報は社員の自宅に郵送されるため、それを見た家族が、「あなたも代表に選ばれるようがんばって!」と、出場経験のない社員の背中を押してくれることも期待している。

さらなる接遇レベルの向上。接遇意識の浸透をめざす

受賞者からは、「この経験を営業所の仲間と共有し、業務に活かしていきたい」、「今後もお客さまのことを考え、気持ちのよい笑顔で対応をしていきたい」、「さらなる高みをめざし、今後もいろいろなことに挑戦していく」といった前向きな声があがっている。そのほかの社員も、「来年またチャレンジする」と述べるなど、よい刺激になっているようだ。
「だれしも、日常生活のなかで、少なからず接客を受けてきていますが、それを振り返って、どんな接客がよかったか、悪かったかと思い返すことはあまりないでしょう。接遇コンテストは、それを思い返したうえで、『私はできているだろうか』と自分自身について見つめ直す機会になります」
じつは、コンテストで代表に選ばれるのは、入社3年以内の社歴の浅い人が多い。もちろん、ベテランのなかにも、自分なりのやり方でよいおもてなしをし、コンテストで入賞する人もいるが、全体的な傾向としては、接遇に対する教育を重視するようになってから入社した人のほうが多いという。
「一時期、『ゆとり世代』の若者はマイナス面ばかりが指摘されていましたが、その世代の人たちとコミュニケーションを取ってみると、よい面がたくさんあることに気づきました。彼らは、優しく育てられているからか、優しい性格で、仲間意識も強い。周りに対する気配りもできます。
これは私が実際に感じたことですが、混雑した通勤電車で年配の方に席を譲る人の多くは、その世代の人たちです。もちろん、よい部分ばかりとはいえないかもしれませんが、お客さまに対する接遇やおもてなしの考え方の部分では、共感が得られやすいと感じます。われわれの世代がもっていない強みがありますので、教育部門として、それを活かしていけたらと考えています」
こうした活動を続けてきたことで、最近は、顧客からお褒めの言葉や感謝の手紙が増えてきている。入居者アンケートの満足度も上がっている。クレームがなくなったわけではないが、接遇の教育を強化し、コンテストを始める前と比べると、確実に変わったという。リーシングの契約件数も右肩上がりで増えており、その理由の1つに、社員の接遇レベル向上があるのは間違いないだろう。
「いまはまだ、われわれがめざすところには到達していません。現場は忙しいなか業務をこなしながら動いていますので、まだまだ接遇が浸透しきれていないというのが正直なところです。
今後も引き続き、新人への表情や所作、考え方の教育に注力していきますし、一人ひとりが考える力を養えるように、どの研修でも接遇を意識してプログラムを考え、指導していきます」
社長が社員に経営方針を伝える際、注力する点の1つに接遇スキル向上を入れてもらうなど、今後も、全社的な接遇意識をさらに高めていくための取り組みを続けていく。
接遇コンテストも、「もっと社員が注目するやり方に変えていきたい」ととらえており、2018年度は、全店舗・営業所に大会の様子をライブ中継することを計画している。いままでは、参加者以外にはなかなか伝わらない傾向があったが、ライブ中継をすると、参加意識も高まり、盛り上がるだろう。
こうした社員教育やコンテストについては、常に改善しながら取り組み、「次はどうしようか」と頭を悩ませているが、現場の苦労を考えれば、裏方の大変さなどあってないようなものだという。
「現場の社員がやりがいを感じてくれれば私もうれしいですし、それによってお客さまからの『ありがとう』が増えれば、それが一番です。社員教育や接遇・おもてなしには、ゴールはありません。根気強く、繰り返しやっていかなければならないと考えています」

(取材・文/崎原 誠)


 

▼ 会社概要

社名 大東建託株式会社
本社 東京都港区
設立 1974年6月
資本金 290億6,000万円
売上高 1兆4,971億円(2017年3月期連結)
従業員数 1万6,054人(連結)
事業案内 賃貸住宅建設・入居者斡旋等の不動産仲介、 建物管理、不動産管理など
URL http://www.kentaku.co.jp/

不動産事業
教育推進センター
管理教育課 課長
白井智之さん


 

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