こうした例外規定はあるものの、今回の年齢制限の禁止により、法律が意図する高齢者や年長フリーターの採用の拡大に果たしてつながるのだろうか。これまでも、募集要項には年齢制限がないからということで実際に応募して面接に臨んでも、結果として一定の年齢層の人しか採用されていないという実態も指摘されている。面接のチャンスが広がったといっても、実質的に年齢を理由に採用されないとしたら求職者にとっても不安だろう。
これに対して厚生労働省は、「男女雇用機会均等法の採用における性別禁止と同様に、審議会でも年齢が見えなくなることでトラブルが生じざるをえないという指摘もあった。しかし、仮にそれが不可避ではあっても、結果として年齢にかかわらない社会に近づけることが必要だ」(雇用政策課)という見解である。
一方、企業側はどう見ているのか。大手建設会社の人事担当者は、「これまで中途採用の募集では、本人の職務経験やスキル・技能に加えて目安となる一定の年齢層を明示していたが、今後は年齢要件を外すなど気をつける必要があるにしても、現実には個々の人物をみて当社の職種にふさわしいかどうかを判断することになる。仮に年齢が高い人が応募するにしても、それなりの地位や収入がある人が多く、当社が提示している賃金面などの条件をみて合わないと考える人もいるだろう。結果的には、求める年齢層に落ち着くのではないか」と影響は小さいと語る。
ある職種において、一定の年齢層を補充しようとする場合、例外事由に該当しなくても、面接の結果「当社が求めるスキル・技能に合致しない」という理由で不採用とする裁量は企業側にある。また、前述したように、総合職として採用する場合は職務経験不問を条件に年齢制限をすることができる。しかし、総合職ではなく、業務が限定される職種を採用する企業にとっては、年齢制限の禁止は頭の痛い問題でもある。
「当社では、総合職以外に処遇が異なる特定の職務に限定した事務職を採用しているが、仕事に精通し、業務をこなすことができるようになるには3年程度の教育期間が必要になる。したがって、これまでは比較的若い年齢層に限定して募集していた。しかし、年齢制限が禁止されると年輩者の応募が増える可能性もある。仮に50代の方を採用し、教育に3〜4年かけても、その後何年働いてくれるのかどうかといった問題も出てくる。こちらの教育コストに見合う貢献度を考えると、年齢制限は厳しいなというのが正直な気持ちだ」(大手サービス業人事担当者)
募集・採用における年齢制限の禁止が、個々の企業に少なからず影響を与えることは否定できない。それを回避するために、短期的に自社に都合のよい人材の獲得のみを目指しても、いずれ人口減少による労働力不足が大きな問題となることは間違いない。すでに労働市場の需給関係も逼迫しつつある。今回の法律改正を契機として、中・長期的には高齢者を含めたあらゆる年齢層を受け入れる環境を整備することが企業に求められているのではないだろうか。(ジャーナリスト 溝上憲文)
賃金事情 2007年10月20日号掲載