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賃金事情 News & Report
連合非正規労働センターを設置 非正規雇用対策に取り組む労働組合の動きを追う

ワーキングプア(働く貧困層)の増加など、いわゆる格差問題の温床ともいわれる契約、パート、アルバイト、派遣などの非正規労働者の処遇改善が叫ばれるなか、労働組合も組織化を含めた待遇改善に乗り出している。連合は、非正規雇用問題への取組みを2008年春闘の運動方針の柱とする予定だ。非正規労働者の賃金の底上げを図る一方、法制面でも、労働者派遣制度における一般業務の登録型派遣の禁止を打ち出している。非正規雇用対策に取り組む労働組合の動きを追った。

 非正規社員の組織化に取り組み始めた労働組合の動き

景気回復を受けて正規社員の採用が増加しつつあるとはいえ、決して非正規社員数が減少しているわけではない。直近の総務省「労働力調査詳細結果(速報)」(2007年4〜6月)では、正規社員は3,483万人と前年同期に比べ29万人増加しているが、一方、非正規社員も1,731万人で前年同期比84万人も増加している。非正規社員比率も0.9%増の33.2%に達している。
1997年以降、正規社員の減少と並行して増え続けた非正規社員は、一向に減る気配はない。当初は経営難を乗り切るための「雇用の調整弁」とみられていたが、今や非正規社員は、経済のグローバル化や産業構造・経営環境の変化に対応する企業の雇用システムに構造的に組み込まれた存在になっている。
これまで、正規社員中心の企業別組合である労働組合も非正規問題に積極的に関与することはなかったが、近年は非正規社員の組織化に乗り出す労組が増えている。その背景には、非正規社員の増大に伴う組織の影響力の低下に対する危機感がある。
とりわけ従業員の半数以上を非正規社員が占める職場では、労働協約の締結等において職場を代表することもできなくなる。
加えて、処遇面でも、同じ仕事をしながら非正規社員の賃金が正規社員の6割という格差も無視できなくなってきたという事情もある。百貨店・流通業の労組を中心に、パート社員の組合員加入を積極的に推進し、正規社員との均等処遇の実現に向けた取組みも始まっている。

 「非正規労働センター」を立ち上げた連合 今後、全国的な活動を展開
連合も、パート共闘を掲げて、2006年から15産別が結集し、春闘を通じた賃金の底上げに取り組んでいるが、さらに非正規社員対策を強化するために、10月15日、本部内に「非正規労働センター」を立ち上げ、今後本格的な活動を展開することにしている。
センターを統括する龍井葉二・総合局長は、センターの役割についてこう語る。
「1つは、各労働組合にパート共闘を呼びかけると同時に、企業内の非正規社員の組織化を確実に推進していくこと。もう1つは、組合に入っていないパート、派遣、アルバイトなどの圧倒的多数の非正規社員にどうやってアピールしていくかというのが大きな仕事だ。
最近は若者たちで組合をつくる動きが出ているが、皆が集まって組合をつくり、あるいは一人でも入れる組合があることを積極的にアピールしていきたい。実際は、ほとんどの人が孤立した状態に置かれている場合が多い。その人たちにできるだけ知ってもらうために労働相談活動を強化するとともに、ネットや携帯電話を通じてアクセスできるサイトの構築も進めながら、全国的な活動を展開していきたいと考えている」非正規社員は、前述したように1,700万人存在する。
このうち組合に加入している人はわずか数十万人にすぎない。孤立した大多数の非正規社員を組織化するのは容易ではない。たとえば、派遣労働者にしても登録型派遣の場合、複数の派遣会社に登録し、派遣先との契約しだいで派遣元を渡り歩く人が多い。アルバイトも同様だ。仮に組合をつくっても人の入れ替わりが激しくならざるをえない。組合組織のあり方も大きな課題である。
「どういうメンバーシップにしていくかも考えていく必要がある。構成員がどういうニーズを持ち、どういう集まり方がいいのか。簡単に知恵は出ないが、皆で一緒になって考えていこうというスタンスであり、新たにチャレンジしていきたい」(龍井総合局長)
 派遣・請負労働者の組織化に取り組む電機連合

電機連合も今年7月の大会で非正規社員の組織化を決定した。組織化の対象を有期契約・パートタイム労働者などの直接雇用者と、派遣・業務請負労働者の間接雇用の2種類に分けている。
直接雇用の組織化については、当面はフルタイム型のパートおよび有期契約社員が対象となるが、短時間勤務者でも1年以上勤続している人は対象とする。組織化の形態としては、非正規社員だけの労働組合を結成するのではなく、正規社員と同一の組合に加盟することにしている。組合加入にあたって納める産別会費については、負担を軽減するために通常の組合員の半額とし、残りの半額を産別が助成金として交付することにしている(2008年度から)。
派遣および業務請負労働者については、同一企業グループ内、つまり企業の関連会社として派遣会社もしくは業務請負会社を抱えている場合の労働者を対象に組織化する。派遣労働者の場合は対象を常用型派遣労働者とするが、登録型も含めるかどうかは各組合に一任する。業務請負労働者についても、対象を期間の定めのない雇用契約労働者、つまり請負会社の正規社員とするが、契約などの非正規社員について加入させるかどうかは各組合に一任することにしている。
組織化にあたっては、関連会社に派遣・請負会社がある場合は中核企業労組が推進し、全国規模の派遣会社および請負会社の組織化は電機連合本体がアプローチすることになっている。
こうした非正規社員の組織化も重要であるが、非正規社員の雇用形態ごとの全体的な処遇改善の取組みも不可欠である。パート労働者については、先に改正パート労働法が成立し、来年4月から施行される。対象要件は限定されたものの、パート労働者に対する差別的取扱いの禁止が盛り込まれる一方、賃金、教育訓練、福利厚生面での均衡処遇を図る努力義務を規定した。
連合は、施行を前に、改正法に基づく職場点検を含む周知徹底を図っていく方針だ。
「改正法は中身が非常に限定されていて不満であるが、差別禁止規定が入ったこともあり、これも含めて省令・通達などを使って均等待遇の実現に向けて活動を展開したい。春闘の前段から法改正の趣旨に基づいた職場点検活動を展開し、パート共闘3年目の課題と併せて大きな取組みとして推進していく予定だ」(龍井総合局長)

 動き出した労働者派遣法見直し、連合は登録型派遣の禁止を主張
派遣労働者問題については、現在、厚労省の審議会において来年の通常国会への提出に向けた法改正の議論が行われている。連合は、労働者派遣法の見直しを前提に9月13日に中央執行委員会を開催。その際の確認事項として、現行制度を1999年の改正前に戻して見直すべきとしてその理由をこう述べている。
『労働者派遣制度は、制度創設時はその対象業務は専門的な業務に限定されていた。しかし、99年改正でのネガティブリスト化により原則自由化され、2003年改正では物の製造業務も対象となった。こうした規制の緩和は、平成不況下のリストラと相まって、非正規雇用の拡大、雇用の二極化をもたらしている。また、現行法では特定派遣は届出制、一般派遣は許可制との違いはあるが、これ以外には常用型派遣と登録型派遣を区分けした法規制はなされていない。しかし、雇用の安定、能力開発、社会保険の加入等の面で登録型派遣で多く問題が生じている。これらの状況を踏まえ、労働者派遣制度の枠組みを見直す必要がある』
では、具体的にどうすべきなのか。連合は派遣制度のあるべき方向として、1985年の創設当時の専門的な業務に限定したポジティブリスト方式とし、登録型ではなく、常用型派遣を基本とした制度とするとしている。そして、当面の対応として、ファイリングなどの一般業務については登録型派遣を禁止。専門26業務については、今日的に見て高度な専門的な業務か否かという観点から見直しを行うとしている。同時に、一般労働者派遣事業(登録型派遣)の許可要件の厳格化等を行うとしている(参考)。
まさに、1985年の創設当時の制度に戻し、現行制度を大幅に見直す大胆な提案である。経済財政諮問会議など規制改革派が提案する、派遣期間の撤廃、業務制限の禁止、雇用申込み義務の撤廃などの提案と真っ向から対立する内容である。
実は、1999年改正では、連合自身、派遣職種の拡大などを認めてきた経緯がある。大幅見直しについては「85年にできた職種がどんどん広がったことにより、雇用の安定を含めて矛盾も拡大した。そのことに対する連合としての若干の反省に立って見直そう」(龍井総合局長)というのも理由の1つだ。
「やはり雇用関係は、例外的なものでない限り、雇用期間の定めのないものというのが原則だ。職安法44条の原則に照らしても直接雇用が原則であり、有期雇用というのはそれなりの合理的な理由が必要という原則に立ち戻って議論するべきだと考えている」(龍井総合局長)
もちろん、派遣制度自体を否定しているわけではない。登録型派遣についても、合理的理由が成立する職種・仕事であるかどうかを議論するべきと指摘する。
「本来、中身と期間について合理的説明ができる仕事に限定すべきだろう。たとえば、通訳やSEのように専門性を持ち、なおかつマーケットが存在し、相手と対等に交渉できる立場にあれば、むしろ派遣はあってしかるべきだし、ふさわしい場合もある。もともと派遣法は、当時職安法違反がはびこったために、法律によって認めることで取り締まろうということでスタートした。しかし、結果的にはいたずらに職種を広げてしまった。もう一度原則に戻って洗い直す作業が必要だろう」(龍井総合局長)
正規社員になりたくても不安定な身分に甘んじている派遣労働者も少なくない。派遣法改正において連合がどこまで所信を貫けるのか注目したいところだ。
 請負労働者の雇用管理改善に向けて厚生労働省がガイドラインを作成
連合の非正規労働センターが対象とする非正規社員には、請負労働者は含まれていない。基本的には請負事業者と雇用関係にある正規社員というのがその理由だ。しかし、請負労働者も、90年代後半以降の経営環境の変化に伴い、正規社員に代わる安い労働力として使われている点では他の非正規社員と変わらない。
労働者派遣法違反の偽装請負問題で請負労働者の実態が社会にも知られるようになったが、厚労省の調査によるとその数は約87万人。年齢は40歳以下が全体の3分の2を占め、20代が約4割。性別は男性が7割を占める。業務は組立・加工業務などの「単純工」がもっとも多く、時間給は1,000〜1,300円。月額にして残業代や深夜割増を加えても20万円程度にしかならない。厚生労働省の調査では、勤続5年未満の製造業全体の労働者の年収は500万円だが、請負労働者は約270万円。300万円以上の開きがある。さらに、業務自体が軽作業であるためにスキルアップが望めず、転職が困難という現実もある。
厚生労働省は2006年10月に、職業安定局長の下で請負事業の適正化と処遇など雇用管理の改善を目的とする研究会を発足。今年6月に報告書が提出された。そして、報告書に基づいて雇用管理の改善と事業の適正化に関する請負・発注事業者が講ずべきガイドラインおよびチェックシートを作成。都道府県労働局を通じて事業主に対する周知活動を展開している。
雇用管理の改善については「事業主の主体的取組みを前提に、将来の見通しが立てられるようなキャリアパスの明示や技能向上などの能力開発、技術・技能に応じた適正な処遇を行ってほしい」(厚労省職業安定局需給調整事業課)というのが趣旨である。ガイドラインは規制の対象ではなく、事業主・発注者の主体的な取組みを促すためのものだ。
また、9月には、請負事業主団体と製造業団体、それに学識経験者で構成する「製造業請負事業改善推進協議会」を設立。10月から厚労省の委託事業として協議会主催の請負事業者と発注者を対象とするセミナーを全国各地で開催している。
一方、多くの請負労働者が従事する電機産業の産別組織である電機連合は、2004年以来、職場点検シートと点検マニュアルを作成し、請負事業の適正化に向けた活動を展開している。さらに、請負会社の選択基準を労使協議の場で話し合うことを可能にするために、労働協約の労使協議の付議事項に盛り込む活動も展開している。


非正規社員の問題を解決するためには、数多くの課題がある。処遇の改善にしても、現在の日本企業が置かれた経済・経営環境と密接に結びついており、決して容易ではない。連合も労働相談活動を展開しているが、「以前から非正規社員をめぐるトラブルは多かったが、それでもなんとかがまんすれば次の仕事がみつかる、あるいは正社員として雇用されることもあった。
しかし今は、10年後に正社員になれるという楽観的な予想がまったくできないほど構造が固定化され、二極化が進んでいる。事態は相当に深刻」(龍井総合局長)という認識を持っている。
政府の取組みもさることながら、労働現場の実態を知る労働組合の役割は決して小さくない。
 〈参考〉労働者派遣法見直しに関する連合の考え方
(連合第25回中央執行委員会確認・2007年9月13日)
「労働者派遣法見直しに関する連合の考え方」は、次の4つで構成されている。
1. はじめに
2. 労働者派遣をめぐる現状と問題点
3. 労働者派遣法見直しの視点
4. 具体的な項目に関する考え方
ここでは、12項目にわたる「4.具体的な項目に関する考え方」を抜粋して紹介する。

1.制度の枠組み
(1)あるべき方向
・1985年の創設当時の専門的な業務に限定したポジティブリスト方式とする。
・常用型派遣を基本とした制度とする。
(2)当面の対応
・一般業務については、登録型派遣を禁止する。
・専門26業務については、今日的に見て高度に専門的な業務か否かとの観点から見直しを行う。
・一般労働者派遣事業(登録型派遣)の許可要件の厳格化等を行う。

2.期間制限等
派遣先にとって労働者派遣(一般業務)は臨時的・一時的な労働力の需給調整制度であることを堅持し、派遣可能期間の上限は延長しない。また、期間の上限に加えて、労働者派遣の活用に関する事由を限定することも検討する。

3.直接雇用みなし規定の創設
(1)以下の場合について、派遣先の直接雇用とみなす規定を設ける。
1 無許可・無届出事業者から受け入れていた場合
2 許可基準を満たしていない事業者から受け入れていた場合
3 派遣先が特定行為を行い、当該派遣労働者を受け入れた場合
4 偽装請負の場合
5 禁止業務への派遣の場合
(2)一般業務における登録型派遣が禁止されるまでの間は、登録型派遣であって派遣可能期間を超えて受け入れていた場合は派遣先の直接雇用とみなす規定にする。
なお、(1)(2)いずれも、直接雇用後の雇用は期間の定めのない雇用とする。

4.派遣先責任の強化
労働基準法等の使用者責任については、派遣先が就労場所であることから、1 時間外労働に関する責任、2 労働安全衛生管理責任、3 労働災害の補償責任等について、派遣先・派遣元の重複規定とする。
また、社会・労働保険の加入については、派遣元が加入させているか否かを確認することを派遣先に義務づけるとともに、派遣元が社会保険料の納付義務を怠った場合には派遣先が補充責任として連帯債務を負うものとする。派遣元倒産時の未払い賃金については派遣先が賃金の立て替え払いすることを義務づける。

5.派遣労働者の均等・均衡待遇(略)

6.派遣先による特定行為の禁止(略)

7.日雇い派遣に対する規制
「日雇い派遣」「スポット派遣」については、建設業・警備業など禁止業務への派遣や、労働基準法第15条の労働条件の明示や労働者派遣法第34条の就業条件等の明示がなされていないケースも見られることから、実態を速やかに調査し、監督指導を強化して違法なケースを根絶する。短期間の派遣は職業紹介に整理することなども含めて引き続き検討する。

8.派遣先労働組合の関与と労使関係(略)

9.事後チェック機能と罰則の強化(略)

10.許可基準の厳格化など派遣元事業者に対する規制
労働者派遣事業の許可基準について、「専ら派遣」の定義の明確化、貸金業等との兼業禁止、雇用管理や教育訓練等の基準の引き上げ、派遣元責任者の要件の見直し、更新時の審査は実績を評価するなど厳格化する。また、有料職業紹介と労働者派遣事業との均衡が図られるよう、有料職業紹介事業に凖じて、契約単価と賃金の差(マージン)の上限規制を行う。

11.細切れ契約の防止(略)

12.紹介予定派遣制度の改善(略)
(ジャーナリスト 溝上憲文)

賃金事情 2007年11月20日号掲載
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