 |
|
経営書院
|
|
| 佐藤 範男・著 |
| A5判・114頁・定価 1,575円(税込) |
| ISBN
4-87913-840-1 C3047 |
はじめに<抜粋>
かつて筆者の医師に対するイメージは、「偉い先生に頭を下げ、診察をしていただき、薬をもらって帰ります。何の病気だったのか、わかったようなわからないような、そんなあやふやな気持ちのまましばらくは薬を飲み続け、なんとなく病状が回復したのをみて、あの先生はすばらしい」と思ってしまうものでした。
病気が治ったのはどうしてだったんだろうかと後で考えます。治療中には先生には聞けず、会話の中で出た言葉や病名を家の家庭医学書で調べてみますが、実は何もわからないのです。
そのとき不思議だなあと思いました。自分のことが書いてあるのに、自分の手もとにカルテはないのです。カルテに何が書いてあるのか、英語なのか、ドイツ語なのか、それすらもわかりません。
もし手元にカルテがあったなら、病状から2度と同じ病気を起こさないように注意することができるでしょうし、少なくとも、病名は調べることができます。誰でも一生のうちに、一つの病院や医院しか行かないということはないでしょう。転勤や、引越しで、住居が変わって、病院を変えなくてはならないときにも、そのカルテを病院へ持って行けば今までの病歴を正確に伝えることができます。
過去に大病を患い、ある大病院で治療を受け完治したとしましょう。それからしばらくしてある日かぜを引いて、少なくとも自分ではかぜだと思っても、もしかしたら昔の大病に関連しているかもしれないと、近くの医院ではなく、かつての大病院に行ってしまいます。それが大学病院のような大病院であったら、診察に何時間も待たされ、挙句の果ては単なるかぜだと診断されます。
もし近くの医院でも、かつての大病院のカルテを閲覧できたら、完治した大病と今の病状を比較でき、すぐに診断と治療がわかるのではないかと思います。そうすれば会社も半日休むだけで済んだかもしれません。
筆者の父が入院し、担当の医師から今後の治療計画を受けたときのことでした。他の患者さんとは別のバインダーに入っていた事もありますが、父のカルテの肉厚なことに驚いた記憶があります。何十枚もの検査結果等が粘ってあり、ゆうに5cmはあったかと思います。この厚さはおそらく増えることはあっても減ることはないでしょう。「けが」「脳梗塞」「誤嚥」「肺炎」の4回の入退院で、このくらいの厚さは多いのか、少ないのかはわかりませんが、これが病院全体となると一体どれくらいの量になるのでしょうか。
筆者は長年、医事システムやオーダシステムを病院にセールスする仕事をしていました。電子カルテシステムは、医事システムやオーダシステムと同様なアプローチをしてはいけないと気がつきました。電子カルテシステムは単なる情報の集約ではなく、生身の情報を扱うということがわかったからです。このことを十分理解しないと電子カルテシステムの導入はうまくいかないことを知りました。
本書では、電子カルテはどうして生まれたのか、誰のためのものかを掘り下げました。その上で、電子カルテシステムのシステム上の仕組みを述べています。電子カルテシステムの仕組みがわからないと、上手な導入と運用ができないと考えたからです。
本書で述べている電子カルテシステムの仕組みは、システムのあり方としては理想に近い形ですが、世の中の電子カルテシステムがすべてこの仕組みであるとは限りません。メーカー側の開発政策や病院側のニーズで千差万別です。
電子カルテは導入に多くの費用がかかります。研究を主とした大学病院や、大手企業の企業内病院のように多額の費用を投じることのできる病院はそれほど多くないはずです。
今日、パソコンという情報機器が普及し、電子カルテシステムが安価に導入できるようになりました。しかも、このパソコンの持つ機能が、実は電子カルテシステムに不可欠な機能であることが普及に拍車をかけています。本書では、大規模病院や、大病院のみならず、医院や、中小規模病院にも焦点を当て、パソコンでも導入できる電子カルテシステムを模索してみました。
佐藤 範男 |
|
|  |
 |