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キャリアデザインへの挑戦
キャリアデザインへの挑戦
日本キャリアデザイン学会・監修
菊地達昭・編著
A5判・300頁・定価1,890円(税込)
ISBN4-87913-997-9 C2034

はじめに

「キャリアデザインへの挑戦―58人のキャリアデザイン論―」
出版にあたって

 日本キャリアデザイン学会は大会、研究会の開催、研究誌の編集、ニュースレターの発刊等有志のボランティアによる活動で支えられている。学会の企画のひとつとして、学会の役員、会員によって2005年1月から『文部科学教育通信』に「キャリアデザイン論」の連載を行ってきた。これまでに、学会のリーダーを中心に、58人の有志に執筆いただいた。
  今回、これを一冊にまとめることになり、私が編集のお手伝いをさせていただくことになった。専門、職業についてはできる限り幅広い方々に執筆をお願いした関係で、内容も幅広く、まとめるにあたり苦労したが、「キャリアについて考える」「キャリア教育とキャリア形成支援」「企業におけるキャリア開発」「女性とキャリア」の四つに大きく分類させていただいた。また、表題は「キャリアデザインへの挑戦―58人のキャリアデザイン論―」とした。
  ここで、いささか私事になるが、私がキャリアデザインという言葉に着目し、また学会活動に参加することになったいきさつを述べておきたい。
  2003年の秋、当時NECで人材開発を担当していた私のもとに、部下を通して法政大学経営学部教授の川喜多喬先生(現在、日本キャリアデザイン学会常務理事&事務局長)から、キャリアデザインに関しての学会の設立を考えているが、実務家として意見を聞かせてほしいという話があった。私の部下が法政大学の大学院に在籍しており、川喜多先生の指導を受けていた関係からお声がかかったようだ。NECも従業員へのキャリア支援に力を入れており、勉強の意味からもお会いして話を伺うことになった。
  先生の博識と軽妙な話術に引き込まれ、人的資源管理と中小企業における人材開発がご専門であることから、たくさんの興味深い話を伺うことができた。大変茶目っ気もあり、事実かどうかは確認できなかったが、新宿で先生がホームレス相手にキャリアのヒアリング調査をしていると、カメラマンが近づいてきて突然フラッシュをたかれて写真を撮られたことがあった。何日かして、ある雑誌にそのときの写真が掲載され、そこには、「最近のホームレスには背広とネクタイをしている人までがいる」と説明書きがあったという忘れられない話もあった。
  このような話ばかりをしていたわけではなく、本題についても随分話をした。今までのキャリアへの取り組みは、高等学校での進路指導、大学での就職指導、企業においてのキャリア支援といったように切れ切れに考えられていて、一貫性に欠けているのではないか。そもそも一人の人間のキャリアは一本につながっているはずである。高等学校、大学、企業においてそれぞれの立場でキャリアに関わっている人たちすべてが参加できる学会で、キャリアについて考えていく必要があるのではないかという話であったように思う。そして、このような学会が設立された場合、実務家は参加してくれるだろうかというのが川喜多先生の懸念であった。
  高度成長から低成長時代を迎え、さらに少子高齢化が急速に進展していく中で、NECも含め各企業では従業員に対するキャリア支援は最重要課題のひとつとなってきている。これまでのマスの従業員管理から個に着目し、きめ細かい管理によるキャリア支援と人材開発を通した人材の高度化が求められている。各企業ではキャリア支援への取り組みが検討されているが、どのように取り組んでいけば良いのかについては、まだ各社とも確たる体系ができているわけではない。研究者による実務家への支援、実務家から研究者への問題提起等、相互交流は不可欠であり、その意味でも学会設立は実務家にとっても意味あるものではないかと話をした。
  このようにして日本キャリアデザイン学会設立への準備が進められることになった。2004年9月には法政大学で設立大会が開催され、今日に至っている。現在は800名以上の会員が、日本人のキャリアの変化と、その中でキャリアデザイン力を自ら身につけ、またそのような人作りの支援をするために努力している人々の実像を研究してきている。キャリアデザインとは新しい言葉であり、それゆえに明確な定義が確立しているわけではない。現会長の渡辺三枝子先生(筑波大学キャリア支援室長)を始め、リーダーとして活躍されている会員の方々にそれぞれのキャリアデザイン論を語っていただいたのが、この企画である。
  執筆当時とは最大で2年6ヶ月のタイムラグがあり、仕事が変わられた方もいる。現在の肩書きにすることも考えたが、内容との大きなギャップが生じる方もおり、敢えて肩書きは執筆当時とし、執筆年月日を入れさせていただくことにした。すべて編者の判断による。
  また、今回出版の労をお引き受けいただいた経営書院の編集部には、企画の段階から大変お世話になった。経営書院の後押しがなければこのような形で本にまとまることはなかった。最後になったが、執筆いただいた方々、お世話になったすべての方々に改めてお礼を申し上げさせていただく。


2007(平成19年)8月 菊地 達昭