事例 No.108 ノバレーゼ 特集 いつから始める? 新入社員教育
(企業と人材 2017年9月号)

新入社員教育

記事の内容およびデータは掲載当時のものです。

「ドキドキワクワク」を促す仕掛けの数々で
人を喜ばせ、感動させる人材を育成する

ポイント

(1)毎年2回、内定者研修を実施。初回はアウトドアでの体験型研修であり、チームワークを育むとともに、ドキドキワクワクしながら参加することで、人を喜ばせたり感動させたりする仕 事の一端を体験してもらう。

(2)入社直後から約1カ月間、新入社員研修を実施。前半は新人全員を対象に、志望動機の作文提出や、業界知識などを習得。後半は総合職を対象に、職種に特化した研修を行う。

(3)入社1年目の締めくくりに、ブラッシュアップ研修を実施。1年間の棚卸をし、今後の目標設定や、先輩社員としての心構えなどを学ぶ。

経営理念の浸透を重視し、すべての研修を内製化

全国にスタイリッシュな婚礼会場を展開していることで知られる株式会社ノバレーゼは、婚礼プロデュース、婚礼衣裳サービス、婚礼会場のレストラン運営などのブライダル事業と、一般客を対象にしたレストラン特化型店舗の運営事業を営む企業である。
同社の経営理念は「RockYourLife世の中に元気を与え続ける会社でありたい」である。企業理念の成り立ちについて、教育研修部部長の渡瀬舞子さんは次のように説明する。
「当社は創業以来、『世の中に元気を与え続ける会社でありたい』を経営理念に掲げてきましたが、会社がめざす方向性をもっとシンプルにわかりやすく表現しようというプロジェクトのもと、各職種を代表するスタッフが集まって話し合いました。
その結果、『結婚式だけにとどまらず、出会うすべての人の心を揺り動かし、感動を届けられるような会社でありたい』という思いを確認したことから、『Rock(揺り動かす)YourLife』を付した新しい経営理念が誕生しました」
このとき、「人のために生きよ」という社是も策定された。このフレーズにも、経営理念と同様に「すべての人に元気やエネルギー、感動を届けられるような人、会社でありたい」という意思が込められている。
また、同社は、「企業は人と環境がすべて」という考えのもと、人材の採用と教育に力をいれている。そこには「結婚式のサービスは目にみえるものではないので、直接触れ合うスタッフが、お客さまに信頼していただけるかどうかが重要」という視点がある。
こうした理念を背景に、採用選考過程では、志望者が生まれ育ってきたなかで培った信念、考え方と、ノバレーゼの経営理念や社是との間に親和性があるかどうかをみて、重要な採用基準としている。
教育研修でも、経営理念や社是の浸透を重要なテーマととらえている。たとえば「ビジネスマナー研修」では、基本のビジネスルールを学ぶと同時に「なぜそれが必要なのか」というグループディスカッションをして、研修を深めていく。表面的なルールの習得に留まらず、すべては相手の喜びに繋がっていると理解することで、この研修の着地点が「RockYourLife」や「人のために生きよ」に結びついていく。こうした教育を徹底するため、同社の研修プログラムはすべて教育研修部が開発、実施しているという。
「創業時からこのような教育を徹底してきたことによって、社内全体に経営理念が浸透しており、
また、その理念の下で自走できるスタッフが育っています」
内定者研修および新入社員研修についても、他の教育研修と同様に、同社の理念、社是の浸透を図る重要な機会であると考えられている。

内定者研修で「ドキドキワクワク」を体感

それでは、同社の内定者・新入社員研修について詳しくみていくことにしよう。
同社の新入社員は、毎年70人ほど(ウエディングプランナー、ドレスコーディネーターなどの総合職約50人、調理師やパティシエなどの専門職約20人)で、男女比はおよそ2:8の割合である。
内定者研修は入社までに2回行われ、初回は2泊3日の宿泊研修(8月)、2回目は1日研修(10〜11月ころ)となっている。
初回の内定者研修は、アウトドアでの体験型研修である。ここ数年は、ウォークラリーを取り入れたプログラムを実施してきた。各5、6人のチームに分かれて、企画内容を記載した冊子と地図、水の入ったリュックを背負ってウォークラリーに臨み、指定場所で出される問題をチームで協力して解いていくという内容である。そのほか、これまでに、いかだレースや創作ダンスの対抗戦、お神輿を担いでレースをし、神輿の出来栄えを競い合うなど、柔軟な発想で企画した多様なプログラムを実施してきた実績がある。
このように、初回の内定者研修では、業務に直接関係する教育プログラムは実施しない。そこには、この研修が、これから一緒に働く仲間や先輩たちとの顔合わせの時間であるという考えがある。渡瀬さんは研修のねらいについて、次のように説明する。
「私たちの仕事は、誰かに喜んでもらえる企画をつくり、それを実現することです。
この研修では、学生(内定者)たちがドキドキワクワクしながら研修に参加し、趣向を凝らしたプログラムに真剣に取り組むことにより、人を喜ばせる、感動させるという自分たちがこれから携わる仕事の一端を体験してもらいます。それと同時に、その場にいる仲間たちとそんな仕事をしていくのだということも、感じ取ってもらいたいと考えています」
注目したいのは、「ドキドキワクワク」を促す仕掛けである。たとえば、研修に先立ち、内定者の自宅に招待状が郵送で届く。そこに記載された内定者専用ページのURLを開き、指示に従って進むと、研修に関する情報(場所など)が少しずつ開示されていく。ただし、核心となる研修内容は、当日、現地に到着するまでわからない。このような仕掛けによって、学生の気分を盛り上げるのである。
また、研修にはその年ごとにテーマが設定される。オリンピック開催年はオリンピックがテーマとなり、招待状にも「ノバリンピック開催」というキャッチコピーが入るなど、遊び心のあるデザインが施される。招待状をメールではなく郵送するのも、関心を高めるための工夫なのだそうだ。
プログラム中で出される課題の難易度を高めにしているのも、特徴だ。ウォークラリーの場合は距離が長く、身体的にもハードな内容になっている。このように高いハードルにしたねらいについて、渡瀬さんは次のように説明する。
「人それぞれ能力は異なりますが、それをチームメンバー同士で補いながら目標に向かっていくと、想像以上のパワーが生まれ、難問も必ず解決できます。
問題に直面したときは『難しい』、『できない』と感じるでしょうが、そうした課題をチームで乗り越える体験をして、達成感を得てもらうために、高いハードルを設定しています」
ときには脱落しそうになる参加者もいるが、そんなときは、サポート役として同行している先輩社員からの叱咤激励がある。先輩たちは、学生(内定者)たちが乗り越えられるように、ユーモアを交えながら励まし続ける。このようなシーンからも、入社後の先輩と後輩の関係性を感じてもらうことができる。
「当社では、採用面接などを通じて『ノバレーゼに入社するということは、難しい課題に自らチャレンジしていくことなのだ』ということを理解してもらっています。積極的にチャレンジするという内発的動機づけをすることが、その目的です」
したがって、内定者研修に参加しているのは、チャレンジすることを決意した人たちなので、先輩の叱咤激励もきちんと届くのだそうだ。
「チャレンジすることは楽しいということを知っている人材を採用し、これからはじまる社会人人生でも、楽しみながら挑戦を続けてほしい。その縮図のような研修プログラムを企画しています」
研修で体験したことを、その後も鮮明に覚えている社員が多いそうだ。
「招待状が届いたときの高揚感や、これから働く仲間と初めて出会ったときの感動は、内定者一人ひとりにとってかけがえのないものです。結婚式で、私たちがお客さまに提供するのも、そうした喜びや感動です。
この研修は、学生たちがそのことに気づき、今度は自分が喜びや感動を提供していく番だということを自覚し、これからノバレーゼで働くことを想像しながらドキドキワクワクしてもらえる重要な機会となっています」
初回の研修から約2カ月後に、2回目の内定者研修が実施される。同社の経営理念や事業内容について学ぶほか、社会人に必要なコンプライアンス、個人情報の取扱いに関する基礎知識、身だしなみなど、ビジネスマナーを学ぶプログラムを実施する。
これらのプログラムを通じて、社会人になるうえでの心構えを醸成することが、この研修の最大の目的だと渡瀬さんはいう。
「内定者研修の段階では、多くの人が経営理念や事業内容、ビジネスマナーなどを理解していません。2回目の研修では、入社までにどのような課題を設定し取り組めばよいかを考えるとともに、これからはノバレーゼの一員としてみられるのだという意識をもつ機会にしてもらっています」
研修の締めくくりでは、内定者全員が「一言スピーチ」を行う。「ビジネスマナーについてきちんと考えていなかったので、少しでも勉強しておきたいと思います」、「先輩たちがつくってくれた歴史を自分たちがこれから担っていくのだという意識で、社会人の自覚をもって4月を迎えられるようにがんばります」というようなスピーチを全員が発表する。スピーチを考えながら、自分に何が足りないかを分析し、入社までに身につけるべきことを整理してもらうとともに、意識チェンジを促すことがこのプログラムのねらいだ。

約1カ月間で新入社員としての基本を身につける

次に、新入社員研修について詳しくみていこう。
同社の新入社員研修(新卒総合基礎研修)は、約1カ月間の合宿研修形式で実施される(図表)。合宿期間中、新入社員は朝から晩までみっちり研修プログラムに取り組むことになる。また、集団生活を通じて役割や責任を自覚し、さらに日ごろから他者への配慮を意識するなどして、サービスパーソンのマインド醸成に取り組む。

図表 2017年 新入社員研修の内容

図表 2017年 新入社員研修の内容

なお、研修実施期間は職種によって異なる。まず、前半2週間は新入社員全員を対象に実施し、終了すると、調理師、パティシエなどの専門職は現場に着任する。
一方、ウエディングプランナー、ドレスコーディネーターなどの総合職は、後半2週間の研修プログラムに臨み、それぞれの職種の専門スキル習得をめざすという流れだ。
新入社員研修がスタートするのは、入社前日の3月31日。この日の晩、新入社員は合宿所となるホテルに集合するのだが、ここで重要なイベントがある。教育研修部から研修に関する注意事項を説明するとともに、「今日の24時(3月31日から4月1日に変わるとき)を大切にしなさい。それは、あなた方の人生が変わるときです」と新入社員に呼びかけて、同社の一員になる自覚を一層強くもつように促すのである。
翌4月1日には社長の講話があり、その後に作文の時間が設けられている。このプログラムについて、渡瀬さんは次のように説明する。
「ここでは、志望動機を書かせます。入社日を迎えたそのときの気持ちをいつまでも忘れないために、記録しておこうというわけです。これは教育研修部が保管し、その後の研修で活用します」
4月2日からは、婚礼衣裳や婚礼プロデュース、同社の事業の基礎知識、ビジネスマナー、会社概要、コンプライアンスなど、さまざまな知識の習得を目的とする教育プログラムを実施する。また、模擬披露宴やサービストレーニング研修、婚礼料理ディナー体験など、婚礼に関係するイベントを体験的に学ぶことを目的にしたプログラムもある。
これら多様な研修プログラムのなかでひときわ目を引くのが、模擬披露宴のあとに実施される「余興研修」だ。新入社員代表が新郎新婦を演じて催される模擬披露宴を見て、新入社員の多くは感動するという。その思いが冷めないうちに、人を喜ばせること、感動させることに、実際に挑戦してもらうのである。

▲新入社員研修の様子(右の写真も同じ)
▲新入社員研修の様子(右の写真も同じ)

▲新入社員研修の様子

まず、模擬披露宴後にグループディスカッションを実施。そこで新入社員から「人を喜ばせる、感動させることにゴールはないと思いました」という気づきを得られたら、「そのとおりなんです。このあとは、それに気づいた皆さんと『余興研修』を実施します」と、余興研修の始まりを宣言する。こうして、人を楽しませるために、限られた時間のなかで仲間とともに創意工夫するのだ。
「余興と聞いて委縮してしまう人も少なからずいますが、研修なので断ることはできません。第一印象で無理だと思ったことを乗り越えることでひと皮むけるのです。
新入社員は、これからは人に喜びや感動を提供していく立場になります。余興研修を通じてそれを知ってもらうのです」
後半2週間は、総合職(ウエディングプランナー、ドレスコーディネーター)を対象に、職務に結びついた具体的な研修を実施する。ウエディングプランナーが後半の研修でめざすのは、利用客との初回打ち合わせに臨み、招待状の手配方法についてしっかりと説明ができるようになることである。
また、ドレスコーディネーターは、基本的なドレスの知識を身につけ、メーンのドレスコーディネーターを支援するヘルプ要員の役割をマスターすることをめざす。
それに対して教育研修部は、研修を終えて全国の事業所に配属されたスタッフが、足並みをそろえてデビューを迎えられるようサポートする。

自分と向き合い強いマインドを醸成する

新入社員研修が終了すると、配属先でのOJT指導が始まる。OJTトレーナーを担当するのは、新入社員と年齢が近い入社2、3年目の先輩社員だ。
「この1年は、現場で基礎を学ぶ期間です。先輩たちも覚悟をもって引き受けてくれているので、この間、新入社員の成長は現場にすべて任せることになります」
1年間のOJT指導で成長した新入社員は、入社1年目の締めくくりとして、入社の翌年3月に実施される2泊3日のブラッシュアップ研修(合宿)に臨む。
この研修で新入社員は、1年間取り組んできたことの棚卸をするとともに、今後の目標設定や、先輩社員として次の新入社員を受け入れ、OJTトレーナーを務めるための準備をする。
研修初日は、「2年目になること」や「ノバレーゼ流のOJT」をテーマにした講義があり、続いて「自分年表」を作成する。年表には、「こんな失敗をして落ち込んだ」、「お世話になった先輩が異動した」、「同期が退職した」というような、新入社員それぞれの「三大事件」を盛り込むことになっている。年表を作成しながら、1年間の自分の仕事や行動をつぶさに振り返るのである。
研修の山場は、2日目に半日がかりで実施される年表の発表だ。各5、6人のグループに分かれ、グループ内で1人ずつ自分年表をもとに1年間の振り返りを発表していく。発表後は、グループメンバーとの質疑応答が行われる。
このとき自分年表を発表する新入社員は、相手が同期ということもあり、1年間の経験を包み隠さずに語る。自分がいかにして悩みや困難を乗り越え、成長できたかが語られることも多い。ただし、なかには不都合なことを隠したり、仕事の成果を針小棒大に語ったりする人もいる。
そんな様子が発表のコメントに垣間見えると、グループのメンバーから「さっきああ言っていたけれど、それって本当?」、「本心だとは思えない」といった厳しい指摘が投げかけられる。場合によっては、「そんな心構えでお客さまに接するなんて、私は許せない」というような強烈な批判が出ることもある。厳しい指摘を受けた発表者が涙を浮かべる場面も少なくないという。
「同期の言葉だからこそ、甘えも妥協もごまかしも効かない状態に追い込まれます。しかし、その経験によって素直に自分と向き合うことができ、先輩としてやっていく覚悟が生まれます。そして強い心をもって自走できる社員になっていくのです。
私も新入社員時代にブラッシュアップ研修に参加しましたが、『自分と向き合える時間をもててよかった』と感じたことが、いまでも心に残っています」
こうして、自身の棚卸をして2年目を迎える準備をしてもらうことが、このプログラムの目的だ。
なお新入社員には、現場に戻ってから自分年表を先輩社員の前で発表するという宿題が出される。先輩の前でも、ありのままの自分を出して発表することが強いマインドを醸成するほか、先輩にとっても、喜んだり反省したりと、モチベーションを向上させる機会になるのだ。
3日目は、先輩社員としての行動を考えるケーススタディや、3年後の自分をテーマにしたワークシート作成などのプログラムに取り組み、研修は修了となる。

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「内定者研修および新入社員研修を通じて、私たちが求める人材像に基づいた心構えがしっかりできていると感じています」
渡瀬さんがいうように、経営理念と社是に則った優れたサービスパーソンの育成をめざして開発された同社の内定者研修および新入社員研修は、しっかりと成果を生み出している。
同社が創業時からこだわり実施し続けてきた教育体系は、サービス事業者をはじめ、人づくりを経営の要諦と考えている多くの企業にとって、参考になるのではないだろうか。

(取材・文/外﨑 航)


 

▼ 会社概要

社名 株式会社ノバレーゼ
本社 東京都中央区
創立 2000年11月
資本金 1億円(2016年12月31日現在)
売上高 158億5,759万円(連結 2016年12月期)
従業員数 1,891人(連結 2017年6月末時点)
平均年齢 31.4歳
事業案内 ブライダル事業、レストラン特化型事業
URL http://www.novarese.co.jp/

教育研修部 部長
渡瀬舞子さん


 

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