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はしがき
昨年から今年にかけて台風や地震といった災害が相次いでいます。そう遠くない時期に東海地震,東南海地震,南海地震が同時または連続して発生するとされています。また,このような広域・大規模災害に至らなくても,たとえば,茨城県東海村の臨界事故や化学プラント等における事故(産業災害)のように,従業員はもとより地域社会に甚大な被害を与え,しかも,これが長期間に及ぶこともあります。
このため,各社ともさまざまな防災対策に取り組んでおりますが,これらは,いずれも災害をどう防止するか,発生した災害に迅速に対応し,被害の拡大をどのように防ぐのかなど,災害そのものに着目したものが中心となっています。
一方,自然災害や産業災害は,そこで働いている人たちに対して,通常の労働とは異なるさまざまな対応を求めます。たとえば,災害に対応して所定労働時間を超える勤務や,休日や休暇を返上しての復興作業を命じることもあります。また,災害でケガをしたり,家屋を失ったり,ときには職場さえ失うこともあります。
ところが,多くの企業の災害対策を拝見しますと,こうした災害に伴い生起すると思われる人事管理・労働関係・企業福祉等の観点からの対応策については,必ずしも十分な準備がなされているとはいえない現状のようです。
そこで,弊所編集局では,阪神・淡路大震災直後の1995年に,「防災・震災管理ハンドブック」と題して,人事・労務の課題に着目して編集した書籍を刊行いたしましたが,それからすでに10年を経ました。このため,ご愛読者のみなさまから,労働時問や解雇の法制など,その後の労働関係法令の変更に対応した新たな書籍の刊行にっいて,多数のご要望をいただいておりました。そこで,上記書籍のリメイク版として本書を刊行することにしたものです。
本書の構成は,第1部「緊急災害の人事管理Q&A」,第2部「災害見舞金・緊急融資制度」,第3部「企業事例と防災マニュアル」,第4部r関連資料」の4部構成です。
労使の実務担当者,労使交渉の窓口担当者はもとより勤労・総務・経理担当者等が,緊急災害時に必要となる,労働時間や賃金等の労働条件の変更,災害見舞金や緊急融資などの福利厚生施策,労災補償・安全衛生,災害関連の給与税務等々,ご担当者が抑えておきたい事項を網羅しています。
第1部の「緊急災害の人事管理Q&A」では,緊急災害に関連する@労働基準法等の労働法(20問),A労災保険法(13問),B労働安全衛生法(18問),C給与税務や法人税(17問)の実務を合計68問に整理して,分かりやすく解説しています。
第2部の「災害見舞金・緊急融資制度」は,緊急災害に際しての従業員に対する企業の各種の支援制度を取り上げました。まず,災害見舞金と緊急融資・貸付制度にっいて,大規模災害に備えた制度の作成・見直しにあたっての考え方を解説しました。次に,弊所が,2003年に実施した「災害見舞金に関する実態調査」をもとに,各社の見舞金の水準と支給・給付の実態を紹介しました。最後に,各社の緊急災害関連規程から,@慶弔見舞金(災害見舞金),A住宅資金融資,Bボランティア休暇の3分野から合計10規程を紹介しています。
第3部の「企業事例と防災マニュアル」では,まず,阪神・淡路大震災を経験し・復興したモロゾフと神戸製鋼所のご協力を得て,震災を契機に防災対策をどのように構築していったのかをレポートしました。また,原発修理記録の改ざんや虚偽報告問題を契機に防災対策と企業倫理の定着を図った東京電力,栃木工場の火災を契機に防災体制を再整備したブリヂストンの両社の事例から,これからの防災のあり方を探ってみました。あわせて,モロゾフほか2社からご提供いただきました防災マニュアルも紹介しました。
第4部の「関連資料」では,日本経団連の「企業の地震対策の手引き」,国(内閣府)の「企業と防災」ほか関連資料を紹介しました。
自然災害を完全に防止することは不可能ですが,災害に伴う被害を最小限にくいとめ、早い段階で旧来の生活を取り戻す方策を講じることは可能だと思われます。また,産業災害の最大の要因は,人為的ミスであるとされています。「人はミスをするものだ」という前提が災害対策の基本ではないでしょうか。
福利厚生の賃金化など企業福祉不要論が声高に主張さていますが,災害に際する企業や労組・共済会の支援は,単なる福利厚生ではないとされています。企業防衛はもとより企業市民として社会貢献の観点からも,従業員や地域社会への支援体制を整備することが要請される時代となりました。
その意味で,本書がこれら災害の防止や復興に際しての参考になれば幸いです。なお,末尾になりましたが,本書の発刊にあったって,ご多忙の折にもかかわらず解説のご執筆をいただきました先生各位,取材と資料提供にご協力いただきました各社には,この項をかりて心から御礼申し上げます。
2005年6月
産労総合研究所編集局
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