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経営書院
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改訂8版 労災補償法入門

井上 浩・著
四六判・362頁・定価 2,415円(税込)
ISBN 4-87913-891-6 C2032

はしがき

私と労災保険法の最初の出会いは、民間から中途採用された東大出の署長に、監督係より労災係へ突如として配転させられたときです。それまで事業場監督しかやっていなかった若い素人の私に、先輩の事務官は療養補償の仕事は難しいからといって自分が担当し、私には休業補償の決定を全部担当させました。後になってわかったのですが、その仕事は平均賃金の計算の方法をしらべるとか、ソロバンで一日中割り算とか掛け算を連続して行うというたいへんな仕事でした。

続いて勤務した監督署は管内に日本有数の重工業地帯をかかえていました。私はそこで六人の監督官と一人の事務官で編成している労災保険地区担当官の中に入り、重工業と港湾運送業の密集Lている地域を担当しました。そのとき先輩の一人がたいへんだからといって若干の大企業を肩代わりしてくれました。後で他の担当官から聞いたところによると、それらの企業は、待遇(?)の良いことで有名な企業だということでした。

昭和三五年になると、労災保険にはじめて年金制度が導入されましたが、当時私は、安全衛生と労災保険を担当する監督署の第二課長でした。しかし、そのときは主任格にたいへん優秀な事務官の人がいたので、私が実務を担当することはあまりありませんでした。

最後に、労災保険に深くかかわったのは地方労災補償監察官になったときです。この仕事は監督署の労災保険業務を監察するのが本業ですが、ヒマだったので当時創設された通勤災害保護制度も担当しました。その頃は例の明治パンの心筋梗塞死亡事件が東京地裁にかかっていて、監察官の一人は法務省の担当検事との打ち合わせによく出向いていました。

以上のように、私の労災保険法体験は学者と違って泥臭いものです。本書はその泥臭い体験から生まれたものですから、学問敵には未熟なものですが、特に次の点に配慮して記述しました。

(1)労災補償の性格論とか業務上外認定とかの入口論だけでなく、補償の内容等について重点的に取り上げる。
(2)厚生労働省等の行政解釈、裁決、判例をできるだけ紹介する。
(3)公務員災害補償についても言及する。

以上のとおりですから、官民労使の実務担当者、各種コンサルタント、社会保険労務士試験受験者の方々の参考になるのではないかと思います。

昭和五七年一月   井上浩

【備考】
(1)法令の改正により基準となる金額その他が改定されることがあるので注意してください。
(2)根拠条件の末尾に「等」とあるのは、通勤災害関係、労働基準法関係、公務員災害補償関係条文を省略したものです。