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退職金規程と積立制度
三宅 直・著
A5判・218頁・定価 2,100円(税込)
ISBN 4-87913-914-9 C2034

はじめに

税制適格退職年金制度の廃止、 厚生年金基金の代行部分返上、 確定拠出型年金制度の創設、 中小企業退職金共済予定利率の引き下げ、 新会計基準の導入等により、 退職金制度は今大きな転換期にきています。 本書はこのよう状況に際し、 中小企業が、 「人事」 と 「財務」 といった側面に特に留意しながら、 何を把握し、 何に注意をして、 どのような行程を経て退職金制度改革を進めていけば良いのかを、 中小企業の立場に立って提案させていただいたものです。

この中でも特に確定給付企業年金法によって決定された 「税制適格退職年金制度」 (通称 「適年」。 以下、 「適年」 という。) の廃止、 他制度移行は、 中小企業にとって今までに経験されたことのない退職金制度の大改革であります。 具体的に 「適年」 の退職金積立金をどのように処理していけばよいのか、 次の退職金積立にはどの手段を用いればよいのかと悩み続けておられる経営者は非常に多く、 その数はおそらく現段階でも全国で数万人に上るものと思われます。 そのため、 問題の解決をはかるために数多くの退職金セミナーに参加したり、 金融機関などからのアプローチを積極的に受けたりしながらその解決手段を探しておられるのが実状のようです。

平成9年頃からであったと記憶していますが、 いろいろな経営者の方々から、 退職金に関する相談をお受けすることが特に多くなって参りました。 そのほとんどは、 「適年」 の積立不足に関することで、 当時はまだ 「積立不足って、 いったい何のことですか?」 「こんなもの早く解約したいのですが。」 「保険会社にだまされた!」 「予定利率って、 保証されていないの?」 「どうして会社が穴埋めしなければならないの?」 等と 「適年」 という企業年金と契約先の金融機関に対する不信感を露骨に訴えられることがほとんどでした。 その当時、 「適年」 の積立金の処理方法は 「解約」 する以外に方法はなく、 これは退職金制度の維持又は税制面においてもかなり不都合が生じる恐れがありました。 その結果、 毎年 「適年」 の積立不足額が増大していくことを危惧しながらも、 本格的な退職金制度改革がなかなか進まないという状況になっていました。

状況が変わったのは、 平成 14 年4月1日に施行された 「確定給付企業年金法」 がきっかけです。 この中で 「適年」 制度は、 平成 24 年3月を以って廃止されることになり、 それに伴ない、 他の退職金積立制度へ制度移行できる事が決定されました。 言い換えますと、 「適年」 はこの法律の施行により、 他の退職金積立制度に合法的に、 そして税制面での優遇措置を講じられながら、 制度移行できるようになったのです。

この時期より、 「適年」 に関する相談や問い合わせがそれまで以上に多くなってきました。 それは、 適年を契約している金融機関 (生命保険会社等) から企業に毎年送られてくる平成 13 年度 「企業年金、 財政決算報告書」 の中に、 「適年」 が廃止になること、 中小企業退職金共済に制度移行できること等が詳しく案内されていたことによります。 そこで 「この適年問題を早く解決しておかなければ」 とお考えになった経営者の方は、 「退職金セミナー」 に参加されたり、 金融機関に相談されたりしながらこの問題の早期解決をはかろうとされたようです。 しかしながら、 ほとんどの退職金セミナーの内容は、 「適年」 をどの積立制度に移行するのがいちばん 「得」 か 「損」 か、 といった論調のものばかりで、 中小企業の立場に立った新しい退職金制度を構築して行こうとするものではなかったようです。

こうしたセミナーや金融機関の対応の影響もあってか、 退職金の相談ということで私が経営者の方々とお会いするとき、 ほとんどの方が開口一番お尋ねになるのは 「適年を何に移行したらよいのでしょうか?中退共ですか?401kですか?養老保険ですか?他に何か良いものがあるのですか?」 という質問でした。 そして 「今までいろいろと金融機関の方などの話を聞いて検討してきましたが、 どういう選択をすれば良いのかなかなか決断がつかず、 困っています。」 と言われるのです。 「適年」 をどの制度に移行したらよいのか、 そのことばかりが頭の中を支配してしまって、 悩み続けておられる現実がそこに存在していました。

実はこのようなご質問に対して、 私は何時も次のようにお答えしています。 『「適年」 を何に移行するか、 「適年」 の次にどんな制度を採用するかは、 勿論大事な問題です。 しかし、 その前にもっと重要で根本的な問題があります。 まず、 その問題の解決から進めていかないと、 どのような選択がよいのか正しい判断をすることは不可能です。』 そして、 「その重要で根本的な問題とは、 御社の退職金制度の内容を規定し、 制度の全体像を決定づけている退職金規程 (退職年金規程) をどのように変更するかという事です。」 と。

私のこの説明に対して、 「退職年金規程なんて我社には存在しないと思いますよ。」、 「実は、 最近になって退職年金規程を初めて読みました。」 とか、 「あれ (退職年金規程) は、 保険会社が勝手に作ったものですから、 どうでもいいのではありませんか。」 等という反応が結構多く聞かれます。 しかしながら、 本書でこれから申し上げる内容を要約して 30 分程度説明させていただくと、 ほとんどの方は、 納得され、 そしてその表情に安堵感が漂ってまいります。 「これで何とかなりそうだ!」 そう思っていただけるようなのです。

第1章では、 昨今の退職金をめぐる一連の動きを解説しながら、 現在の退職金に関わる諸問題を 「第2次退職金ショック」 として捉え、 現在の退職金制度が今後も維持していけるのか、 又維持して行っても良いものなのかを考えてまいります。

第2章では、 退職金制度が 「退職金規程」 と 「退職金積立制度」 の2つのパーツから成り立っているということ、 この2つのパーツは 「主従関係」 にあるということを特にご理解していただきたく思っています。 この関係を認識することが、 今回の退職金制度改革を成功させるかどうかのカギを握っているといえます。

第3章では、 「退職金規程」 とはどのようなものであるのか、 何故この規程がそれほど重要なものであるのかを、 規程の重要事項を分析しながら説明していきます。

第4章では、 退職金支払の為の原資の積み立てをする為に、 如何なる手段があるのかということを主な退職金積立制度 (手段) を解説することによりみていきます。

第5章では、 具体的に 「適年」 を他の積み立て制度に移行する為の作業行程を解説していきます。 これは、 「適年」 の他制度移行又は解約を伴う中小企業の退職金制度改革の各行程を全てオープンにしたもので、 これにより誰にも頼ることなく企業がリードしながら退職金制度改革を推し進めることができるようになっています。

最後に第6章においては、 退職金制度改革時の税制の取扱いについて説明します。

第1章から4章までにおいて退職金制度の知識などをしっかりと把握していただき、 その上で第6章の税制の取扱いに注意を払いながら、 第5章の各行程に従って具体的に退職金制度改革に取り組まれれば、 必ずや 21 世紀に向かって企業からも従業員からも歓迎される新しい退職金制度が構築されるものと確信しております。