常時50人以上の労働者を使用する事業場では、医師のうちから一定の資格を有する産業医を選任し、労働者の健康管理その他厚生労働省令で定める事項を行わせなければなりません(労働安全衛生法以下、安衛法13条1項、同法施行令5条)。この場合に「事業場」というのは、株式会社その他法人等の事業全体をいうのではなく、工場であるとか支店であるとかいう、独立して事業が行われている場所ごとに一つの事業場として考えます。
したがって、常時50人以上という人数の計算は、企業全体ではなく、工場や支店ごとに行うことになります。
厚生労働省の通達では、「工場、鉱山、事務所、店舗等のごとく一定の場所において相関連する組織のもとに継続的に行なわれる作業の一体をいう」(昭和47.9.18発基91号)と説明しています。もっとも、現場事務所もないような建設現場は、直近の上位機構に一括して一つの事業場とされます(昭63.9.16基発601号の2)。
次に、産業医として選任することができる資格はどうなっているでしょうか。ずっと以前には、とにかく医師であればよいという時代もありました。しかし、現在では、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識について、厚生労働省令で定める要件を備えた者でなければならないとされています(安衛法13条2項)。
では、産業医が備えなければならない厚生労働省令で定める要件とは、どのような要件のことをいうのでしょうか。
この場合に厚生労働省令というのは、具体的には労働安全衛生規則(以下、安衛則)のことですが、その14条2項には必要な要件が以下のとおり列挙されてて、そのどれかに該当する医師には産業医の資格があるということです。
1. 労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識についての研修であって、厚生労働大臣が定めるものを修了した者
2. 医学の正規の課程であって、産業医の養成等を行うことを目的としているものを設置している産業医科大学その他の大学であって、厚生労働大臣が指定するものにおいて当該課程を修めて卒業した者であって、厚生労働大臣が定める実習を履修した者
3. 労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験の区分が保健衛生であるもの
4. 学校教育法による大学において、労働衛生に関する科目を担当する教授、助教授または常時勤務する講師の職にあるか、またはあった者
5. 前各号に掲げる者のほか、厚生労働大臣が定める者
資格要件がこのように厳しくなったのは、産業の進歩につれてその職務内容も複雑化してきたためでしょう。
その具体的な職務内容は、安衛則14条1項に以下のとおり列挙されています。
1. 健康診断および安衛法66条の8第1項に規定する面接指導および安衛法66条の9に規定する必要な措置の実施並びにこれらの結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。
2. 作業環境の維持管理に関すること。
3. 作業の管理に関すること。
4. 以上の1、2、3に掲げるもののほか、労働者の健康管理に関すること。
5. 健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること。
6. 衛生教育に関すること。
7. 労働者の健康障害の原因の調査および再発防止のための措置に関すること。
以上の事項について、産業医は、総括安全衛生管理者(安衛法10条1項)に対して勧告し、衛生管理者(同12条1項)に対して指導や助言をすることができます(安衛則14条3項)。
そのようなこともあって、産業医は、少なくとも毎月1回作業場等を巡視し、作業方法や衛生状態に有害の恐れがあることを発見したときには、直ちに労働者の健康障害を防止するための必要な措置を講じなければなりません(安衛則15条1項)。そのため、会社側としては、産業医に必要な権限を与えなければなりません(同条2項)。
産業医は以上のように重要な職務を行うので、その資格の有無の確認が重要です。そこで通達は、「事業者が、その確認を行う方法としては、研修の修了を証明する書面、労働安全衛生コンサルタント試験(保健衛生)合格証又は大学の在職証明書(担当科目等を明示したもの)等の写しを提出させること等によって行うこととすること。」(平8.9.13基発566号)と、説明しています。 |