ポイント制退職金の設計と運用

人事

賃金・賞与・退職金
ポイント制退職金の設計と運用

■谷田部光一・著
■A5判・166頁
■本体価格 1,900円
■ISBN 978-4-87913-773-9 C2034
■発行日 2001年7月

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はじめに

今日的な人事・処遇システムの基準は「職務・能力主義+成果・業績主義」である。すでに、月例賃金や賞与に関しては、この枠組みで再編、改革が進められている。ただ、退職金制度に関しては、その取り組みが遅れている。やっと改定の流れが生じ、先進的な企業がその潮流に乗り出した段階である。
実は、退職金制度に関しては、過去にも高度経済成長期の高賃上げ時、高度成長終着後に60歳定年延長が課題となったころなどに、多くの企業で改定を実施している。退職一時金制度の合理化と年金化である。そして今、人事・処遇システムの業績主義化、退職給付会計の変更、企業年金の危機と年金制度の再編など、退職金制度は従来とはまた違った状況下で見直しが迫られている。こうした退職金制度の変遷に関しては、本書の第1章でやや詳しく紹介した。
そして、退職一時金制度に関していうならば、「月例賃金、賃上げとの分離」「能力要素と業績要素の重視」が退職金制度改定の今日的な方向性である。賃金・賃上げと分離するには、「定額制」「定額加算制」などの方法もある。しかし、能力要素、業績要素を重視し、従業員の既得権も保障しながら移行し、将来的な水準の見直しにも柔軟に対応できる方式となると、今のところポイント制が最も優れている。
本書は、このポイント制退職金の設計と運用に関して、実務的に解説したものである。設計に当たっては、今日最もオーソドックスな「職能ポイント+勤続ポイント」方式を基本にした。ただし、同じ方式でも退職金の水準に差がある2つのパターンのほか、勤続ポイントを抑制した事例も設計してみた。また、
職能ポイントだけ、職務ポイントだけで設計するケース、加算ポイントに毎年の業績を反映する方法も検討した。その意味ではポイント制退職金を多角的に解説したものになっている。
単なる理論ではなく、筆者が企業に対するコンサルティングを行う中で設計した内容がベースになっている。したがって、実際の設計で気付いた落とし穴やデメリットなどにも触れている。ただ、こうした書物で説明する事例は、どうしても抽象化されているので、特定の個別企業の実態にはそのままフィットしない部分もある。ここで説明したのは一つの参考例として捉え、各企業が自社にあった制度を応用して設計していただきたい。また、実際に制度を個人別に落とし込んで移行しようとすると、思いもよらなかった問題点が出てきたりするものである。この点も、各企業の応用力に期待したい。
最近、わが国にも外資系のコンサルティング会社が多数進出してきている。それはそれで大いに結構なことだが、外資系コンサルティング会社が指導した企業を中心に、このごろは人事・賃金制度の詳しい事例が専門誌紙に載らなくなっている。考え方と概略だけが、パブリシティーの一環として紹介されることが多くなった。
もともとわが国の人事・処遇システムは、事例研究会や専門誌紙で詳しい発表や紹介があり、それを参考に他社がさらに工夫を重ねてよりよい制度を作り、それをまた公開して相互に作り込んでいくという風土があった。自社が作ったものでも、それは先達である他社の知恵を借りたもの、他社の工夫を参考にしたものだから、自社だけで抱え込むのではなく、世間にお返ししようという考え方があった。
本書は、その意味でいえば筆者が世間からいただいたポイント制退職金設計のノウハウを、また世間にお返ししているようなものである。本書を参考にポイント制退職金を作った企業は、どうか出し惜しみしないで、日本の人事・処遇システムという場の中で共同作業する他社に、積極的に公開していただければ幸いである。
本書は、かつて「労務事情」(産労総合研究所)に連載した解説をベースに、ポイント制退職金の設計セミナーで使用した資料や、その後同じ「労務事情」や「賃金実務」に執筆した内容も取り入れて、大幅に加筆したものである。筆者に執筆と考えるチャンスを提供してくれた「労務事情」編集長の神山明氏はじめ、「労務事情」と「賃金実務」の編集部の方々にはお礼を申し上げたい。また、単行本としてまとめる機会を与えてくださった、「経営書院」スタッフー同に感謝する次第である。

<本書「まえがき」より抜粋>

2001年6月
谷田部 光一

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