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労務事情
解雇・退職・懲戒 Q&Aで学ぶ労働基礎講座
2005/1/1・15
Q

解雇制限:
労基法の解雇制限規定は, 定年制の場合でも適用になるか?

定年退職を1カ月後に控えた社員が業務災害により負傷し, 現在療養のため入院しています。 全治2カ月ということで, 定年退職日までに治癒するのは無理のようですが, この場合でも労基法 19 条1項の解雇制限規定の適用がありますか?
   
A 当該企業の定年制が 「定年退職制」 であれば解雇制限規定の適用はありませんが, 「定年解雇制」 であれば, 労基法の解雇制限規定は適用されます。
 
「労基法 19 条1項は, 「使用者は, 労働者が業務上負傷し, 又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後 30 日間……は, 解雇してはならない。」 と定めています。

この規定の趣旨は, 労働者が解雇後の就業活動に困難を来すような場合に, 一定の期間について解雇を一時制限し, 労働者が生活の脅威を被ることのないように保護したものと解されており (厚生労働省労働基準局編 『増補版・労働基準法 (上)』 247 頁), この規定にいう 「休業」 とは, 業務上災害により被った傷病によって休業する場合であり, 私傷病による休業を含みません。

したがって, いわゆる通勤途上災害は業務上災害ではありませんので, この規定の適用はありません。 休業は原則として全部休業を意味し, 出勤しながら治療のために通院しているような一部休業は, 本条にいう休業に含まれないと解されています (厚生労働省・前掲書 261 頁)。

また 「療養」 とは, 業務上災害による傷病のための療養であり, 労基法および労災保険法上の療養補償・休業補償の対象となる療養と同じです。 したがって, 治癒後の通院治療は含まれないと解されています。

なお上記の解雇制限は, @使用者が労基法 81 条の規定によって打切補償を支払った場合, または, A天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となり, 所轄の労基署長の除外認定を受けた場合は, その制限は解除されます (労基法19条1項ただし書き)。

ところで質問は, 定年退職を1カ月後に控えた社員が, 業務災害により負傷したが, この場合も労基法 19 条1項の解雇制限規定が適用になるかというものですが, 本条にいう解雇とは, 使用者側からの一方的な意思表示による労働契約の解約をいうのであって, 就業規則や労働協約などの定めにより, 労働者が所定の定年年齢に達したときは, 労働契約は自動的に終了するとされている 「定年退職制」 の場合は, 原則的には本条の適用はないものといえます (なお, 定年制の趣旨, 法的留意点などについてはQ67 の 「定年制」 を参照してください)。

このことについて行政解釈は, 「就業規則に定める定年制が労働者の定年に達した翌日をもってその雇用契約は自動的に終了する旨を定めたことが明らかであり, 且つ従来この規定に基づいて定年に達した場合に当然雇用関係が消滅する慣行となっていて, それを従業員に徹底させる措置をとっている場合は, 解雇の問題を生ぜず, したがってまた法第 19 条の問題を生じない」 としています (昭 26.8.9 基収 3388 号 (19 条), 裁判例として, 朝日製鋼所事件・大阪地裁岸和田支部昭 36.9.11 判決, 労働関係民事裁判例集 12 巻5号 824 頁)。

しかし, 定年制の内容が, 労働者が所定の定年年齢に達したときに, 使用者が解雇の意思表示をし, それによって労働契約を終了させる 「定年解雇制」 の場合は, 定年に達したことが解雇事由の1つですから, 会社の都合や労働者の事情を考慮して定年に達した者をそのまま勤務延長したり, 身分を変更して嘱託などとして採用し, 引き続き使用しているなどの場合は, 労働者は定年に達した後も引き続き雇用されることを期待することになり, 使用者からそのような例外的な取扱いをしないことが明示されるまでは, 定年後の身分が明確にならないこととなります。 したがって 「この場合の定年制は, 定年に達したときに解雇することがあるという解除権留保の制度にすぎないものと解され, 解雇に関する 〔労基法 19 条の〕 規定の適用を受けることとなる」 と解されています (厚生労働省・前掲書 256 頁。 同旨・東京大学労働法研究会編 『注釈労働基準法 (上)』 359 頁)。

したがって, 質問会社の定年制の内容が 「定年退職制」 であれば, 労基法 19 条の解雇制限規定の適用はないということになりますが, 「定年解雇制」 である場合は解雇制限規定の適用がありますので, (定年により解雇するということであれば) 療養のために休業する期間, およびその後 30 日間は解雇できないことになります。


野村勝法

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