既存の労働条件が, 労働組合との団体交渉によって不利益に変更され, その旨が労働協約として, 労組法 14 条の定めに従って書面により適法に締結されていれば, 労組法 16 条により規範的効力が生じ, 使用者および当該労働組合に所属している組合員 (従業員) を拘束することになります。
問題は, 当該組合に所属しない非組合員および他の労働組合に所属している従業員にも効力が及ぶかということですが, この問題については, @非組合員の場合と, A当該事業場の4分の1以下の労働者で組織されている少数組合に加入する従業員の場合に分けて検討しなければなりません。
まず, @の場合ですが, 労組法 17 条では, 「一の工場事業場に常時使用される同種の労働者の4分の3以上の数の労働者が一の労働協約の適用を受けるに至ったときは, 当該工場事業場に使用される他の同種の労働者に関しても, 当該労働協約が適用されるものとする」 と定められていますので (このことを労働協約の一般的拘束力とか, 拡張適用と呼ばれています), 労働協約を締結した労働組合が当該事業場の4分の3以上の労働者によって組織されている場合は, その内容が 「当該労働協約を特定の未組織労働者に適用することが著しく不合理であると認められる特段の事情」がないかぎり, 原則として,非組合員にもその労働協約の規範的部分について,一般的拘束力が及ぶことになります(朝日火災海上保険事件・最高裁第3小法廷平 8.3.26 判決, 労働判例 691 号 16 頁)。
しかし, 当該労働組合が4分の3以上の労働者によって組織されていない場合は, 当該組合に加入していない労働者には労働協約の一般的拘束力は及びませんので, その労働協約の内容を非組合員にも適用したい場合は, 本人の同意を得るか, Q73 の就業規則の不利益変更の手続きと法理によることになります。
一方Aの, 4分の1以下の労働者で組織されている少数組合の組合員については, 多くの裁判例は, 少数組合の権利保護の観点から, 労働協約の一般的拘束力は及ばないとしていますので, 多数組合と締結された労働協約は少数組合の組合員には及ばないことになります。 したがって, この場合も, 就業規則の不利益変更の手続きと法理により, 統一的処理を図ることになります。
なお, 不利益変更について非組合員の同意を得た場合は, 変更した部分の就業規則は必ず改訂しておく必要があります。 労基法 93 条では 「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は, その部分については無効とする。 この場合において無効となった部分は就業規則で定める基準による」 とされていますので, 改訂しておかないと, せっかくの同意が無になるからです。