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労働者の故意, 過失により使用者に損害が生じた場合でも, 判例は, 労働者の負担すべき賠償の範囲は 「諸般の事情に照らし, 損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる範囲」 に限定されるとしていますから (茨城石炭商事事件・最高裁第1小法廷昭 51.7.8 判決, 最高裁判所民事判例集 30 巻7号 689 頁), 必ずしも全額の賠償責任が発生しないこともあります。 もっとも, 使い込みのように, 労働者の故意が明らかで非違性が高い場合には全額の賠償責任が発生します。
この場合に, 身元保証契約があれば, 身元保証人に当該損害の保証責任が発生します。 通常は, 本人との連帯保証による保証契約を締結していることが多いでしょう。 連帯保証契約であれば, ただちに身元保証人に請求することも可能です (単なる保証契約の場合は, 民法 452 条, 453 条により, まず本人に請求し, 可能であれば本人から債務の実行を受ける必要があります)。
しかし, 「身元保証ニ関スル法律」 によって, 身元保証人が責任を負う範囲は, 通常, 労働者本人が負担する賠償額を下回ります。 同法は, 身元保証契約の有効期間を最高5年とし (2条), 本人に職務変動があった場合の使用者による通知義務や保証人の解除権 (3条) を定めるほか, 「裁判所ハ身元保証人ノ損害賠償ノ責任及其ノ金額ヲ定ムルニ付被用者ノ監督ニ関スル使用者ノ過失ノ有無, 身元保証人ガ身元保証ヲ為スニ至リタル事由及之ヲ為スニ当リ用ヰタル注意ノ程度, 被用者ノ任務又ハ身上ノ変化其ノ他一切ノ事情ヲ斟酌ス (5条)」 としています。 この法律は強行法規ですから, これと異なる特約があっても無効となります。 使い込みのようなケースでも, 使用者側の過失 (経理監査や職務上の監督が十分になされていたか等) があれば減額され, 本人と保証人の関係次第でさらに減額されます。 本人と同居しておらず親等が遠い, 現実的に監督しうる状態にない等の事由は減額事由になるでしょう。 逆に, 保証人が事情を知りつつ善後策を講じなかった, 不審な金銭取得を推認できた等の事情があれば, 保証人の責任は重くなるといえます。 使用者, 保証人双方の事情を勘案して, 一定程度減額した額で和解を成立させることが望ましいのですが, 不可能な場合は, 民事調停を用いるか, 裁判上の請求による司法判断を得る必要があるでしょう。
勝亦啓文
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