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労務事情
時間外・休日労働 Q&Aで学ぶ労働基礎講座
2004/4/1
Q

割増賃金の算定基礎となる賃金:
割増賃金の算定基礎となる賃金の範囲は

持家, 借家を問わず, 独身従業員には一律1万円の住宅手当を支給するとした場合, この住宅手当を割増賃金の算定基礎賃金から除外できますか?
   
A 住宅手当を独身従業員に一律に支給するのであれば, この手当を割増賃金の算定基礎賃金から除外することはできません。
 
使用者は労働者に, 法定労働時間を超える労働 (時間外労働) や, 法定休日の日に労働 (休日労働) をさせた場合, および午後 10 時から午前5時までの時間帯に労働 (深夜労働) をさせた場合は, 法所定の割増賃金を支払わなければなりません (労基法 37 条1項, 3項。 なお割増賃金の意味, 割増率についてはQ38 を参照)。

この割増賃金の支払い趣旨は, 法定労働時間を超える長時間労働や法定休日の日の労働に対する 「補償」 として, また, 深夜の時間帯における精神的, 肉体的な苦痛を伴う労働への 「補償」 として支払いが義務づけられているものであり, 合わせて, 割増賃金の支払いを義務づけることによって, 労働時間制および週休制の原則を確保すると同時に労働時間の短縮を図ることにあります (平 6.1.4 基発1号 (37 条))。

ところで, この割増賃金の算定に関する基礎賃金の範囲ですが, この賃金は原則として 「通常の労働時間又は労働日」 に支払われるすべての賃金がその対象となります (労基法 37 条1項, 大星ビル管理事件・最高裁第1小法廷平 14.2.28 判決, 労働判例 822 号5頁)。

ただし, 労基法 (37 条4項) および労基法の施行規則 (21 条) には, @家族手当, A通勤手当, B別居手当, C子女教育手当, D住宅手当, E臨時に支払われる賃金, F1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金は, 割増賃金の算定基礎賃金から除外してもよいと定められています。 したがって, 上記の@からFまでに該当する賃金は, 割増賃金の算定につき, その基礎賃金から除外することができるわけですが, この除外項目賃金は限定的に列挙されているものですから (小里機材事件・最高裁第1小法廷昭 63.7.14 判決, 労働判例 523 号6頁), これ以外の賃金はすべて算入しなければなりません。

ではこれらの賃金が, 割増賃金の算定基礎賃金のなかからなぜ除外されたのかということですが, 一般には,

家族手当, 通勤手当, 別居手当, 子女教育手当, および住宅手当は, 同一時間の時間外労働に対する割増賃金が, 労働の量や内容とは無関係の, 労働者の個人的な事情で変わってくるのはおかしいとの考え方から除外されたとされており, これらの賃金に該当するか否かは, 実質的に判断しなければならないとされています (昭 22.9.13 発基 17 号 (37 条))。

次に, 臨時に支払われた賃金とは, 臨時的・突発的事由に基づいて支払われたもの, および結婚手当など支給条件はあらかじめ確定されているが, 支給事由の発生が不確定であり, かつ, 非常に稀に発生するものですが, これらの賃金は 「通常の労働時間または労働日の賃金」 ではないとして除外されています。

また, 1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金とは, 賞与や1カ月を超える期間について支払われる精勤手当, 能率手当などを指しますが, これらの手当も 「通常の労働時間又は労働日の賃金」 とはいえず, また, 割増賃金の計算技術上, 割増賃金の基礎賃金への算入が困難との理由で除外されたものとされています。

ただし, 労基法にいう 「賞与」 とは, 支給額があらかじめ確定していないものをいい, 年俸制賃金における賞与のように, 支給額があらかじめ確定している賞与, たとえば年俸額を 16 等分し, そのうちの 16 分の 2 を夏季賞与, 16 分の2を冬季賞与として支給するなどの場合は, 労基法上の賞与とはいえないから, 「割増賃金の算定基礎賃金から除外できない」 (平 12.3.8 基収 78 号 (37 条)) とされていることに留意しなければなりません。

ところで質問の住宅手当ですが, 持家, 借家を問わず, 独身従業員には一律1万円を支給するとした場合は, この住宅手当を割増賃金の算定基礎賃金から除外することはできないと考えられます。

住宅手当は, 平成 11 年の省令改正により, 割増賃金の算定基礎賃金から除外することが認められたものですが, 割増賃金の算定基礎賃金から除外することができる住宅手当とは, 「住宅に要する費用に応じて算定される手当」 をいい, 「手当の名称の如何を問わず実質によって取り扱う」 こととされ, 「住宅に要する費用にかかわらず一律に定額で支給される手当は, 本条の住宅手当に当たらない」 とされています。 そして, その具体例として, 「賃貸住宅居住者には2万円, 持家居住者には1万円を支給する」, あるいは 「扶養家族がある者には2万円, 扶養家族がない者には1万円を支給する」 とか, 「全員に一律に定額で支給する」 などの場合は, 本条の住宅手当にはあたらないとされています (平 11.3.31 基発 170 号 (37 条)) ので, 質問の住宅手当は, 割増賃金の算定基礎賃金から除外することはできないと考えます。

支給する住宅手当を, 割増賃金の算定基礎賃金から除外される手当とするためには, 行政解釈が示すように, 住宅に要する費用に定率を乗じた額を支給するなどの工夫が必要でしょう。

野村勝法

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