事例 No.051 NTTコムウェア 特集 実務につなげる中堅社員教育
(企業と人材 2016年3月号)

中堅社員教育

記事の内容およびデータは掲載当時のものです。

研修だけで終わらせないよう職場実践を組み込む
管理職を支え、若手に好影響を与える次代のリーダーを育成

ポイント

(1)職場リーダーとして、管理職からも若手社員からも期待される中堅社員。実務上の課題を研修に持ち寄り、改善プランを作成。さらに現場に戻って3カ月間、課題解決に取り組む「新任リーダ研修」を実施。

(2)入社4年目社員全員で20以上のチームを編成し、新規事業プランを競う「ネクストリーダ研修」。視野を広げ、チームビルディングを経験しながら、価値創造力を高める。

(3)基礎レベルを習得した技術者をもう一段レベルアップさせる「育成塾」。事業本部長が塾長となり、時流に合ったテーマを決めて、少人数で技術・ノウハウの継承を図る。

幾度も転換期を越えてきた技術者集団

1997年に創業のNTTコムウェア株式会社。NTTの内部組織として日本の情報通信の中枢機能である通信ネットワークを支えてきた部門と、顧客サービス業務を支える基幹システムや、NTTの社内情報システムを設計・開発・運用・保守してきた部門が統合され誕生した。現在は、長年蓄積した経験・ノウハウと最先端の技術力を武器に、通信業界にとどまらず多様な顧客のビジネス発展を支援するシステム・インテグレーター(SIer)として事業を展開している。
同社の人材育成全般に関する基本的な考え方について、総務人事部HCMセンタ所長の深松清人さんは、こう説明する。
「どの業界・企業でも、人材が事業の根幹というのは変わらないと思いますが、当社はソフトウェアの技術者が中心となるビジネスなので、とくに人そのものが事業に直結します。また当社の場合、公社時代も含めると100年以上続く歴史があります。それこそ電話交換手の時代から、光ファイバー通信網が各家庭にまで伸びてきている現在に至るまで、幾度かの技術的な大転換期を乗り越えてきたわけですが、社員はそのつど新しい技術・技法を学び直して、事業の発展に結びつけてきました。
そうしたことからも、たとえ技術革新によりテクノロジーが変わっても、常に高い品質や信頼性を維持していくことができるプロフェッショナル人材の育成をめざしています」

中堅社員は実務リーダー、後輩への影響力にも期待

同社では、新卒入社後の2年間は、「トレーニー育成期間」として、OJT、Off-JTにメンタリング制度を組み合わせた基礎的な教育を受ける。ちなみに、このメンタリング制度は、おおむね入社4年目以降の若手社員がメンターとなり、1対1で指導やサポートを行っている。指導内容は、社会人としてのビジネスマナーから業務知識やテクニカルスキルなど、多岐にわたる。
しかし、同社の社員の大部分を占めるのはソフトウェア技術者であり、この2年間で基礎を学んだ後もある程度時間をかけて高度な技術を習得していかないと、なかなか一人前になれないという。そうした点からも、同社では、トレーニー育成期間が終了して4~5年経ったころから管理職になる手前くらいまでが中堅社員という位置づけになっている。
総務人事部HCMセンタのダイバーシティ推進室担当課長、伊部直樹さんは、次のように話す。
「社内では、ここからが中堅社員という明確な定義はありません。ただ、いつまでも若手扱いをしていると、若いからまだ許されるというふうになってしまう面もあるので、もう若手ではないんだという意識づけの観点から、少し前倒しして中堅と呼ぶこともあります」
一般的には、“ネクストリーダ”と呼ばれるリーダークラスと、「係長」クラスに相当する「主査」および「スペシャリスト(SP)」あたりが中堅社員ととらえられている。登用時の年齢には幅があるが、早い人で30歳前後だという。
では、職場では管理職(課長)に準ずる存在である中堅社員に対し、どのような期待をしているのだろうか。
「この管理職一歩手前の層というのは、仕事を進めていくうえで、実務的なリーダーとして活発に動き回って、いろいろな経験をする時期です。この中堅層が前向きにチャレンジして、かつ積極的に実務をこなしていければ、上司である課長は安心してマネジメントを行い、次の一手を考えることができるわけです。
したがって管理職からすれば、中堅層には実務を推進するリーダーとして活躍してほしいという期待があります。その一方で、若手世代も中堅層をみて影響を受けるので、若手社員からみても頼れるリーダーになってもらわなければなりません。
結局、管理職というのは、それにふさわしい立ち居振る舞いやマネジメント力がある人がなっていくわけです。こうした力を身につけるには、自助努力も必要ですけれども、やはり最も磨かれるのは実務を通じてとなります。ですから、ネクストリーダや主査・SPになると、実務経験を重ねながらいかに力をつけていくのかが問われることになります。
研修を企画するにあたっても、単に知識を身につけさせるだけでなく、いかに実務とつなげていくかというところに力点を置いています」(深松さん)

業務上の課題を持ち寄り、職場で改善を図る「新任リーダ研修」

図表1 新任リーダ研修カリキュラム

図表1新任リーダ研修カリキュラム

ここからは、同社の中堅社員層を対象とした主な教育研修について、具体的に紹介していこう。
まず1つが、「新任リーダ研修」(図表1)。これは新任の主査・SPを対象に、リーダーとしての動機づけを図ると同時に、マネジメントやリーダーシップ等を学び、さらに職場での実務を通じてそれを発揮してもらい、リーダーとしての振る舞いを身につけてもらうことをめざしたものだ。1泊2日の集合研修に加えて、約3カ月間の実践期間を設けているのが大きな特徴である。
受講者は、実際に自分の抱えている実務を持ち寄り、それをベースに、まず集合研修で業務変革・効率化のための目標設定と実行プランを策定する。それをもって職場に戻り、課長の支援を受けながら、また部下や周囲の人を巻き込みながら、自分が立案したプランの実践を試みていく。
「集合研修の場では、地域や年齢はさまざまですが、同じ役割を担い、似たような悩みをもつ者が集まって、共感したり励まし合ったりしながら、実行プランを策定します。参加者同士がお互いに考えを促したり、答えを引き出し合ったりするような手法も取り入れています。
そして、職場に戻ってからは、上司や部下、あるいは一緒に仕事をする社内外の人たちとともに、昨日までとは違う新しいことに、小さなPDCAのサイクルを回しながらトライしていくわけです。
ただし、必ずしも全員が研修時間内に具体的なプランにまでたどりつけるわけではありません。本業そのものなので、チャレンジしようとすればするほど困難も伴い、本当にできるかどうかわからないとか、あるいはうまくまとめきれないというケースも出てきますが、それでも良しとしています。そういう場合は、いったん職場に戻って課長と相談してもらう。そして課長のOKをもらってから、プランを実行してもらうようにしています」(深松さん)
昨年は、実践した結果を、最後に報告書にまとめる形にした。総務人事部HCMセンタ担当課長の小川武俊さんは、こう語る。
「報告書に関しても、課長のほうからフィードバックをします。この研修の場合、常に課長と本人が一体で取り組んでいく形になるので、各職場では、それまで以上に密にコミュニケーションを取り合っているはずです」
最終的には、この研修を通じて、本人自身が気づいて提案・実践した業務改革を、実際に定着させるところまでいくことが大きな目標になっている。
今年度は、2回に分けて研修を実施し、全国の支店も含めてさまざまな部署から合計120~130人程度が参加した。

入社4年目全員が新事業プランを競う「ネクストリーダ研修」

図表2 ネクストリーダ研修カリキュラム

図表2ネクストリーダ研修カリキュラム

また、新任リーダ研修の対象者より少し下の層に対するものとして、「ネクストリーダ研修」も実施している(図表2)。
これは入社4年目の社員全員が対象となる。こちらは、2泊3日の合宿研修と3カ月間のグループワーク、最後にフォロー研修というカリキュラム構成になる。近年は、毎年ほぼ150人前後が参加しているという。
合宿研修は、リーダーシップに関する講義および演習、経営幹部の講話などを通じて、自らの仕事とキャリアについてあらためて考えるとともに、マーケティングや会計の仕組みについて学び、価値創造力を高めることをねらいとしている。
合宿研修後のグループワークでは、5人前後でチームを組んで、実際に新規ビジネスの企画提案に取り組むことになる。チーム編成は、あえて所属部門がバラバラになるようにしている。そのため、各チームは日常業務の合間をぬってやりとりし、外部講師からのレビューを受けたりしながら、提案をまとめていく。そして最終的には、フォロー研修の場でチームごとに新規ビジネス企画の発表を行う。
「ふだん仕事に追われていると、どうしても着眼点が自分のテリトリーの技術に特化してしまいがちです。そこでリーダーシップの概念や、マーケティングの基礎などを植えつけたうえで、より広い視野に立って、チームビルディングしながら新しいビジネスを考えてもらおうというのが、この研修のねらいです」(伊部さん)
最後の発表会はイベント化しており、全チーム(昨年は25チーム)が集結する。そのなかから6チームが、経営陣と応援に駆けつけた社員の前で発表。どのチームが選ばれるかは、当日、その場で発表されるので、大いに盛り上がるそうだ。発表の際には質疑応答の時間も設けられる。そして、最後には優勝チームが決定され、終了となる。

「育成塾」でもう一段上の技術者をめざす

技術者中心の同社では、若手から中堅層を対象にした技術・技能の向上の場として「育成塾」も開講している。基礎的な知識・スキルについては外部も含めさまざまな教育機会が設けられており、その効果も上がっている。しかし、そこから一段上のレベルには、一般的な研修等ではなかなか到達できない。そういう部分を社内・少人数で育成していこうというのが、この塾のねらいだ。
育成塾は各事業本部に設けられ、複数の塾を開講している部門もある。社長が総塾長、各部長がそれぞれの塾長を務める。塾生は手あげ、もしくは上長の推薦で参加。各分野の技術に精通した社内講師の指導を受けながら、業務に即した形で技術の習得・レベルアップを図っていく。1つの塾の参加人数は20人前後だが、これまでの卒業生は約1,600人にもなる。
塾が開講されるのは、毎年秋から翌年の1月末ごろまでの4カ月間程度。運営の仕方は塾によって異なり、毎月1回ペースで開かれる塾もあれば、初回に作業分担を決め、各人がそれぞれで作業を進めていき、最後に集まって成果物にまとめる塾もあるそうだ。
また、毎年定期的に同じテーマで開講するわけではなく、そのときどきの必要性に応じてテーマが決められるという。具体的には、たとえば「ネットワーク」、「課金」あるいは「保守」といった、各事業本部のコア技術ともいえるものや、あるいは、「ITアーキテクト」(IT技術を駆使して経営・業務課題の解決策を提案し、システム化プロジェクトでも各技術者を指導・監督する職種)をはじめとしたIT職種の能力に関するものなどがテーマとなっている。
さらに、NTTグループとして求められる、独自のテクノロジーに関するテーマが設定されることもある。同社の場合、NTTグループ内での業務も多く、部門によってはNTT本体などで技術革新が進んだときに、それにキャッチアップすることが必須となるので、そういった技術も育成塾で学ぶわけだ。
すでにこの育成塾の仕組みは十数年継続されている。最近では、育成塾自体が進化してきているという。
「以前は、NTTグループ内で培われてきた技術の継承に主眼を置いてやっていました。それがだんだん変わってきて、グループ会社のこの事業に、自社の強みを活かして貢献するにはどういうふうに提案すればいいのかを皆で考えるといった、単なる技術的なレベルアップにとどまらない内容の塾も増えてきました」(小川さん)
「事業本部が主体の塾は、通常、塾生のほとんどはその部門の社員です。それが最近は、別の事業本部の塾を受けたいという人もいて、比較的柔軟に認めています。別の部門の技術を知ることが自部門の業務に役立つ場合もあるでしょうし、若手から中堅層の社員には、将来的にはいまと異なる部門でキャリアを積んでいきたいという人もいるでしょう。上長の許可を得る必要がありますが、認められれば、いまからその分野の技術を学んでおくこともできるわけです」(伊部さん)

研修後アンケートは本人のほか上司にも依頼、研修効果の把握に努める

一方、研修ではないが、同社ならではのユニークな取り組みもある。
その1つがセキュリティ技術関連の事業本部が主催する「セキュリティ・コンテスト」だ。同社には、趣味でゲームのプログラミングを楽しむなどして、担当業務以外でセキュリティ技術に長けた社員もいる。そういう社員を巻き込んでセキュリティ人材の発掘・拡大をめざそうというのがねらいだ。毎年、主催部門が定めたテーマに沿ってチーム戦で競い、優勝チームを表彰している。
また、NTTグループ内での人材交流は従来から行われているが、近年、活発化しているという。同社からグループ各社に一定期間出向する社員は増えており、各社の多様なビジネスを経験して自社に戻り、その後の業務に活かすという流れができつつある。これも広い意味では、中堅層の育成施策の一環といえよう。
このように同社では、中堅社員向けにさまざまな研修や施策を実施してきた。研修の成果については一定の手応えを感じているという。
「当社では、研修後のアンケートは参加者のほか、上長にも書いてもらい、研修後に実際に行動変容があったかどうかまで把握するようにしています。行動が変わり、それが価値発揮につながって、その行動が本当に定着するところまでみることが、研修効果として非常に大切だと考えています。
その意味では、中堅社員層の研修では、いろいろな試みによりPDCAを回してきたこともあり、少なくともある程度の効果は得られていると実感しています」(深松さん)

《こちらもおすすめ》年間42の企業事例を掲載。企業研修に特化した唯一の雑誌「企業と人材」 《こちらもおすすめ》年間42の企業事例を掲載。企業研修に特化した唯一の雑誌「企業と人材」

「ネクストリーダ研修の場合は、全員同期入社の社員が集まります。入社して2年間のトレーニー育成期間が終わったあとは、同期が一堂に会する機会は基本的にないので、そこで久々に皆で会って、お互いに新たな刺激を受け、奮起を促す効果も生まれていると思います」(伊部さん)
現在、研修を運営するHCMセンタでは、アンケートの結果なども参考にしつつ、研修の改善・見直しを図っている。
「これまでずっとメニューの充実に努めてきて、ある程度それを実現できていると思うのですが、一方で最近は、あまりこちらでいろいろ用意しすぎて、何でもかんでも受講しておけばいいということにならないようにすることも、考える必要があるのではと思っています。実務でも自分自身であまり判断せずに、上司から仕事を与えられるのを待つようになってしまうと困る、というのがあります」(小川さん)
こうした課題も視野に入れ、今後の中堅社員教育については、ここまで紹介してきた各研修のプログラムの見直しも含めて、社内で検討していくと深松さんは話す。「会社にとってはどの社員も重要ですが、中堅社員には、上司を支えていく、あるいは小さいながらもチームを束ねていく。それとともに、新入社員を含め後輩たちに良い影響を与えていくといった役割の期待は、非常に大きいわけです。中堅社員がそういう役割を自覚し、かつその力を十分身につけて、実際に発揮してもらえるように、われわれとしてはいろいろな仕掛けを考えて提供していければと思っています」

(取材・文/中田正則)


 

▼ 会社概要(2014年6月1日現在)

社名 NTTコムウェア株式会社
本社 東京都港区
設立 1997年9月
資本金 200億円
売上高 1,743億円(2014年度)
従業員数 7,073人(2015年3月末)
事業案内 情報通信システムおよび関連ソフトウェア、各種装置の開発、製作、運用、保守など
URL http://www.nttcom.co.jp/

(左)
総務人事部HCMセンタ
担当課長
小川武俊さん
(中)
総務人事部HCMセンタ
所長
深松清人さん
(右)
総務人事部HCMセンタ
ダイバーシティ推進室
担当課長
伊部直樹さん


 

企業研修に特化した唯一の雑誌! こんな方に
  • 企業・団体等の
    経営層
  • 企業・団体等の
    教育研修担当者
  • 労働組合
  • 教育研修
    サービス提供者
  1. 豊富な先進企業事例を掲載
  2. 1テーマに複数事例を取り上げ、先進企業の取組の考え方具体的な実施方法を理解できます
企業と人材 詳細を見る

ページトップへ