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労務事情
労働災害・通勤災害 Q&Aで学ぶ労働基礎講座
2004/7/1
Q

過労死:
社員が残業を終えて帰宅した後に心疾患で死亡

社員が残業を終えて帰宅した後に心疾患で倒れ, 死亡しました。 遺族は労災であると主張していますが, 労災となるのでしょうか?
   
A 長時間労働等の業務上の過重な負荷があったならば, 労災とされる可能性があります。
 
業務災害といえるためには, 「業務起因性」 があることが必要です。 いわゆる 「過労死」 をもたらす脳血管疾患や虚血性心疾患は, 業務を 100 %の原因として発症することは稀であり, 本人の先天的異常, 加齢, 生活習慣等の要因と複合した結果として発症します。 このため, 業務が発症にどの程度関与していたかが問題になります。 行政と裁判所は, 単に業務が発症の機会となったにすぎないのであれば, 業務起因性は認められないとしています。 いつ発症してもおかしくない状態の方が, たまたま業務遂行中に倒れたケースのように, 本人側の発症要因が大きいときには, 労災とは認められません。 しかし, 業務上の要因が相対的に有力な原因となった, あるいは発症と相当な因果関係があったのなら, 業務起因性が認められています。

脳血管疾患, 心疾患の労災認定は医学的にも困難であることから, かつてはかなり厳格な判断がされてきました。 しかし, 労基署長の不支給決定を違法とする判決が相次いだことから, 厚生労働省は, 心疾患と脳血管疾患の労災認定基準を漸次緩和しています。 現在のところ, 平 13.12.12 基発 1063 号が, 業務が相対的に有力な原因になったと認める場合として, @発症直前から前日までの間に, 発生状態を時間的および場所的に明確にし得る 「異常な出来事」 に遭遇した, A発症に近接した時期において, 「短期間の過重業務」 に就労した, B発症前の長期にわたって, 著しい疲労の蓄積をもたらす 「長期間の過重業務」 に就労した, のいずれかに該当することという基準を定めています。

これらは, 勤務体制, 作業環境, 精神的負荷等を考慮しつつ, 労働時間に関して, 発症前1〜6カ月間の時間外労働が1カ月あたり 45 時間を超えると徐々に業務との関連が強まり, 発症前1カ月間におおむね 100 時間または発症前2〜6カ月間に1カ月あたりおおむね 80 時間を超える時間外労働が認められる場合, 業務との関連性が強いものとみる, としています。

ご質問の場合も, 残業後に発症したというだけで業務起因性を認めるのは困難ですが, 本人の発症要因がとくに認められない, 発症前の労働が同種労働者, 通常の勤務内容に比べて過重な内容だった, 長期にわたる長時間残業があった等の事実があれば, 業務起因性が認められるでしょう。

勝亦啓文

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