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労務事情
団体交渉・不当労働行為 Q&Aで学ぶ労働基礎講座
2004/9/1
Q

使用者の言動:
組合のスト中止を求める社長声明を出したいが

賃上げをめぐり組合がストライキを計画しているのですが, その中止を求める社長声明を社員に対して出したいと考えています。 問題があるでしょうか?
   
A 支配介入の不当労働行為にあたるおそれがあります。
 
使用者には言論の自由がありますし, 労使関係に影響を与えない場や団体交渉の場で組合方針を批判することや, スト中止を要求することは違法とはいえません。 しかし, その言動が組合運営に対する威嚇や利益誘導と評価される場合や, 個別組合員への働きかけにあたる場合には, 組合運営への支配介入として不当労働行為が成立する可能性があります。 使用者の言論によって支配介入が成立するためには, それが報復, 威嚇, 利益誘導にあたることを要するという見解もありますが, 一般的に裁判所, 労働委員会, 学説では, 組合が自主的に決定すべき事項について影響を与える発言は支配介入となりうるとしています。

この認定は, 言論の内容, 発表手段・方法, 時期, 発表者の地位・身分, その影響等の総合判断となっていますから, 同一内容の言動であっても, 支配介入になる場合とならない場合があります。 ご質問の場合も, その発言が意見表明にとどまるものであれば支配介入にあたらないといいうる余地はありますが, 社長の発言であること, 組合のストライキ計画中という時期から考えると, 組合運営に対する影響を否定できないでしょう。

判例では, 従業員と関係者の集会において, 社長が組合の上部団体加入を批判し, 脱退しなければ整理解雇もありうると発言したことを, 明白な支配介入とする例があります (山岡内燃機事件・最高裁判所第2小法廷昭 29.5.28 判決, 最高裁判所民事判例集8巻5号 990 頁)。 組合方針に対する威嚇, 報復を含む発言は当然に不当労働行為といえるでしょう。 また, 団交決裂後に, 組合幹部のスト方針は遺憾であり 「……現在以上の回答を出すことは絶対不可能でありますので, 重大な決意をせざるを得ません」 としたうえで, 節度のある行為を求めるという内容の全従業員あて社長声明を掲示したことを不当労働行為とする例もあります (プリマハム事件・最高裁第2小法廷昭 57.9.10 判決, 労働経済判例速報 1134 号5頁, 労働判例速報カード 396 号 25 頁)。 声明が組合執行部と組合員を離反させる内容であること, 「重大な決意」 という発言が威嚇的効果をもっていること, 結果的に組合内部の意見対立を招いた等の事情が考慮されています。

勝亦啓文

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