病院職員のためのよい職場の人づきあい法

医療

病院経営・管理
病院職員のためのよい職場の人づきあい法

■森 隆夫・著
■A5判・130頁
■本体価格 1,200円
■ISBN 978-4-87913-924-5 C3037
■発行日 2005年8月

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はじめに

序章……良心を取り戻そう

 4年ほど前、「職場の人間関係――会社で適応できる人できない人」を出版しましたが、今回、医療現場にしぼって、人間関係にかかわる本をまとめてみるという機会を得ました。確かに、医療現場というのは、一般的な会社とは異なるダイナミクスが存在するところなのです。

 ここ数年来、さまざまな医療管理ツールが開発されて、企業理念に基づく教育や管理法あるいは考え方のスキルが数多く紹介されています。病院機能評価やISOのような品質マネイジメントの医療版などは、一度は耳にしたことのあるものだと思います。ところが、医療現場でこれらのツールは本当にうまく活用されているでしょうか。多くの病院、いや現場は、もう一つピンとこないと感じているのではないかと思うのです。

 最近の傾向として、医療ビジネスやマーケティング、そしてグローバルスタンダードなどという言葉が当然のように語られるようになっています。経済学者の唱える多くの理論も、医療現場にたくさん紹介されています。こういった考え方を医療現場に当てはめ実行することが、これからの医療の唯一の方向性であるかのような錯覚さえ芽生え始めています。もちろんこれらが有用であることは、間違いありません。

しかし、
  「なぜ必要になったのか」
  「どのように医療現場に応用するべきか」
という検証をすることこそが大切だと思うのです。表面的なスキルを身につけることは、きわめて危険なことになるかもしれません。

 最近になって多く報道されている医療ミスは、高度な技術の問題ではなく、もっと基本的な過ちであることが多いといわれています。医療従事者に必要なのは、難しい理論や理屈ではないのでしょう。もっと基本的な、例えば、
  「目の前の患者に最善を尽くす」
というような当たり前の心構えが大切なのです。

 かつての日本の医療は、世界に誇れるほどの「患者とのコミュニケーションの技術」を持っていました。考えてみれば、資源もない小さな島国である日本が、なぜ世界に名だたる大国の仲間入りをしたのか。そこには、日本で大切にされていた人間関係とか信頼関係とか……たくさんの独自性があったからにほかなりません。そのことをすっかり忘れてしまい、資源の豊かな外国の理論や理屈を、あたかも当然のように、全く環境の違う日本に導入することには慎重さが必要なのです。

 医療現場では、治療にかかわるスキルの獲得は当然のことです。しかし、医療は商品を扱うところではありません。患者であるユーザーの命や心を扱っているのです。そして、場合によっては、そのユーザーの人生にもかかわりを持つことになるのです。そのために、医療現場はさまざまな専門家集団によって成り立っているのです。少なくとも日本の医療は、
  「目の前のユーザーである患者を大切にする」
という基本的な姿勢のうえに、技術を獲得してきたのです。

  繰り返しますが、昨今いわれている医療事故の多くは、患者とのコミュニケーション不足やきわめて基本的な技術不足、さらには医療人としての人間性の欠如によるものだという認識を明確にしておきたいと思います。技術というものは、人間の知性の延長線上にある流動的なもので、人間が人間として創り出した創造物ではないのです。すなわち、スキルは利用し活用するものであって、それによって振り回されるものでも唯一のものでもないのです。

 さて、これまで述べてきたような背景から、日本の医師の研修制度が¥分離禁止(開始)36¥分離禁止(終了)年ぶりに改革されました。もちろん、現在の医療の抱える問題が、医師だけの研修の改革で解決するわけはありません。そこで本書では、「医療の基本に立ち返って」、さらに「人間としての基本に立ち返って」医療現場での人間関係を述べていかれればと思います¥約物幅(全角)。¥約物幅(標準)そして私たちが出来合いのスキルに追われて失いかけている「医療者としての良心」を取り戻し、目の前にいる患者のために、適切な医療現場の人間関係をつくり上げていただく一助になればと思います。

平成17年8月


あいせい紀年病院
理事長
森 隆夫

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