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経営書院
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<目次>

改訂3版 人事考課実践テキスト

楠田 丘・監修 斎藤清一・著
四六判・280頁・定価 1,575円(税込)
ISBN 4-87913-718-9 C2034

監修のことば

能力主義人事を整備していくには、人事考課制度の成否が鍵を握る。
そこで今、各社では、評価制度の整備、充実に力を入れている。それは、一つは、人事考課制度の見直しであり、他の一つは、生涯ベースの育成型アセスメント(意思、適性、能力を総合的にとらえる人材評価制度)の導入、定着である。とくに、人事考課については、従来のマル秘の査定型減点主義相対考課をやめて、オープンの育成型加点主義の絶対考課に転換していくことが強く求められている。
ところで人事考課システムは人事事務当局が作るとしても、その運用(目標設定と達成度評価)は現場の上司が直接の担当者となる。したがって、現場の上司が人事考課制度の仕組みを完全に理解し、正しい前向きの姿勢と認識をもって評価、育成に当たることが、人事考課成立の絶対の要件となる。
また、加点主義人事考課は、上司と部下との間の目標面接によるチャレンジ目標の設定と確認がポイントとなるだけに、目標面接が重要であり、また、人事考課を育成に結びつけるには、人事考課が終わったあとの育成面接(フィードバック)がポイントとなる。
しかし人事考課の正しい理解や目標面接、育成面接の有効な運用は決して易しいことではない。とくに今の上司は、古い型の人事考課(一方的な査定型の相対考課)の中で育ち慣れ親しんできただけに、意識を変えることは決して簡単ではない。
そこで現場上司を対象として考課者訓練、面接訓練の徹底反復実施が不可欠だが、それは、知識の修得とケースによる模擬考課演習と面接演習、そしてグループ討議の3つによって実施される。
そこで本書は、部下を持つ現場の上司が、人事考課全体を確実に理解する上で、十分に役立ち得る参考資料を提供することをねらいとして企画、執筆、監修が行われた。
すなわち、第1編で人事考課、第2編で面接を取り上げる形で本書は構成され、まず第1編では、1、2、3、5、6で人事考課の仕組みを体系的に詳細に解説したあと、4、7、8で評価を公正に進める上でのポイントを述べている。
ついで第2編で、面接訓練の実際の詳細を述べている。
人事考課、面接訓練に関する文献はこれまで数多く刊行されているが、きわめて平易に、相互に関連させながら、要点を押さえて、現場上司がすんなり理解できるように企画、執筆された書物は少ない。人事考課、面接制度を導入し、とくに運用の面の整備、強化をはかりたいとする労使に真に有用な書であると思う。
企画、監修は私が当たり、執筆は、この面で経験豊かで現場の事情に精通している斎藤清一氏が当たった。本書が、人事考課、面接制度の定着に大いに活用されることを期待してやまない。

楠田丘

まえがき

最近、人事考課の考え方やあり方は、大きく変化しています。それは、良い人と悪い人と差をつけていく「査定型」の人事考課から差をなくしていく「育成型」の人事考課へと大きな転換が図られているのです。かつての上からの一方通行だった人事考課に本人の自己評価をメインとして、社員一人ひとりの意思を反映させ、納得性と客観性のある制度へと見直しや改善作業が進められています。
その作業の中で、最も大切なポイントは、考課基準をまず絶対考課を基本にした「加点主義」の人事考課に切り替えることです。
リスクのある難しい仕事を遂行したときにはプラス1点を加え、結果がB(普通)評価であれば、A(優れている)評価に、Aであれば、チャレンジ加点をして、Sにする考え方です。すなわち、リスクにもめげずに努力をしたとき、その努力を認めようというものです。
また、人事考課の目的を考えるとき、社員にとっては「働きがい」「生きがい」に、企業にとっては生産性向上に結びつくものでなければなりません。併せて上司である管理者の管理能力の向上に結びつくものであること等々が今日の新しい人事考課の考え方です。
そのためには、「基準」を明確にすることが人事考課の出発点です。従来の賞与、昇給のための人事考課から、能力開発や昇格、昇進など、適材適所配置、人材の活用などに主たるねらいを置いた考課へと変わってきているわけです。これらの目的を遂行するためには、次に上げるいくつかの重要ポイントを理解する必要があります。
その第1のポイントは、面接制度を導入することです。上司から与えられた目標は、ノルマになります。ですから、目標は本人自身が立てて、しかも、その達成度について自分で評価をします。
自分で目標を立てるから責任も重くなるわけで、目標設定や評価時に上司と面接を重ね、目標の遂行状況やその達成度、原因分析を中心にして、今後の事態改善やOJTを徹底的に推進し、能力開発や人材育成に確実に結びつけることが大切なのです。
第2のポイントは、人事考課を人間関係の醸成のツール(道具)として使うという点です。目標面接時の上司と部下の原因分析を中心とした徹底した話し合い、中間面接によるフォローおよび、きめの細かい結果(育成)面接を通じて、上司と部下の信頼関係は一層深いものとなります。優れている点はほめ、悪い点は叱る。人事考課の結果から部下にフィードバックを行い、良い点は更なる発展を期待し、悪い点は上司の今一層の指導、援助、協力体制を常にし、事態改善に結びつくように、人事考課の結果からほめて、ほめて、しかって、しかって、ほめるわけです。
第3点は、減点主義から加点主義への転換です。「新しいことに挑戦して失敗した人より、何もしない人が評価されるのは納得がいかない」とする考え方が大勢を占めつつあります。特に大企業病などといわれる会社では“過去の前例を大切にする”考え方がありますが、過去の前例を良しとすれば、人事考課は必然的に減点主義になるわけです。前例にない失敗は厳しく罰せられることになります。
ところがイノベーションとは、すべて前例にないことを行うことであり、イノベーションは加点主義人事制度の上にしか成り立たないといえます。「挑戦加点」という革新加点は、企業の新しいシナリオを作り出すロマンを包含しているのです。すなわち、この新しい人事考課の考え方には、社員一人ひとりのやる気を喚起するのも、狙いの1つとしてあるのです。
今まで、新しい人事考課のあり方、考え方について、そのポイントを触れてきました。さて、本書では、「第1編 人事考課理論と実際」「第2編 面接制度理論と実際」から構成しました。
既述のとおり、加点主義の人事考課理論等を解説するとともに実務に即、活用できるよう「管理監督者対象のテキスト」として編集しました。人事考課を適正につけられなければ、管理者にはなれません。また、人事考課制度は、面接制度を核にして成立しますが、この面接制度を通じて管理者も部下も成長することを十分認識してください。
本書の特徴は、人事考課のつけ方、目標のつくり方、評価の仕方、考課結果のフィードバックの仕方、面接をうまく行うポイントなど、人事考課、面接制度のノウハウを多岐に亘り盛り込むよう努めました。
なお、本書の理論構成は、人事、賃金の大家である恩師・楠田丘先生の理論をベースに筆者のコンサル活動から得た実務を付加してまとめたものです。
本書の成るにあたっては、このたびも、楠田丘先生に監修をお願いいたしました。

斎藤清一

追記:本書は1993年11月に刊行した『入門考課者訓練面接訓練実践テキスト』を大幅に加筆し、改題したものである