産労総合研究所
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経営書院
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新訂 労災・通災・メンタルヘルスハンドブック

産労総合研究所・編
B5判・586頁・定価 9,870円(税込)
ISBN 4-87913-939-4 C2032

はしがき

労災・職業病の発生件数は,昭和36年をピークに減少傾向をたどっていると報告されています。平成に入ってからの動向をみても,労災保険の休業補償の対象となる休業4日以上の死傷者数は,平成元年の21.8万人が平成16年に12.6万人にまで減少しています(いずれも厚生労働省報告)。

ところが,負傷以外の原因による疾病については,このところ横ばいの状況にあり,過労を原因とする"うつ病・自殺"や生活習慣病と長時間労働とが"協働原因"となった脳・心臓疾患による業務上死亡は増加傾向にあります。なかでも,専門技術職での労災認定件数が増加しており,精神疾患は30〜49歳で,脳・心臓疾患は50〜59歳での増加が目立っています。

他方で,これらの死亡事故や高度障害に対する労災民事裁判も増加しています。また,観光ビザで入国した外国人労働者の労働災害,受動喫煙と安全配慮義務など,国際化や嫌煙権をめぐる新たな民事損害賠償事件も登場しています。損害賠償の請求額も高額化しており,労災保険からの給付額を控除した後の認容額が1億円を超える事件もみられます。

そして,過労自殺事件に関しては,過失についての裁判所の判断に大きな変化がみられます。すなわち,従来の判例では,労働者本人の気質的要因を理由に過失責任を認めるのが一般的で,なかには7〜8割過失相殺をする例もありました。電通事件最高裁判決(第3小法廷平12.3.24判決)は,自殺した労働者や遺族(同居の両親)の過失責任を全面的に否定しています。

編集部では,おおむね5年ごとに労災・通災・メンタルヘルスに関する最新情報を別冊としてお届けしてきました。前回の発刊は2001年ですが,その後も数多くの裁判例が積み重ねられています。

また,この間の社会・経済の変化と上述の労災裁判の動向を受けて,厚生労働省は,平成15年度から第10次「労働災害防止計画」に取り組んでおりますが,その中で,過労に関する行政通達を書きかえたり,『疲労蓄積度チェックリスト』や『職場復帰支援の手引き』の公表,あるいは単身赴任に関する通勤災害の法令の改正など,新たな政策を展開しています。

そこで,このような動きに対応した,労災・通災・メンタルヘルスに関する最新情報をとりまとめたのが本書です。

第1部の実務知識編では,まず,最高裁判例を中心に,労災認定基準(労働基準監督署の労災保険の不支給処分に対する裁判所の判断)と,民事損害賠償事件にっいての判例の動向を解説しています。また,メンタル不全について,職場復帰をどう図るのかを,中堅・中小企業にも応用可能なかたちで解説して
います。

あわせて,購読者のみなさまから寄せられた質問を108問に整理して,Q&Aでのわかりやすい解説を行っています。

第2部は,主要判例の要旨を項目別に収録しました。掲載件数は88事件(うち最高裁53事件)で,労災認定基準(39事件)と民事損害賠償事件(46事件),その他の労災関連事件(3事件)に分けて収録しました。

あわせて,「労働判例」誌1995年1月1・15日号〜2005年9月15日号までに掲載した労災事件を,傷病・ケース別に分類して,簡単な判示事項を付けて収録しました。

第3部は,取組実態編で,当所が実施した「労災・通災・メンタルヘルスに関する調査」では,各社の労災付加給付制度(企業内上積み制度)の水準を紹介しました。また,メンタルヘルスに関する労使の取組みに関する社会経済生産性本部の調査を収録しています。

第4部は,関連資料編で,主要通達とここ10年間の労災事件の判決認容額と和解額を一覧表にまとめて紹介しました。

労災に対する第一義の施策は,いかに防止するかにあります。そのためには,ハード面では防災や安全を最優先する機械・設備の導入・改善や快適職場づくりが求められていますが,一方で,各自の個性を尊重したきめ細かな人事施策や"心の健康づくり"などソフト面への配慮も重視されなければなりません。
もちろん,不幸にして災害が発生した場合には,十分な保護と補償を欠かすこともできませんし,たとえ障害が残った場合でも,職場復帰のための環境を整備し,職業生活を継続することを前提とする取組みが重視されねばなりません。

本書は,ソフト面に着目した構成となっていますが,企業・職場の施策づくりの有効な参考資料となれば幸いです。

なお,末尾になりましたが,本書の刊行につき,ご多忙中にもかかわらず執筆をたまわりました執筆者各位,ならびに貴重なご意見をお寄せいただいたご愛読者のみなさまに,この場を借りて御礼申し上げます。

2005年10月
編者