はしがき
産労総合研究所では, 週 40 時間に向けての労働時間短縮が開始された昭和
62 年に労働時間管理に関する QA 集を発刊し, それ以降, その時々の労働時間法制の改正にあわせて,
改訂版を発刊して参りました。 本書は, 2000 年の刊行以来6年ぶりの改訂となる新装版です。
前版の刊行以降, 労働時間法関連法規は, 労基法, 育児介護休業法, 雇用均等法などが相次いで改正されており,
また, 労働時間・休日・休暇に関連する法の枠組みも, それまでの時間短縮一辺倒から職業生活と家庭生活の調和へと,
大きく変わりつつあります。
労働経済の側面からみたこの間の労働時間関連の変化としては, 長時間労働者 (正社員) と短時間労働者
(非正規社員) との二極化の問題があります。 長時間労働によるメンタルヘルス障害や過労死自殺の増加,
労働行政によるサービス残業の摘発・指導が注目を集めました。
同時に, 規制緩和の流れのもとで, これまでの変形労働時間制やフレックスタイム制度に続いて, 事業場外労働のみなし労働時間制の法定,
専門業務型裁量労働制の対象業務の拡大, 企画業務型裁量労働制の導入と適用範囲の拡大・手続の簡素化が行われ,
さらには, 「仕事の成果と労働時間の長さが」 合致しないホワイトカラーに対する柔軟な労働時間制度として,
「ホワイトカラーエグゼンプション」 をめぐる議論も進んでいます。
また, 予想を上回るテンポで進行する少子化対策として, 政府・厚労省は, ファミリーフレンドリー企業
(仕事と育児・介護とが両立できるようなさまざま制度を持ち, 多様でかつ柔軟な働き方を労働者が選択できるような取組を行う企業)
の育成に向けた啓蒙活動を実施してきました。 2005 年4月には次世代育成支援対策推進法が施行され,
企業には雇用している従業員に対する総合的な次世代育成支援のための行動計画の策定が義務づけられ, これによって,
仕事と生活の両立, すなわちワークライフバランス (WLB) に配慮した労働時間制の確立が求められるようになったわけです。
厚労省によれば, 2005 年 12 月末の 300 人以上企業の行動計画の策定状況は, 97.0
%にのぼったと報告されています。
労働時間法制の面では, 2001 年以降, 年を開けずに育児・介護休業法が改正され, ワークライフバランスに着目した労働時間に関するさまざまな制度改革・創設が行われています。
半日年休制度の奨励や病児休暇制度 (子の看護休暇制度) の創設, 育児休業期間の延長をはじめとする育児・介護休業制度の拡充などもその1つです。
また, 労働政策審議会でも, 次世代育成世代 (30 歳代男性) の時間外労働の削減のために, 割増率の引き上げや罰則の強化,
子どもの看護等突発的な事由のための時間単位での年次有給休暇の取得制度などを検討しています。
本書もこうした流れに対応して, 副題も 「ワークライフバランスと労働時間」
するとともに, こうした観点から内容を一新しました。
本書は, Q&A 方式を中心とした最新の労働時間管理の実務解説書で, 11 項目・約 280
問で構成しています。 労働時間に関する現状と課題を体系的に整理した 11 項目の概要は, 以下のとおりです。
その考え方から日常業務の中で生起することがらまでを網羅して, 専門家が分かりやすく解説しています。
1 労働時間法制
2 ワークライフバランスと労働時間
3 勤務形態と労働時間
4 みなし労働時間 (裁量労働, 事業場外労働)
5 休憩・休日・休暇
6 時間外・深夜・休日労働と割増賃金
7 年次有給休暇
8 休職・復職
9 ワークシェア・一時帰休
10 年少者
11 労使委員会・労使協定
また, 従来版では書籍に納めていた規程類や諸届書式を, 本版では CD‐ROM
の付録とし, 労基署への届出様式をはじめとして, 労使協定就業規則, 社内規程・労働協約等の社内書式類を約
50 種収録しました。
CD‐ROM には, 労働基準監督署への届出が必要なものには記載見本も添付しております。 必要なものをダウンロードして,
事業所の実情にあわせて編集すれば, そのまま事業所の規程・書式として活用することが可能です。
本書が, 読者の労働時間制に関する日常業務の処理はもちろんのこと, 労働者の職業生活と家庭生活の調和のための政策・立案のための参考となれば幸いです。
末尾になりましたが, ご多忙中にもかかわらず解説をご執筆いただきました先生方に, 心よりお礼申し上げます。
2006 年 10 月
編 者
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