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監修のことば
21世紀に入ったいま、日本の経営は厳しい人材戦略の構築を求められています。
それは経営を取り巻く環境がつぎの2点で根本的に変革をしているからです。一つは、高齢化、国際化、低成長化、IT化、価値観の多様化などであり、他の一つは労働市場が需要と供給が逆転する中、100年間続いた売り手市場から買い手市場へと転換した点です。これを受けていま日本の人事・賃金は人間基準の労働力対価論(年功主義や能力主義)から仕事基準の労働対価論(役割や業績を重んずる成果主義)へと転換を遂げつつあります。人間基準の能力主義には年々の成長に応じた定昇があり降給(あと戻り)という概念はありませんが、成果主義には定昇も無く賃金は毎年リ
セットされ上げ下げ自由です。そこでいま労働分配率が上り過ぎ国際競争力を失ないつつある日本の企業にとって労働対価論としての成果主義は望ましいシステムとして強い関心が寄せられています。そこで90年代の終り頃から日本の人事は能力主義から成果主義への転換が進みはじめていま
す。
しかし乍らここで最も大切なのは、能力主義を廃止して成果主義に100%転換してしまっては明日の日本の経営活力は失なわれるという点です。樹木に例えるなら根や幹は能力主義であり、枝や花や実は成果主義に相当します。能力主義を捨てては、今日の実りはあっても明日、明後日の実りはも早あり得ません。
そこで成果主義を導入するとしても(それは絶対必要なことですが)“日本型成果主義”をとり入れていくことが大切です。すなわち、イ)人間基準の能力主義を出発点とすること、ロ)人材の最適活用をはかるため実力主義、加点主義を整備すること、ハ)納得のいく成果指標を処遇に公正に結びつけること、二)情報を労使で共有化すること、の諸点を守る事です。今後、日本経済すなわち各企業が存続していくには、企画力、開発力、創造力、挑戦力が強く求められますが、それにそった人材育成を根底においた人材戦略がすべてのベースとなります。それは、大企業、中堅企業、中小企業のいずれについても全く同じです。
しかし乍ら今日、ともすると人事・賃金に関する参考文献資料は理論中心でいささか難解、又は事例中心でその位置づけが理解しにくく、いざ自社に導入するとなると迷うことが多く、経験豊かな専門家が少ない中堅・中小企業ではとまどうことが多いのが実情のように思われます。もっと中堅・中小企業の人員・賃金制度の改善実務にすぐ役立つ分り易い文献資料が欲しいという声が周囲に多くあります。このような要請を受けて書かれたのが本書です。
わかり易くする為には、一定の体系理論の上に図解や事例が豊富であることが条件で、執筆にも豊富な解説と判断、推理、提案力が求められます。
このような情況の中で、周到な構想の下に著作されたのが本書です。著者はこの社会的要請に最適な実務ベテランで、理論的構成性、実務的記述性、納得的整合性で第一人者の真崎龍次氏で、同氏は日本賃金研究センターで小生と永年、手を携えて研究・実践の両面で活動を共にしてきた、この道でのすぐれた学究・同志者です。
図解、事例をふんだんにとり入れコンパクトかつ平易に記述することに努めた為、この一冊で能力主義・成果主義さらに退職金制度までのすべてを、職能システム、職務調査、面接制度、評価制度、賃金制度(年齢給、職能給、役割給、業績給、年俸制)の詳細を学ぶことができます。
人事担当者のみでなくトップ・管理職・労組幹部の方々が熟読されることによって、自社の経営戦略にそっての人材戦略の方向で人事、賃金制度を設計、運用することが可能となります。
本書が、多くの労使、関係者によって広く活用され、日本の中堅・中小企業の人事、賃金制度の近代化に大いに貢献できることを心から願い期待して監修のことばと致します。
平成14年6月吉日 楠田 丘
はじめに
ここに来て、21世紀におけるこれからの経済社会と経営環境の様相がある程度までに鮮明化してきた。
前者は国際化、IT革命、構造改革、低成長そして少子高令化であり、長勤続化、能力と実力と仕事のミスマッチ(知的頭脳労働化)、女子労働の戦力化、競争の激化が後者である。
このように企業を取巻く内外の環境が激しく変化すれば、経営機能の1つである人事・賃金も相当に影響を受け、その結果あるべき方向へと変容してゆかざるを得ない。企業経営にとって最大の資源は「人材」である。この人材戦略のあり方をどの方向へと舵を取るべきか、そこが重要である。内外の環境変化を読み取り、これからの時代に適合する人事政策や方針を明確に打ち出し、組織と人材の活性化、活力強化を図ってゆかなくてはならない。
そこで、この著書では主に中堅と中小企業クラスを対象として、これからの人事戦略の方向性とそれを確実に具現化できる人事・賃金の諸制度について「図解、図表、事例」を多用し「目で見て読み取れる」形式をとって解説し論述してある。その具体的内容はここで説明するより、次にある<目次>を開けてもらえれば一目瞭然である。全体をまとめれば、書題のとおり「能力主義の強化と成果主義の導入」となる。
自社の重点戦略や方針を始め、現行制度を総点検した上で、新人事・賃金制度への改定や再構築に本書を役立てていただきたい。そのための手引書、参考書として活用されるならば著者にとってこの上ない喜びである。
なお、この本は楠田理論をベースに、著者の考えや、経験を加えてまとめたものである。引き続き、恩師の楠田先生に監修をお願いした。
平成14年6月 真崎龍次
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