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改訂版 中小企業に最適 退職金規程と積立金制度
社会保険労務士 三宅直知・著
A5判・222頁・定価 2,100円(税込)
ISBN978-4-86326-015-3

はじめに

通称 「適年」 と呼ばれ、 長い間、 大企業・中小企業を問わず、 多くの企業で退職金制度の一翼を担ってきた税制適格退職年金制度 (以下、 「適年」 という) が、 いよいよ平成 24 年3月をもって実質的に廃止となります。 この 「適年」 廃止は、 ほとんどの企業、 特に中小企業にとって今まで経験したことがない退職金制度の大改革を必要とするものであり、 単純に 「適年」 積立金を他の積立制度 (例えば、 中小企業退職金共済等) に移管したり、 小手先の処理で問題が解決したりするものではありません。 その為か、 確定給付企業年金法 (平成 14 年4月施行) により 「適年」 廃止、 他制度移行が決まって、 既にかなりの時間が経過したにもかかわらず、 未だに何の対応もしていない企業、 見直し作業に入ったものの、 どの方向に退職金制度を変更していけばよいのか決めかねている企業等が多数存在しており、 その数は数万社に及ぶものと思われます。

本書は、 このような状況で、 中小企業が 「人事」 と 「財務」 という二つの側面に留意しながら、 何を把握し、 何に注意をし、 どのような行程を経て退職金制度改革を進めていけばよいのかを、 中小企業の立場にたって提案させていただいたものです。
平成9年頃からであったと記憶していますが、 いろいろな経営者の方々から、 退職金に関する相談をお受けすることが多くなって参りました。 そのほとんどは、 「適年」 の積立不足に関することで、 当時はまだ 「積立不足って、 いったい何のことですか?」 「こんなもの早く解約したいのですが。」 「保険会社にだまされた!」 「予定利率って、 保証されていないの?」 「どうして会社が穴埋めしなければならないの?」 等と 「適年」 という企業年金と契約先の金融機関に対する不信感を露骨に訴えられることがほとんどでした。 その当時、 「適年」 の積立金の処理方法は 「解約」 する以外に方法はなく、 これは退職金制度の維持又は税制面においてもかなり不都合が生じる恐れがありました。 その結果、 毎年 「適年」 の積立不足額が増大していくことを危惧しながらも、 本格的な退職金制度改革がなかなか進まないという状況になっていました。

状況が変わったのは、 平成 14 年4月1日に施行された 「確定給付企業年金法」 がきっかけです。 この中で 「適年」 制度は、 平成 24 年3月を以って廃止されることになり、 それに伴ない、 他の退職金積立制度へ制度移行できる事が決定されました。 言い換えますと、 「適年」 はこの法律の施行により、 他の退職金積立制度に合法的に、 そして税制面での優遇措置を講じられながら、 制度移行できるようになったのです。

この時期より、 「適年」 に関する相談や問い合わせがそれまで以上に多くなってきました。 それは、 適年を契約している金融機関 (生命保険会社等) から企業に毎年送られてくる平成 13 年度 「企業年金、 財政決算報告書」 の中に、 「適年」 が廃止になること、 中小企業退職金共済に制度移行できること等が詳しく案内されていたことによります。 そこで 「この適年問題を早く解決しておかなければ」 とお考えになった経営者の方は、 「退職金セミナー」 に参加されたり、 金融機関に相談されたりしながらこの問題の早期解決をはかろうとされたようです。 しかしながら、 ほとんどの退職金セミナーの内容は、 「適年」 をどの積立制度に移行するのがいちばん 「得」 か 「損」 か、 といった論調のものばかりで、 中小企業の立場に立った新しい退職金制度を構築して行こうとするものではなかったようです。

こうしたセミナーや金融機関の対応の影響もあってか、 退職金の相談ということで私が経営者の方々とお会いするとき、 ほとんどの方が開口一番お尋ねになるのは 「適年を何に移行したらよいのでしょうか?中退共ですか?401kですか?養老保険ですか?他に何か良いものがあるのですか?」 という質問でした。 そして 「今までいろいろと金融機関の方などの話を聞いて検討してきましたが、 どういう選択をすれば良いのかなかなか決断がつかず、 困っています。」 と言われるのです。 「適年」 をどの制度に移行したらよいのか、 そのことばかりが頭の中を支配してしまって、 悩み続けておられる現実がそこに存在していました。

実はこのようなご質問に対して、 私は何時も次のようにお答えしています。 『「適年」 を何に移行するか、 「適年」 の次にどんな制度を採用するかは、 勿論大事な問題です。 しかし、 その前にもっと重要で根本的な問題があります。 まず、 その問題の解決から進めていかないと、 どのような選択がよいのか正しい判断をすることは不可能です。』 そして、 「その重要で根本的な問題とは、 御社の退職金制度の内容を規定し、 制度の全体像を決定づけている退職金規程 (退職年金規程) をどのように変更するかという事です。」 と。

私のこの説明に対して、 「退職年金規程なんて我社には存在しないと思いますよ。」、 「実は、 最近になって退職年金規程を初めて読みました。」 とか、 「あれ (退職年金規程) は、 保険会社が勝手に作ったものですから、 どうでもいいのではありませんか。」 等という反応が結構多く聞かれます。 しかしながら、 本書でこれから申し上げる内容を要約して 30 分程度説明させていただくと、 ほとんどの方は、 納得され、 そしてその表情に安堵感が漂ってまいります。 「これで何とかなりそうだ!」 そう思っていただけるようなのです。

第1章では、 昨今の退職金をめぐる一連の動きを解説しながら、 現在の退職金に関わる諸問題を 「第2次退職金ショック」 として捉え、 現在の退職金制度が今後も維持していけるのか、 又維持して行っても良いものなのかを考えてまいります。
第2章では、 退職金制度が 「退職金規程」 と 「退職金積立制度」 の2つのパーツから成り立っているということ、 この2つのパーツは 「主従関係」 にあるということを特にご理解していただきたく思っています。 この関係を認識することが、 今回の退職金制度改革を成功させるかどうかのカギを握っているといえます。
第3章では、 「退職金規程」 とはどのようなものであるのか、 何故この規程がそれほど重要なものであるのかを、 規程の重要事項を分析しながら説明していきます。
第4章では、 退職金支払原資を準備する為に、 如何なる手段があるかを主な退職金積立制度 (手段) を解説することによりみていきます。
第5章では、 具体的に 「適年」 を他の積み立て制度に移行する為の作業行程を解説していきます。 これは、 「適年」 の他制度移行又は解約を伴う中小企業の退職金制度改革の各行程を全てオープンにしたもので、 これにより誰にも頼ることなく企業がリードしながら退職金制度改革を推し進めることができるようになっています。

最後に第6章においては、 退職金制度改革時の税の取扱いについて説明します。
第1章から4章までにおいて退職金制度の知識などをしっかりと把握していただき、 その上で第6章の税制の取扱いに注意を払いながら、 第5章の各行程に従って具体的に退職金制度改革に取り組まれれば、 必ずや 21 世紀に向かって企業からも従業員からも歓迎される新しい退職金制度が構築されるものと確信しております。

三宅直知

この書籍のもくじ

はじめに

第1章 制度疲労を起こしてきた退職金制度 1
1.昨今の退職金をめぐる動き 1
2.バブル崩壊後の不況、低金利政策・株安等による運用難 2
3.確定拠出型年金法の施行 5
4.確定給付企業年金法の施行 7
5.退職給与引当金の廃止 8
6.新会計基準の導入(退職給付会計) 8
7.雇用環境の変化 10
8.第2次退職金ショック 11
9.過去の退職金ショック 11
10.退職金制度改革の必要性 13
11.退職金に対する認識 13

第2章 退職金制度の捉え方 17
1.退職金制度の2つのパーツ 17
2.退職金規程 18
3.退職金積立制度 19
4.退職金規程と積立制度は主従関係 20

第3章 退職金規程の重要事項 25
1.退職金制度の目的 25
2.確定給付タイプか確定拠出タイプか 27
3.退職金の支払い形態 29
4.「退職金」と「支払金」の計算方法 31
  (1)主な「退職金」の計算方法 32
  (給与比例方式)(第2基本給方式)(定額方式)(資格等級ポイント制方式)
  (役職ポイント制方式)(資格等級・役職ポイント制方式)
  (2)主な「支払金」の計算方法 36
  (基本給連動方式)(勤続年数方式)(全員同額方式)(資格等級別金額確定方式)
  (役職別金額確定方式)(資格等級・役職別金額確定方式)
5.最初に退職金規程ありき 41

第4章 退職金積立制度 43
1.代表的な退職金積立制度(手段) 44
2.税制適格退職年金制度(通称、「適年」) 44
  (1)「適年」とは (2)退職年金規程 (3)「適年」は中小企業向け企業年金 (4)「適年」の図解
  (5)積立不足の解消 (6)事務手数料 (7)退職金改革のチャンス
3.中小企業退職金共済制度(通称、中退共) 53
  (1)中退共の概要 (2)中退共の図解 (3)予定運用利回り変動の影響 (4)確定拠出タイプの退職金規程
  (5)確定給付タイプの退職金規程 (6)退職金規程による明暗 (7)無責任な中退共批判
4.特定退職金共済制度(通称、特退共) 62
5.厚生年金基金 63
6.確定給付企業年金 65
  (1)基金型企業年金 (2)規約型企業年金 (3)混合型企業年金(日本版キャッシュ・バランス・プラン)
7.確定拠出型年金(日本版401kプラン)67
  (1)日本版401kプランの概要 (2)拠出金の限度額 (3)企業の感じる魅力 (4)導入は慎重に
8.企業内退職金制度 71
  (1)退職給与引当金制度(平成14年度より段階的に廃止)(2)養老保険(福利厚生プラン)
  (3)預貯金(有税内部留保金)
9.現金前払いと退職金の完全廃止 74

第5章 退職金制度改革(適年移行)のすすめ方 77
改革の行程
第1行程 現退職金制度から新退職金制度へ変更する予定年月日の設定と行程表の確認 79
第2行程 現退職年金規程(又は現退職金規程)の内容の確認 81
(参考例) 退職年金規程〔規程例―1〕、〔規程例―2〕
 1.退職金の目的 99
 2.退職金の払い方 100
  (1)〔規程例―1〕の支給要件 (2)〔規程例―2〕の支給要件
  (3)退職年金規程の主な相違点
 3.年金月額および一時金の計算方法(別表の見方) 104
  (1)定額方式、給与比例方式に共通する別表
  (2)〔規程例―1〕における定額方式の別表
  (3)〔規程例―2〕における給与比例方式の別表
 4.中途解約特約 114
 5.2つの退職金規程 115
第3行程 「財政決算報告書」による、「適年」の財政状況の確認 116
 1.収支計算書 117
 2.貸借対照表 118
 3.収入保険料の内訳(毎年の支払保険料の内訳) 120
第4行程 制度変更時の従業員毎の解約返戻金と退職事由別仮退職金額の把握 121
 1.適年解約返戻金一覧表 121
 2.「既得権」と「期待権」 124
  (1)「既得権」と退職給付債務 (2)「既得権」と退職事由別仮退職金 (3)「期待権」
  (4)退職事由別仮退職金額の把握と一覧表作成
第5行程 制度変更時における「既得権」等、保証額の検討 131
 1.退職事由別仮退職金と解約返戻金及びその不足額一覧表 131
 2.制度変更の方向性 132
 3.「既得権」と制度変更時の保証額の決定 134
  (1)「既得権」の設定と保証の仕方 (2)保証額の設定
 4.別途「補填金」の確保 137
第6行程 新しい退職金制度の基本方針と骨格作り 140
 1.「のれん分け」 140
 2.具体的な目的 141
 3.払い方をどうするか 143
 4.確定給付タイプ OR 確定拠出タイプ 143
 5.「退職金」または「支払金」の計算方法 146
  (1)資格等級と役職を基準にした方式 (2)役職のみを基準にした方法
 6.モデル退職金表、モデル支払金表 151
  (1)確定給付タイプのモデル退職金表 (2)確定拠出タイプのモデル支払金表
 7.ポイント方式の問題点 156
 8.制限付き給与比例方式・基本給連動方式 157
 9.退職金、支払金に差をつけない方法 158
第7行程 退職金規程の不利益変更 160
 1.不利益変更の法理 161
 2.不利益の程度等の把握 162
 3.「既得権」の確保の方法 165
  (1)従来の給与比例方式を維持する場合 (2)ポイント方式導入の場合 
  (3)確定給付タイプから確定拠出タイプへの変更
  (4)「適年」から中退共へ移行し、確定拠出タイプとする (5)「適年」から日本版401kへ移行
 4.「適年」退職年金規程における「既得権」等 170
 5.会社の都合と従業員の理解 171
 6.代償措置 172
第8行程 退職金積立制度(手段)の検討 173
 1.「適年」の移行先 173
 2.中退共への移行 175
 3.確定給付企業年金規約型への移行 176
 4.厚生年金基金への移行 177
 5.日本版401kへの移行 177
 6.解約 179
 7.移行先・新しい積立て手段の検討 181
 8.タイプ別選択 181
  (Aタイプ)〜(Gタイプ)
第9行程 退職金規程案の作成 190
 1.「適年」を中退共に移行し、確定拠出タイプの退職金制度に変更するケース 190
 2.「適年」を中退共に移行し、確定給付タイプの退職金制度を維持するケース 194
 3.「適年」を解約し従業員ごとに積立金を分配し、新たに前払い退職金制度とするケース 199
第10行程 従業員説明会 202
  (参考例)退職金制度変更における従業員同意書
第11行程 新退職金積立制度に関する手続き 207
 1.「適年」積立資産処理 207
 2.新積立手段契約 208
第12行程 新退職金制度運用開始 209
 1.新退職金規程を確定、届出 209
 2.新制度運用開始 210

第6章 退職金制度改革と税 211
1.退職所得控除 211
2.「適年」積立金処理時の課税区分 213
3.退職金制度改革及び廃止時の税の取扱い 215
  (1)所得税法基本通達
  (2)企業内退職金制度から中退共・新型企業年金に移行する場合に清算される一時金
  (3)企業内退職金制度から日本版401kへ移行した場合
  (4)退職金制度の廃止に伴い、支払われる一時金
あとがき 221

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