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労務事情
派遣労働 Q&Aで学ぶ労働基礎講座
2004/11/1
Q

正社員との賃金差別:
派遣社員から同一職種の正社員と同一額の賃金支払いを求められたが

派遣社員から同じ仕事をしているのに賃金格差が大きすぎるとして, 正社員と同一額の賃金支払いを求められました。 応じる義務があるのでしょうか?
   
A 苦情として処理する義務はありますが, 同一の賃金を支払わなければならないというわけではありません。
 
現行法では, 労働基準法3条が国籍, 信条または社会的身分を理由とする労働条件差別を禁止し, 同4条が男女同一賃金原則を定めています。 また, 同一労働同一賃金に関する ILO 100 号条約を, 日本も 1967 年に批准しています。 ただし, 多くの裁判例は, 同一の労働に対して同一の賃金が支払われるという普遍的な法原則 (たとえば, 裁判によって賃金格差分の支払いを請求できたり, あるいは格差を違法として損害賠償責任を発生させたりする法ルール) の存在について否定的です。

典型的な例としては, 正規職員と臨時職員の賃金格差につき, 「労働基準法3条及び4条も, 雇用形態の差異に基づく賃金格差を否定する趣旨ではない」 として, 同一の労働をしていることから同一の賃金を請求できるわけではないとする日本郵便逓送 (臨時社員・損害賠償) 事件 (大阪地裁平 14.5.22 判決, 労働判例 830 号 22 頁) があります。 女性差別をめぐる裁判例でも, 採用形態に差異がある場合には, 賃金格差の違法性を否定する例が多いといえます。 ある労働者に生じた賃金格差が, 「採用形態」 に起因する場合には違法とはいえません。

一方で, 正社員とパートとの賃金格差について, 同一労働同一賃金という法原則の存在は認められないものの, 同一の労働に対して8割以下の賃金格差を設けることは公序良俗に反するとして, 差額分の損害賠償請求を認めた丸子警報器事件 (長野地裁上田支部平 8.3.15 判決, 労働判例 690 号 32 頁) があるのですが, 確立した判例であるとは言い難いと考えられます。

労働組合運動や学説上は, 政策論または法理として同一労働同一賃金原則を実現すべきという見解が強いのですが, 現在のところ, 司法判断の場でこれが認められることはきわめて稀であるといえるでしょう。 派遣労働者の場合, 賃金支払い義務を負う主体は派遣元ですから, 派遣先に雇用される労働者との間の同一労働同一賃金原則を認めるのは, さらに困難です。

もっとも, 派遣先は, 労働者派遣事業の適正な運営の確保および派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律 (以下 「派遣法」) に基づき, 苦情として処理する義務はあります。 派遣元との連絡の下, できるだけ格差を是正するか, その地位の差異に応じた適切な処遇を実現するよう配慮する必要はあるでしょう。

勝亦啓文

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