発刊にあたって
国際会計基準の導入と企業年金法の改正を契機に,退職金・企業年金制度の見直しを行う企業が相次ぎました。また,企業年金法の改正後においても,制度再編の過程で生じた労使のさまざま要望に応えて,引き続きいくっかの法改正が行われました。たとえば,確定拠出年金の掛け金の増額,中途引出し要件の緩和,厚生年金基金と確定給付企業年金との間や確定給付年金への資産移換などポータビリティーの拡充などです。加えて2006年4月1日からは,65歳までの継続雇用を企業の法的義務とする「改正高年齢者雇用安定法」が施行されますし,さらに,「2007年問題」ともいわれる団塊の世代の定年退職を直前に控えて,企業の高齢者雇用政策は大きな転換期を迎えています。
本書は,弊所の定期刊行誌のご愛読者のみなさまからよせられた,65歳現役時代を迎えた現在,"退職金・年金制度をどのように改革すべきか""永年,技術・ノウハウを蓄積してきた高年齢者をどのように活用すべきか""老後保障と企業経営の両立を図る途は"といった声に応えることを企図して発刊するものです。
本書の構成は,第1部「退職金・企業年金」と第2部「高齢者雇用と人事管理」の2部構成です。
第1部では,退職金・企業年金の現状と方向性について,第1章・解説,第2章・Q&A,第3章・最新データ,第4章・裁判例によって構成しています。
第1章は,退職金・企業年金の実務解説です。いま,企業の退職金・年金制度は,国際会計基準の導入や運用環境の悪化など,制度の本質とはかけ離れた要因に引きずられる形で制度再編を迫られている感があります。そこで,まず,@65歳現役時代にふさわしい老後生活の安定・年金権の確立などの本来的な視点からの改革のポイントを解説しました。
また,十分な労使の話し合い・合意なしに性急な改革を行おうとして訴訟になった事例を始め,従業員の非行・背信行為等による退職や解雇と退職金債権の放棄・減額・不支給,あるいは住宅融資と退職金の相殺,さらに,経営不振に伴う企業年金の廃止・解散など,退職金・年金をめぐる労働裁判も少なくありません。そこで,A退職金・企業年金をめぐる法的基準も解説しました。
前述のように,年金法の改正後,多くの企業が企業年金制度の再構築に取り組みました。それは労使双方が知恵をしぼり,時代に合わせた魅力ある企業年金制度を具体化していく軌跡でもあります。そこで,B年金改革に取り組んだ先駆的な企業事例を紹介しました。
また,第2章では,弊所によせられた退職金・企業年金に関するさまざまなご質問を,実務・法律・税務の3項目・50問に整理し,Q&Aの形で分かりやすく解説しました。
第3章では,退職金・年金の最新実態調査を掲載しました。弊所では,隔年で「モデル退職金・企業年金制度調査」を実施していますが,その2005年の調査結果をとりまとめたものです。
集計結果のみならず,企業別のモデル退職金・退職金制度の実態も掲載しています。各社の退職金水準や制度見直しのご参考となると思います。
第4章では,退職金・企業年金に関する最高裁判例と主要判例の要旨をまとめて紹介しました。「事件の概要」と一審から最高裁までのr判断要旨」をコンパクトにまとめています。あわせて,「労働判例」誌に掲載した1995年から2005年の退職金・年金関係の判例インデックスを掲載しました。主要争点も記載してあります(必要な判例にっいては,「FAXサービス」にて対応させていただきます。お問合わせは,電話03一(3237)1628へ)。
本書の第2部は,改正高年齢者雇用安定法の施行と人事管理のあり方にっいて,第1章・解説,第2章・最新データ,第3章・Q&Aで構成しています。
第1章は,65歳現役時代の人事管理のあり方を取り上げました。公的年金の受給開始年齢と定年年齢の空白を埋めることを主目的として改正された高齢法ですが,"定年廃止・定年延長・継続雇用の3つの雇用確保措置のうちどれを選択するべきか""それぞれのメリットとデメリットとは",経営戦略上の位置づけから高齢者の雇用確保のために有効な人事管理のポイントが
解説されています。
第2章は,定年後継続雇用者の賃金・処遇に関する最新調査結果を紹介しました。継続雇用者の賃金水準のほか,勤務形態,公的給付金の受給関係,改正法への対応,賞与・一時金などの各種の実態を調査しました。
第3章はQ&Aです。改正法に関連する法律問題と人事管理に関する問題を20問に整理して,やさしく解説しました。
2007年から団塊の世代の定年退職が始まります。裕福な退職者が新たな需要を創出するとして,これをビジネスチャンスであると歓迎する向きもありますが,他方で,長引く不況のなかでの採用の抑制とリストラの影響で,技術・ノウハウの継承不全や熟練労働力不足の問題が危惧されています。
そのもっとも効果的な解決策は,「団塊の世代」にアクティブに活動してもらうこと=団塊の世代の活用です。改正法への対応などといった消極的対応にとどまらず,元気な高齢者を積極的に活用することが肝要です。高齢者を地域に送り出し,地域社会の活性化を促すことも重要でしょうが,高齢者を企業の財産として確保し,現役で活躍してもらうという選択肢もあります。収入の多寡や地位を離れ,仕事を通じて生き甲斐を実現する高齢者に学ぶものは,決して少なくないはずです。
本書は,単に退職金・年金制度の見直しや高齢法対応のための書ではなく,"65歳現役時代から生涯現役時代へ"の端緒となることを願って編集しました。
なお,最後に年末年始のお忙しい時期にもかかわらず,執筆を賜りました執筆者各位,ならびに貴重なご意見をお寄せいただきましたご愛読者のみなさまに,この場を借りて御礼申し上げます。
2006年2月
編者
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