| |
組合員個人には言論の自由がありますし, 労働組合の運営は民主的な意思決定によって確保されなければなりません。 その行動によって組合内部の意見集約が阻害される, 組合員に動揺が広がるといった悪影響が生じるとしても, 意見表明にとどまる限りは禁止できないでしょうし, 仮に処分しても無効とされる可能性が高いといえます。
他方で, その行動が組合の統制を乱し, 組合分裂を招く 「分派活動」 と評価されるなら事情は異なります。 裁判例では, 対立組合の講師を招いた学習会の開催に積極的関与をした組合員の除名を有効とする例があります (東京税関労組事件・東京高裁昭 59.4.17 判決, 労働関係民事裁判例集 35 巻2号 155 頁, 労働判例 436 号 52 頁)。
組合員の意見表明の自由, 市民としての行動の自由は最大限尊重すべきでしょうから, 団結維持に対する抽象的な危険がある程度では処分理由とするには足りず, 団結維持に実際に支障を与える積極的行動に対してのみ, 処分は可能といえるでしょう。 政党支持や資金カンパ決議のような個人の基本的自由と抵触するものを除けば, いったん決められた組合決議への違反行為は組合の統制に重大な影響を与えるものとして, 一応は処分可能と考えられます。
ただし, その行為が現実に組合の団結維持に影響を与える程度の評価と, 行為と処分との均衡も必要となります。 組合が, その労災補償交渉に影響を与えることを危惧して, 同僚の労災事故補償要求支援組織に加入していた組合員に脱退勧告をし, 拒否したことを理由に除名した事案で, 組合員の活動は組合方針と相容れないというものではなく, 除名を要するほどの行動ではなかったとして無効とされたものがあります (東海カーボン事件・福岡地裁小倉支部昭 52.1.17 判決, 労働判例 273 号 75 頁)。
なお, 執行部等への批判活動も組合の民主的運営の一環であって処分はできませんが, 判例の一般的傾向としては, その内容がことさら虚偽の事実を含む場合か, 既定の組合方針に対する現実的な妨害行動である場合に限って, 処分を認めています。
勝亦啓文
|