序 医師不足、看護師不足に加えて、介護の現場では、介護福祉士がせっかく専門学校を卒業しながら、他の業界へと流出しているとの声があがっている。 介護福祉士の流出の原因は明解である。「賃金が低い」から、自分の求める職場である老優以外に生活の場を置き変えるのである。 医師にしても、たとえ使命に燃えて、週60時間も70時間も働き続けても、報われることは少をい。 あげくのはてに「こんなに待たされるんじゃERとはいえないよ」などと言われる。 疲れがどっと出てしまう。燃えつきて開業医へと転身してしまうのも無理はない。 看護師とて同じようなもの、医療技術は日進月歩、少しでも現場を離れると、現場復帰は、自分自身の不安との闘いであり、それに疲れて“休眠”を選ぶ。 このように、医療・介護の世界は人材不足で悲惨な状況を呈している。そして、このような状況の中で、それぞれの病院・老優は、その施設が置かれた地域の事情に応じて雇用形態に工夫を試みている。 例えば、本事例に出てくる財団法人天誠会では、一度子育てのためにリタイヤした看護師を再養成している。その内容は勤務形態に幅を持たせ、老健や訪問着護に向けて再養成をほどこし、自施設の手づくりの看護師の育成を行っている。子育てでリタイヤした看護師は、1年ごとに子供が成長し、辛がかからなくなり、より正職員として.の働きに近づいていくのである。勤務形態に幅を持たせ、施設側が働きやすいように支援していけば、ちゃんとした正規職員が得られると天誠会では力を入れている。 医師の場合は、人材紹介会社の活用の事例がある。いかに安心を引き出す最初の面接を行い、痛院を気に入ってもらえるか、人材担当者に負うところが多いのであるが、こうした会社の活用も今後の流れとしてあるのであろう。 子育てが可能な待遇が得られ、自分が目指していた患者さんのケアや高齢者の介護ができれば、それでよい、という職員もいるはずである。しかし、そうした奉仕の精神だけを求める時代ではなさそうである。 病院・老健がいかにやりがい、生きがいを求める人材を採用するか、賃金も、働きやすい環境の提供も他の業界に負けないようにならなければいけない。
第1章 解説 人材難と病院経営 人材育成と地域連携が重要な視点 特別医療法人財団董仙会 恵寿総合病院 理事長 神野正博
第2章 〈事例〉 病院の対策編 ・現状と対策―岩手県における医師確保への取組み 岩手県医療局 病院改革室 医師対策監 岩手県 医師確保対策室 医師確保対策監 (社)日本病院会 病院経営管理者協議会 理事 相馬敏克 事例1 木沢記念病院 医師の確保・看護師採用の有効打 木沢記念病院 病院長補佐 佐合茂樹 事例2 小倉第一病院 「7対1」ショックに負けない人財戦略 〜すでにいる“人”を大切にする中小病院のサバイバル戦略〜 小倉第一病院 副院長 中村秀敏 事例3 織本病院 シフト勤務(時差出勤)導入による超過勤務の削減 織本病院 電算課 織本 潤 事例4 中村記念病院 仕事しやすい,勉強しやすい,職場環境の提供 中村記念病院 理事長・院長 中村博彦 事例5 鷹岡病院 多彩な勤務形態で人材確保 〜財団法人復康会 鷹岡病院の困難職種採用支援制度〜 編集部 事例6 開業医B 医療機関の人材確保に関する一考察 〜主に,看護職の対策を中心として〜 開業医B 事例7 総合病院 土浦協同病院 院内保育所拡充・移転新築事業が経営に果たす役割 総合病院 土浦協同病院 事務部 黒澤典善 事例8 上尾中央医科グループ 医師採用氷河期にみる採用戦略 上尾中央医科グループ本部 医師人事企画部 部長 塚本 孝 事例9 生方医院 小規模医療機関における人材確保の試み 〜臨機応変な応援態勢も1つのポイント〜 生方医院 生方 毅 事例10 芳野病院 双方向性の勤務形態を採用 〜勤務形態の多様化/職員への支援策/流動化と特化〜 芳野病院 総務部長 立花雅男 資料 採用困難職種の実態
第3章 〈事例〉 看護部の対策編 ・現状と対策―経営戦略を達成するための看護職の確保に向けて (社)日本看護協会 看護職確保定着推進戦略プロジェクト 次長 奥村元子 事例1 聖隷三方原病院 看護に着目した平成20年度診度療報酬改定への備え201 〜いかに看護師を確保し,配置するか〜 聖隷三方原病院 看護部長 吉村浩美 事例2 東埼玉総合病院 その1柔軟な雇用の創造 〜帰ってコールを含めて多彩な人材確保〜 ジャパンメディカルアライアンス東埼玉総合病院 副院長・看護部長 吉倉充子 その2平成17年度埼玉看護師定着促進事業への応募 〜ナースのためのマイライフ・マイプラン〜 看護科長 武井真由美/看護科長 田中幸世/副院長・看護部長 吉倉充子 第4章 老健の対策編 ・現状と対策―施設独自の施策と賃金水準と社会的評価の見直しが急務 医療法人博愛会 理事長 江澤和彦 (全国老人保健施設協会 理事・学術委員長) 事例1 介護老人保健施設しょうわ 人材不足が招く老健の崩壊 医療社団 心司会 理事長 介護老人保健施設しょうわ 施設長 佐藤龍司 事例2 財団法人天誠会 採用・処遇に変化を持たせ,かつ,内部育成を図る 編集部 事例3 介護老人保健施設グレイス・ガーデン 老健グレイス・ガーデンの勤務事情調査 介護老人保健施設グレイス・ガーデン 副施設長 小林恒三郎 資料 全老健大会会場にて〈ききとり調査