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労務事情
休憩・休日・休暇 Q&Aで学ぶ労働基礎講座
2004/5/1
Q

休日の振替と代休:
休日の振替を実施する場合, 従業員の個別的な同意が必要か?

当社では, 就業規則において休日の振替に関する定めを置いていますが, 実施に際しては, 従業員の個別的な同意が必要でしょうか?
   
A 就業規則などに, 休日振替に関する所要の要件が定められていれば, 実施に際して労働者の個別的な同意は不要です。
 
「休日の振替」 とは, 労働契約や就業規則あるいは労働協約などによって, あらかじめ休日 (労働の義務のない日) と特定している日を, 事前に, 他の労働日 (労働の義務ある日) と予定されている日と交換して, 休日を 「労働日」 に, 他の労働日を 「休日」 とする措置をいいます。

休日振替の方法には, 休日を繰り上げる方法と, 休日を繰り下げる方法がありますが, いずれの方法であっても, 休日振替は, 業務の都合上, 当該休日の日に労働を求める必要が生じた場合に実施される, 臨時・応急的な措置でなければなりません。

なお, 休日振替に似たものとして, いわゆる 「代休」 がありますが, 代休とは, 休日振替のように, 事前に, 休日と他の労働日とを振り替えることなく, 実際に休日に労働をさせた後で, 休日労働の代償としてその後の特定の労働日の労働義務を免除することをいいます (昭 63. 3. 14 基発 150 号 (35 条))。 したがって, 休日振替の場合は, 振り替えられた元の休日の日に行われる労働は休日労働にはなりませんが, 代休の場合は, 後日代休日を与えたとしても, 実際に休日の日に労働をさせたわけですから休日労働に変わりはなく, 三六協定の締結・届出および休日労働の割増賃金の支払いが必要です。 ただし, 代休日の付与は法律上の義務ではありませんので, 休日労働の割増賃金を支払うかぎりは, 必ずしも別途に付与する必要はありません。

ところで休日振替を適法に行うためには, まず第1に, 就業規則あるいは労働協約などに, 休日振替に関する定めをおくことが必要です。 なぜなら, 労働契約上, 就業規則などで労働の義務のない日=休日と特定された日を他の日に変更するためには, 労働契約上の根拠規定が必要であって, 何らの根拠規定もなく一方的に変更して労働を命じることは, 従業員に, 労働義務のない日に労働を命じることになり, 労働契約の変更になるからです。

したがって, もし就業規則などに休日振替についての定めがない場合は, 休日振替の実施のつど, 従業員の個別的な同意が必要となります。

休日振替を適法に行うための第2の要件は, 就業規則などに, 休日振替を実施する具体的事由および手続きを定め, 実施に際しては, 事前に, 休日の振替によって新たに勤務日となる日と, 新たに休日となる日を (可能なかぎり早く) 特定して従業員に通知し, そのうえで実施しなければなりません。

なお, 休日の振替によって新たに休日となる日は, 「振り換えられた日以降できる限り近接している日が望ましい」 とされ, 「振り替えたことにより当該週の労働時間が1週間の法定労働時間を超えるときは, その超えた時間については時間外労働となり, 時間外労働に関する三六協定及び割増賃金の支払いが必要」 とされていることに留意しなければなりません (昭 63.3.14 基発 150 号 (35 条)。 なお, 変形労働時間制の場合について平 6.3.31 基発 181 号 (32 条の2))。 また新たな休日は, 法定休日(Q45 参照) との関係上, 遅くとも4週間以内の特定の日とすることが必要です。

そして, これらの要件が満たされていれば, あらかじめ休日とされていた日が労働日となり, 振り替えられた本来の労働日が休日となります。 これらのことについて行政通達は, 「就業規則において休日を特定したとしても, 別に休日の振替を必要とする場合休日を振り替えることができる旨の規定を設け, これによって休日を振り替える前にあらかじめ振り替えるべき日を特定して振り替えた場合は, 当該休日は労働日となり, 休日に労働させることにならない」 (昭 23.4.19 基収 1397 号, 昭 63.3.14 基発 150 号 (35 条)) としています。

さて質問は, 就業規則などに休日振替についての定めがある場合でも, なお, 個々の実施時点で従業員の個別的な同意・了解が必要かということですが, この問題については, 休日振替のリーディングケースである三菱重工業横浜造船所事件 (横浜地裁昭 55.3.28 判決, 労働判例 339 号 20 頁) の判決があります。

この事件は, 昭和 49 年の春闘における交通ゼネストに際して実施された休日振替措置の当否が争われたものですが, 裁判所は 「就業規則 28 条1項によれば, 一定の条件のもとに就業規則所定の休日を他に振替えることができることになっているのであるから, ……使用者は, 前記の条件が満たされるかぎり, 特定された休日を振替えることができるものというべく, たとえ, 個々の振替の際に労働者の同意, 了解がなくとも, そのことの故に直ちに休日振替が違法, 無効となるいわれはない」 と判断し, 現在では通説的な見解となっています。

したがって, 就業規則などに休日振替についての定めがあり, 実施に際して所要の要件が満たされていれば, 実施時点での従業員の個別的な同意は不要ということになります。

野村勝法

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