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募集・採用時の年齢制限禁止へ 年齢制限が認められる例外事由は6つのみに限定

労働者の募集・採用時に年齢制限を設けることを原則禁止した改正雇用対策法が、10月1日から施行された。2001年の改正では、年齢制限の廃止は努力義務とされていたが、中高年や年長フリーターなどの就業機会を広げる趣旨で、改正法では「年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない」と義務化した。年齢制限の禁止は、ハローワークに出す求人票をはじめ、企業のホームページ上の募集、求人情報誌や民間職業紹介事業者にも適用される。企業の募集・採用活動に与える影響を探った。

 高年齢者や年長フリーター等に就職への門戸を開く

年齢制限の禁止といえば、欧米諸国における人権問題を基調とする年齢差別禁止の流れと軌を一にしているようにみえるが、日本の場合は、雇用対策の観点から、就業機会の拡大を最大の目的としている点に特徴がある。2001年に努力義務を課して以降、ハローワークでの求人数のうち「年齢不問」の割合は、それ以前の1.6%から2007年4月時点では50.8%と半数を超えている(厚生労働省調査)。
今回の義務化に至ったのは、「ハローワークベースでは一定の成果が上がったことに加えて、依然として高年齢者や年長フリーターなど年齢制限ゆえに就職の道を閉ざされている人もいる。こうした人たちに均等に面接の機会を与えることで門戸を広げたい」(厚生労働省職業安定局雇用政策課)という狙いがある。
しかし、現実問題として、年齢不問となれば、求人企業は求める職務に適合する人材であるかどうかを面接などで個々人の適性・能力などによって判断することになる。しかし、求める人材の要件など募集内容自体があいまいだと、求職者も果たして応募してもいのかどうか不安に駆られる。そのため施行規則では、募集・採用に際して「職務を遂行するために必要とされる労働者の適性、能力、経験、技能の程度その他の労働者が応募するに当たり求められる事項をできる限り明示する」と規定している。
もし求人の内容があいまいであれば、ハローワークを通じて資料の提出や説明を求められることもある。
年齢制限による募集や採用を行ったとしても法的罰則はないが、労働局から助言や文書の改善指導、それでも改善されない場合は勧告などの行政指導を受ける場合もある。さらに、ハローワークや職業紹介事業者から求人の受理を拒否される場合もある。

 これまでの例外規定も原則廃止、業務内容や能力要件を具体的に明示
ただし、すべてのケースについて一律に年齢制限を禁止しているわけではない。合理的な理由があり、かつ例外的に年齢制限が認められる例外事由について省令で規定している。例外事由は、前回の2001年改正時の指針でも認められていた。だが、今回の改正では、国会の付帯決議で最小限にとどめるように要求されたことを反映し、これまで認められていた例外規定を大幅に見直し、廃止している。
廃止された1つは、特定の年齢層を対象にした商品の販売やサービスの提供を行う業務に従事する人の年齢制限である。これは、顧客の年齢層に近い年齢の人のほうがビジネスとしてやりやすいことに配慮した措置である。
たとえば、「若者向けの洋服の販売職として、30歳以下の方を募集」といった求人票である。改正法ではこれを例外規定から外した。その代わりに、業務内容をできる限り具体的に明示する必要があり、「10歳代後半から20歳代前半までの若者向けの洋服の販売であり、宣伝を兼ねてその商品を着用して店舗に出る業務である」といった記載をしなければならない。
2番目は、体力や視力など加齢とともにその機能が低下するために不向きと思われる業務に従事する人について認めていた年齢制限の廃止である。一例をあげると、長距離のトラック運転手などであり、たとえば「長距離トラックの運転手として、45歳以下の方を募集」と書くことは許されなくなる。代わって、上記の販売職同様、業務内容と必要な能力を具体的に明示する必要があり、「長時間トラックを運転して、札幌から大阪までを定期的に往復し、重い荷物(−−kg程度)を上げ下ろしする業務であり、この業務を継続していくためには持久力と筋力が必要である」というように細かく記載する必要がある。
3番目は、労働災害の発生状況などから、労働災害の防止や安全性の確保についてとくに考慮する必要がある業務に従事する人の年齢制限の廃止である。たとえば、危険が伴うビルの建設現場などの高所作業に従事する人である。この場合も、「建設現場における高所(10m以上)での作業を行う業務であり、この業務を継続していくためには、持久力と筋力が必要である」などと記載する必要がある。
 年齢制限が認められる6つの例外事由

一方、今回認められた例外事由には、たとえば「60歳未満の方を募集」といったように定年年齢を上限として正規社員を雇用する場合や、労働基準法などの法令の規定で年齢制限が設けられている場合などのほかに、以下の4つがある。
1.長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合。
2.技能・ノウハウの継承の観点から、特定の職種において労働者数が相当程度少ない特定の年齢層に限定し、かつ、期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合。
3.芸術・芸能の分野における表現の真実性等の要請がある場合。
4.60歳以上の高年齢者または特定の年齢層の雇用を促進する施策(国の施策を活用しようとする場合に限る)の対象となる場合に限定して募集・採用する場合。
3番目の例外事由である芸術・芸能の分野とは、いわゆる俳優などの仕事にかかわる「子役」を募集する場合などである。ただし、単に特定の年齢層を対象とした商品やサービスの提供等が目的であり、芸術・芸能の分野に該当しないイベントコンパニオンなどは認められない。
4番目の国の施策にかかわるものとは、中高年齢者や若年者のトライアル雇用などの施策である。
以上のうち、企業にとって重要なのは、1番目と2番目の例外事由だ。

*「長期勤続によるキャリア形成」を目的にした正規社員の募集・採用

1番目の「長期勤続によるキャリア形成」を目的にした正規社員とは、新規学卒者や中途採用において、いわゆる総合職として採用する場合である。ただし、1.対象者の職業経験について不問、2.新規学卒者以外の者については、新規学卒者と同等の処遇であること−という2つの要件を満たす必要がある。
同等の処遇とは、賃金面だけではなく、新卒者と同様の訓練・育成体制、配置・処遇をもって育成しようとしている場合を指す。新卒者以外では、第二新卒なども該当するだろう。
なお、上限年齢を定めることは認められるが、下限年齢を付してはいけない。記載する場合は、たとえば「35歳未満の方を募集(職務経験不問)」などとなる。
また、この場合、上限年齢は表示できるが、職務経験不問であるために、中途採用などで明示するスキル・技能なども記載することができない。ただし、簿記2級以上などのように、実務経験を有する資格ではない免許資格を表示することは許される。
したがって、「40歳未満の方を募集(−−業務の経験のある方)」といった求人募集は認められないことになる。これらの例外規定は正規社員の募集・採用に限定されており、たとえば「35歳未満の方を募集(契約期間6カ月)」といった有期労働契約の場合は、年齢制限を行うことは認められない。
こうした例外規定を設けた理由の1つに、「年長フリーターも含めて新規学卒者以外の若年者を幅広く採用してほしい」(厚労省雇用政策課)という企業への期待が込められていることはいうまでもない。実際、雇用対策法第7条および9条に基づく「青少年の雇用機会の確保等に関して事業主が適切に対処するための指針」も出されているが、その中にも「意欲や能力を有する青少年に応募の機会を広く提供する観点から、学校等の卒業者についても、学校等の新規卒業予定者の採用枠に応募できるような募集条件を設定する」との努力義務を規定している。

*「社員が相当程度少ない場合に特定の年齢層に限定して募集」する場合

例外事由の2番目の特定の職種において社員が相当程度少ない場合に特定の年齢層に限定して募集する場合については、いくつかの要件が課されている。
この場合の「特定の職種」とは、技能・ノウハウの継承が必要となる具体的な職種を指し、職種の範囲は厚生労働省の『職業分類』の小分類もしくは細分類、または総務省『職業分類』の小分類を参考にしてほしいとしている。たとえば「機械・電気技術者」は中分類だが、小分類は「電気通信技術者」。「農林水産業・食品技術者」(中分類)における「水産技術者」(小分類)、介護関連職では「ホームヘルパー」が小分類にあたる。
特定の年齢層とは、「30〜49歳」の範囲を指している。また、募集する際は、「30〜32歳」のように1〜2歳幅で明示することは許されず、5〜10歳幅の年齢層にしなければならない。
相当程度少ない場合とは、社員の年齢別構成において、同じ年齢幅の上下の年齢層と比較して労働者数が2分の1以下であることが条件となる。たとえば、30〜34歳に限定して募集したいと思った場合、この年齢層の社員の数が、その下の25〜29歳および上の35〜39歳の年齢層の社員数のいずれも半分以下であることが求められる。
ある電機メーカーA社が、不足人員を補充するために「A社の電気通信技術者として30〜39歳の方を募集」するとき、同社の20〜29歳が30人、30〜39歳が10人、40〜49歳が25人であれば認められるが、40〜49歳が15人だと認められないことになる。
また、2分の1以下であるかどうかを判断する際の基準は、その企業全体の職種の社員数を分母とすることが原則である。ただし、例外として、人事管理制度上、一部の事業所で採用などの雇用管理を行っている場合には、一部の事業所を単位として判断することも認められている。たとえば、地方に製造拠点を数多く抱える大手企業ではエリア別に採用しているところも多い。その場合は、エリアごとにその職種の社員数を基準にして2分の1以下であるかどうかを判断することができる。

 年齢にかかわりなく働ける社会へ
年齢制限禁止に企業はどう対応するか
こうした例外規定はあるものの、今回の年齢制限の禁止により、法律が意図する高齢者や年長フリーターの採用の拡大に果たしてつながるのだろうか。これまでも、募集要項には年齢制限がないからということで実際に応募して面接に臨んでも、結果として一定の年齢層の人しか採用されていないという実態も指摘されている。面接のチャンスが広がったといっても、実質的に年齢を理由に採用されないとしたら求職者にとっても不安だろう。
これに対して厚生労働省は、「男女雇用機会均等法の採用における性別禁止と同様に、審議会でも年齢が見えなくなることでトラブルが生じざるをえないという指摘もあった。しかし、仮にそれが不可避ではあっても、結果として年齢にかかわらない社会に近づけることが必要だ」(雇用政策課)という見解である。
一方、企業側はどう見ているのか。大手建設会社の人事担当者は、「これまで中途採用の募集では、本人の職務経験やスキル・技能に加えて目安となる一定の年齢層を明示していたが、今後は年齢要件を外すなど気をつける必要があるにしても、現実には個々の人物をみて当社の職種にふさわしいかどうかを判断することになる。仮に年齢が高い人が応募するにしても、それなりの地位や収入がある人が多く、当社が提示している賃金面などの条件をみて合わないと考える人もいるだろう。結果的には、求める年齢層に落ち着くのではないか」と影響は小さいと語る。
ある職種において、一定の年齢層を補充しようとする場合、例外事由に該当しなくても、面接の結果「当社が求めるスキル・技能に合致しない」という理由で不採用とする裁量は企業側にある。また、前述したように、総合職として採用する場合は職務経験不問を条件に年齢制限をすることができる。しかし、総合職ではなく、業務が限定される職種を採用する企業にとっては、年齢制限の禁止は頭の痛い問題でもある。
「当社では、総合職以外に処遇が異なる特定の職務に限定した事務職を採用しているが、仕事に精通し、業務をこなすことができるようになるには3年程度の教育期間が必要になる。したがって、これまでは比較的若い年齢層に限定して募集していた。しかし、年齢制限が禁止されると年輩者の応募が増える可能性もある。仮に50代の方を採用し、教育に3〜4年かけても、その後何年働いてくれるのかどうかといった問題も出てくる。こちらの教育コストに見合う貢献度を考えると、年齢制限は厳しいなというのが正直な気持ちだ」(大手サービス業人事担当者)


募集・採用における年齢制限の禁止が、個々の企業に少なからず影響を与えることは否定できない。それを回避するために、短期的に自社に都合のよい人材の獲得のみを目指しても、いずれ人口減少による労働力不足が大きな問題となることは間違いない。すでに労働市場の需給関係も逼迫しつつある。今回の法律改正を契機として、中・長期的には高齢者を含めたあらゆる年齢層を受け入れる環境を整備することが企業に求められているのではないだろうか。(ジャーナリスト 溝上憲文)

賃金事情 2007年10月20日号掲載
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