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労務事情
休憩・休日・休暇 Q&Aで学ぶ労働基礎講座
2004/6/1
Q

49. 使用者の時季変更権:
退職予定者の年休請求と時季変更権の行使

自己都合退職を申し出ている従業員から, 退職予定日までの残り勤務日数 (10 日間) の全部について年休を取得したいとの申し出がありました。 会社としては, 業務の引き継ぎなどで3日間は出勤してほしいのですが, この3日間について時季変更権を行使できますか?
   
A 後日に年休権を行使することができない時季変更権の行使は認められませんので, 従業員の年休請求はそのまま認めることになると解されます。
 
使用者は, 労働者から年休の取得請求があったときは, 請求 (指定) された時季に年休を付与しなければなりませんが (労基法 39 条4項本文。 林野庁白石営林署事件・最高裁第2小法廷昭 48.3.2 判決, 労働判例 171 号 16 頁), 請求された時季に年休を付与することが 「事業の正常な運営を妨げる場合」 は, 使用者は, 他の時季に年を付与することができます (同条4項ただし書き)。 一般にこれを年休の 「時季変更権」 といいますが, この権利は, 単に労働者の年休請求 (年休の時季指定) の効果発生を阻止して年休の付与を拒むということだけではなく, 年休が 「他の時季」 に付与されることを前提とする権利であると解されていることに留意しなければなりません。

ところで, この時季変更権の行使事由となる 「事業の正常な運営を妨げる場合」 とは, どのような基準で判断するのかですが, 一般には, 「当該労働者の所属する事業場を基準として, 事業の規模, 内容, 当該労働者の担当する作業の内容, 性質, 作業の繁閑, 代行者の配置の難易, 労働慣行等諸般の事情を考慮して客観的に判断」 することとされています (電電公社此花電報電話局事件・大阪高裁昭 53.1.31 判決, 労働判例 291 号 14 頁)。

したがって, 要員不足などによって, 労働者の年休取得により 「事業の正常な運営を妨げる」 状況が恒常的に存在するなどの場合は, 要員不足を理由とする時季変更権の行使はできないということになりましょう (西日本ジェイアールバス事件・名古屋高裁金沢支部平 10.3.16 判決, 労働判例 738 号 32 頁)。

また使用者は, 労働者から年休の請求があった場合は, 当該事業場の業務を遂行することについての代替要員を確保する努力義務があり, 業務運営に不可欠な労働者からの年休請求であったとしても, 代替要員の確保努力をなんらしないで, 直ちに時季変更権を行使して年休を認めないのは, 適法な時季変更権の行使とはいえないと解されます (横手統制電話中継所事件・最高裁第3小法廷昭 62.9.22 判決, 労働判例 503 号6頁)。

ところで質問は, 自己都合により退職する従業員から, 残りの勤務日数をすべて年休で休みたいとの申し出があったが認めなければならないかというものですが, 結論からいえば, 質問の場合, 請求された年休は認めなければならないということになりましょう。

労働者の年休権の行使は, 当該労働者と使用者間に労働関係が存在していることを前提とするのであり, 使用者の時季変更権は, 請求された日の年休取得は事業の正常な運営を妨げるので他の時季に付与するということです。 したがって, 使用者が時季変更権を行使するためには, 当該労働者は他の時季に年休権を行使することができなければならず, 労働関係の終了後は, 労働者は年休権を行使することができませんので, 退職予定日以降に年休を取得させるような時季変更権の行使はできないということになります (昭 49.1.11 基収 5554 号 (39 条))。

したがって質問の場合は, 請求された年休を付与するしかなく, 事務引き継ぎやその他の事情によって, 当該従業員に何日か出勤してもらう必要がある場合は, 事情を説明して, 必要最小限の出勤を要請するということになりましょう。 出勤要請に応じたために年休が行使できなくなり残ったという場合は, 残った年休を買上げることも可能です (厚生労働省労働基準局編 「増補版・労働基準法 (上)」 550 頁・労務行政刊, 東京大学労働法研究会編 「注釈労働基準法 (下)」 730 頁・有斐閣刊)。

野村勝法

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