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賃金事情 統計用語の基礎知識
統計用語の基礎知識(1) データの季節性と季節調整値

今月は、月々支払われる賃金の動向を例にとりあげ、データをみる際に不可欠の指標である季節調整(値)について簡単に解説しましょう。

月々の賃金額はいろいろな要因で変化します。所定内給与、所定外給与(超過勤務手当など)、特別給与(賞与など)のそれぞれについて考えてみましょう。
1.所定内給与については、純然たる月給制による場合は、前号まで取り上げた賃金改定などがない限り毎月ほぼ同額が支給されると考えてよいでしょう。しかし一方、たとえば運輸業や保険業などで多くみられるように、出来高によって所定内給与が変動することもあります。また、家族手当や住宅手当などの支給要件に関連する従業員の属性が変化すると所定内給与額は変化するでしょう。
2.所定外給与は、何といっても超過勤務時間の変動とともに、当然支給額も変化します。
すなわち所定内・所定外とも業務量の変化に応じて支給される給与が変化する面を持っているといえます。
3.もう1つの特別給与は、大半がいわゆるボーナスですが、これは支給月かどうかで支給額が大きく変化します。ボーナスの支給月の多くは、夏季が6〜7月、冬季が12月にあると考えられます。
ボーナスの支給月はもとよりですが、先にみた所定内・所定外給与を変化させる1つの要因である業務量の変動も一定の季節性(年周期性)を持っているといえます。たとえば業界によって、夏季が忙しいところもあれば冬季が忙しいところもあります。また、各月における日数や曜日・祝日の状況の違いから稼働日数に違いが生じるのもある意味で季節性といってもよいでしょう。さらには、賃金でいえば年に一度(春季が中心)見直しがあるということも1つの季節性です。

したがって、賃金についてそのままのデータ(原数値)で今月と前月とを比べること(前月比をみること)はあまり意味がないことになります。図は、賃金動向をみるうえで最も基本的な統計である厚生労働省「毎月勤労統計調査」による現金給与総額の推移をみたものです。実線が実額のグラフです。たとえば、今年(2007年)4月には279,395円だったものが5月には275,148円になっていますが、これをもって賃金は低下したといってよいとは限りません。なぜなら、5月はゴールデン・ウィークがあるので稼働日が相対的に少なくなることもあって例年実額でみた現金給与総額は4月より減少する傾向にあるからです。図をみても、ボーナス月を始めとして、実額の賃金は1年ごとの周期性(季節性)をもった動きをしていることがみてとれると思います。
このため、統計的にこの季節性を除去して前月比でみても意味のある比較ができるようにしたものが季節調整値です。「毎月勤労統計調査」の場合は、実額の系列をある基準年(現在は2005年)の値を100とする指数に変換してから、季節調整が施され、同じく指数として公表されています。

図 現金給与総額の推移(実額、 指数、 季節調整値)

季節調整の方法には、いろいろなものが開発されていますが、現在わが国で一般的に使用されているのは、米国のセンサス局において開発された「センサス局法」と呼ばれるものです。基本は年周期を均すことですから、現数値を12カ月移動平均したもの(注)がベースになっています。こうして算出された結果が季節的変動を除去した数値、すなわち季節調整値です。この季節調整値は、賃金、労働時間といった「毎月勤労統計調査」のデータだけではなく、雇用や失業率を始め経済社会的な各種統計では大いに活躍しています。
とはいえ、最近の賃金は季節調整値でみてほぼ同水準で推移しており、せっかくの季節調整の作業も虚しく感じられるくらいです。
(注)たとえば5月であれば、「前年10月〜本年9月の平均」と「前年11月〜本年10月の平均」とを平均したものになります。
(労働政策研究・研修機構 主席統括研究員 浅尾裕)

賃金事情 2007年9月20日号掲載
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