| |
複数の組合が併存するなかで, 使用者が各組合と団体交渉をした結果, 組合員間に労働条件格差が生じたとしても, これは各組合の自主的な決定の結果であって, 「格差がある」 という事実だけで, 労働組合法7条1号の禁止する不利益取扱いや同条3号の支配介入になるとはいえないでしょう。 ただし, そのような格差が生じるに至った使用者の対応, 交渉の経緯によっては, 不利益取扱いないし支配介入とされる余地もあります。
たとえば, 使用者と多数派組合が夜勤と残業に関する労働協約を締結し, それに基づいて多数派組合員に夜勤・残業をさせていたのに対し, 夜勤を拒否する少数派組合とは同一条件での妥結ができなかったため残業を命じず, 結果的に組合員間に賃金格差が生じたことが不当労働行為にあたるかが争われた日産自動車事件 (最高裁第3小法廷昭 60.4.23 判決, 労働判例 450 号 23 頁) では, 不当労働行為の成立が認められました。
使用者には不当労働行為の効果の1つとして中立保持義務がありますから, 合理的な理由なく各組合ごとに違う提案を出すことはできません。 同事件でも, 会社側は両組合に同一の条件を提示しており, 原則論からいえば問題はないようにもみえますが, 最高裁は, 交渉条件が形式的には同一であっても, その対応が一方組合に対する団結権否認, 嫌悪の態度が決定的な原因となっており, 団体交渉が既定事実を維持するために形式的に行われている特段の事情があれば, 不当労働行為が成立するとしました。 従前の労使関係において一方組合と対立状況にあり, 少数派の組合方針からみて受け入れ難い条件を交渉にもち出したことが考慮されています。 使用者は形式的に同一の交渉条件を出していれば問題がないというわけではなく, それまでの労使関係を踏まえて, 妥当な交渉条件を設定し, 妥結をめざしていく姿勢が求められているといえるでしょう。
妥結月実施による賃金格差が争われた例でも, 不当労働行為の成立を否定する例が多い一方で, それまでの労使の対立状況, 妥結月実施に固執することの妥当性から, 不当労働行為の成立を認め た例もあります (済生会中央病院事件・最高裁第2小法廷平元.3.3 判決, 労働判例 543 号 80 頁)。
勝亦啓文
|