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使用者は, 労働者が年休を取得したことを理由に, 賃金や賞与の支給およびその他の処遇において不利益な取り扱いをしてはなりません。
このことについて労基法は附則 136 条において, 「使用者は, 第 39 条第1項から第3項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して, 賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない」 と規定し, この内容について行政解釈は, 「精皆勤手当及び賞与の額の算定等に際して, 年次有給休暇を取得した日を欠勤として, 又は欠勤に準じて取り扱うことその他労働基準法上労働者の権利として認められている年次有給休暇の取得を抑制するすべての不利益な取り扱いはしないようにしなければならない…。」 (昭和 63.1.1 基発1号) としています。
問題は, 本条が 「…しないようにしなければならない」 と定めているところから, 本条の趣旨を, 年休の取得日を通常の欠勤と同様に不利益に取り扱ってはならないと, 訓示的に定めた努力義務規定とみるか, あるいは不利益に取り扱うことを禁じる強行規定とみるかについて見解が分かれていますが, 行政当局は, 本条は, 不利益に取り扱わないように努力することを求める訓示的な規定であるとし, 民事上の効力については, 精皆勤手当や賞与の減額など, 不利益の程度によっては公序良俗に反するものとして無効となる場合もあるとしています (厚生労働省労働基準局編 「増補版・労働基準法 (上)」 573 頁・労務行政刊)。
また裁判例においても, 労基法 136 条の規定は, 「それ自体としては, 使用者の努力義務を定めたもの」 であり, 年休取得を理由とする不利益取り扱いの民事上の効力は, その措置の趣旨, 目的, 労働者が失う経済的利益の程度, 年休取得に対する事実上の抑止力の強弱など, 諸般の事情を総合して, 「年次有給休暇を取得する権利の行使を抑止し, ひいては同法が労働者の右権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものと認められない限り, 公序に反して無効となるとすることはできない」 と判断したものがあります (沼津交通事件・最高裁第2小法廷平 5. 6. 25 判決, 労働判例 636 号 11 頁)。
しかし大多数の学説は, 本条の定めを, 不利益取り扱いを禁止する強行規定と解しており, 精皆勤手当や賞与の支給において, 年休取得日を欠勤扱いにしたり, 昇給・昇格などの処遇において年休取得を理由に不利益な取り扱いをすることは, 私法上違法であると解する有力説もあります (菅野和夫 「労働法 (第6版)」 327 頁・弘文堂刊)。
また, 賞与の支給基準となる出勤率の計算において, 年休取得日を欠勤扱いにしたことの当否が争われたエス・ウント・エー事件 (最高裁第3小法廷平 4.2.18 判決, 労働判例 609 号 12 頁) では, 「使用者に対し年次有給休暇の期間について一定の賃金の支払を義務付けている労働基準法 39 条4項 〔現行の6項〕 の規定の趣旨からすれば, 使用者は, 年次休暇の取得日の属する期間に対応する賞与の計算上この日を欠勤として扱うことはできないものと解する」 と判断されています。
そこで質問の場合ですが, 上記の行政解釈や裁判例に従えば, 精皆勤手当の支給については, 現在の取り扱いであればその効力は一応有効といえましょう。 しかし, 賞与については, 年休取得日を通常の欠勤と同様に取り扱うことは妥当ではないと考えます。
賞与や精皆勤手当などの賃金制度につき年休取得を通常の欠勤と同様に取り扱うことについては, 年休制度の趣旨・目的および大多数の学説やエス・ウント・エー事件における最高裁判決の見解にしたがって, 是正の方向で再検討を要するのではないでしょうか。
野村勝法
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