2017年 春季労使交渉にのぞむ
経営側のスタンス調査


update:2017.02.07

賃上げ実施(予定)企業は前年超えの62.9%
賃上げ率は「2016年と同程度」が7割

人事労務分野の情報機関である産労総合研究所(代表・平盛之)は、毎年、春季労使交渉に先がけ「春季労使交渉にのぞむ経営側のスタンス調査」を実施しています。このたび2017年の調査結果がまとまりましたので、ご報告いたします。

 

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2017年 春季労使交渉にのぞむ経営側のスタンス調査
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主なポイント

(1)2017年の賃上げ見通し

  • 賃上げ世間相場予測は、「2016年と同程度」が5割、「2016年を下回る」が2割
  • 自社の賃上げ予測は、「賃上げを実施する予定」が6割を超え、前年を上回る

(2)2017年の自社の賃上げ率予測

  • 自社の賃上げ率は「2016年と同程度」が7割、「2016年を上回る」も1割

(3)定期昇給制度の有無と賃金改定に向けた経営側のスタンス

  • 「定期昇給制度がある」企業は全体の7割強、うち5割が全社員に適用
  • 賃上げは「定期昇給のみ」が6割、ベア率も縮小傾向

(4)業績が向上した場合の配分

  • 業績向上分は「賞与にまわしたい」6割、「賃上げ(月例給の引上げ)と賞与にバランスよく配分したい」3割

(5)2017年の年間賞与の見通し

  • 2016年と比較した2017年の年間賞与の見通しは「ほぼ同額」が35.3%

(6)非正社員の処遇改善状況と2017年の見通し

  • 2016年に非正社員の賃金を「増額した」企業は46.7%、2017年に賃金を「見直す予定はない」30.5%

(7)最低賃金の引上げと非正社員の賃金改定

  • 最低賃金の引上げが「非正社員の賃金に影響があった」企業は46.1%

(8)正社員の採用

  • 2017年入社者を「計画通り採用できた」は、前年を14.3ポイント上回る53.3%

(9)今後取り組むべき働き方改革

  • 8割の企業が「長時間労働」の是正に取り組むと回答、「副業・兼業」は2割

(10)配偶者手当の支給状況と支給要件

  • 配偶者手当のある企業で「見直す予定」は2割、現状の支給要件は「配偶者の年収が103万円以下」が5割

 

調査要領

【調査名】  「2017年 春季労使交渉にのぞむ経営側のスタンス調査」
【調査対象】 全国1・2部上場企業と過去に本調査に回答のあった当社会員企業から任意に抽出した3,000社
【調査時期】 2016年11月中旬~12月下旬
【調査方法】 郵送によるアンケート調査方式
【集計対象】 締切日までに回答のあった167社について集計

●集計企業の内訳

グラフ

 

調査結果の概要

(1)2017年の賃上げ見通し

「賃上げ世間相場予測」
「2016年と同程度」が5割、「2016年を下回る」が2割

グラフ企業の担当者に賃上げの世間相場の予測についてたずねたところ、「2016年と同程度」が49.1%(前回調査45.9%)、「2016年を下回る」は21.0%(同13.7%)、「2016年を上回る」は6.6%(同11.6%)だった。なお、「現時点(2016年12月)ではわからない」と判断を保留した企業は、22.8%(同28.8%)となった。
5年ぶりにベア要求が復活した2014年の調査結果では、リーマンショック以降激減していた「前年を上回る」予測が47.8%と大幅な上昇をみせたが、2015年12.9%→2016年11.6%→2017年6.6%と、下降傾向にある。


図表1-1 2017年の賃上げ世間相場の予測

グラフ

 

「自社の賃上げ予測」
自社の賃上げ予測は、「賃上げを実施する予定」が6割を超え、前年を上回る

グラフ自社の賃上げについてはどのような姿勢でのぞもうとしているのだろうか。最も多かったのが「賃上げを実施する予定(定期昇給を含む)」の62.9%(前回調査58.9%)、次いで「現時点ではわからない」30.5%(同35.6%)、「賃上げは実施せず、据え置く予定」6.0%(同5.5%)、「賃下げや賃金カットを考えている」0.6%と、前回にはなかった「賃下げ、賃金カット」の回答がみられたものの、2016年とおおむね同様の傾向がみられた。


図表1-2 2017年の自社の賃上げ予定

グラフ

 

(2)2017年の自社の賃上げ率予測

自社の賃上げ率は「2016年と同程度」が7割、「2016年を下回る」も1割

グラフ「賃上げを実施する予定」と回答した企業(全体の約6割)が、自社の賃上げ率を前年と比較してどのように設定する考えでいるのだろうか。世間相場の賃上げ予測と同様に、最も多かったのが、「2016年と同程度」の72.4%。前回調査を8.4ポイント上回った。賃上げ率予測は1.9%(前回1.8%)。次いで多かったのは「2016年を下回る」の15.2%で、前回調査を8.1ポイント下回った。賃上げ率予測は1.7%(同2.0%)。最も少なかった「2016年を上回る」は9.5%(同8.1%)で、賃上げ率予測は2.1%(同1.9%)であった。


図表2 2017年の自社の予想賃上げ率

グラフ

 

政府の賃上げ要請は、自社の賃金改定に影響しない5割超

グラフ政府は2016年11月に開催した「働き方改革実現会議」のなかで、2017年春闘においても「ベアの実施」を要請した。4年連続の政府主導の賃上げとなる。それを受けた経団連は、2016年春闘と同様に、収益拡大企業に対して年収ベースでの賃金引上げを呼び掛ける姿勢を示している。本調査では、2016年に引き続き、政府主導による賃上げ要請が、自社の賃金改定に影響を及ぼすか、企業の担当者にたずねた。
「影響しないと思う」が「影響すると思う」を上回り53.9%(前回46.6%)、「影響すると思う」は26.3%(同33.6%)であった。企業規模別にみると、大企業で「影響しない」(43.8%)が低く、「影響する」(35.4%)が高い。ただ、2016年と比較すると、「影響する」は4.1ポイント減少、「影響しない」は15.9ポイント増加している。政府の賃上げ要請の影響力は、本調査からは低下傾向にあるという結果がみられた。


(3)定期昇給制度の有無と賃金改定に向けた経営側のスタンス

「定期昇給制度がある」企業は全体の7割強、うち5割が全社員に適用

定期昇給制度に関して、その有無、適用対象をみていく。定期昇給制度の有無をみると、「定期昇給制度がある」74.9%、「定期昇給制度はない」22.8%と、2012年以降8割程度で推移していた「定期昇給制度がある」企業が減少し、「ない」企業が増加した。具体的に記入のあった企業の定期昇給の平均額、率をみると、4,641円、1.6%と前回(4,793円、1.8%)から減少した。定期昇給制度の適用対象の範囲は、「全社員に適用」する企業が最も多く半数の50.4%(前回40.3%)、「一般社員のみに適用」29.6%(前回34.5%)、「特定層のみに適用」8.0%(前回8.4%)であった。ここ数年、全社員に適用する企業の割合が上がっている。


図表3 定期昇給制度の有無

グラフ

 

賃上げは「定期昇給のみ」が6割、ベア率も縮小傾向

グラフ定期昇給制度のある企業に、2017年の賃金改定がどのような内容になるかたずねたところ、「定昇のみを実施する予定」が58.4%と、過半数に達した。賃上げ率が2.34%であった2015年は47.2%、2016年は50.4%と、年々増加傾向にある。一方、「定昇もベアも実施する予定」は8.8%で、前回調査(10.1%)から1.3ポイント減少、ベア率も0.8%(前回1.1%)と、0.3ポイント減少している。また、3割の企業は「現時点ではわからない」と回答している。


(4)業績が向上した場合の配分

「賞与にまわしたい」6割、「賃上げ(月例給の引上げ)と賞与にバランスよく配分したい」3割

グラフ企業業績が向上した場合の成果配分についてたずねたところ、最も多かったのが「賞与にまわしたい」58.7%、次いで「賃上げと賞与にバランスよく配分したい」28.1%が続く。「賃上げにまわしたい」は3.6%と、前回調査の6.2%から2.6ポイント減少、企業規模別にみると、前回同様、大企業の回答はなかった。


図表4 企業業績が向上した場合の配分

グラフ

 

(5)2017年の年間賞与の見通し

2016年と比較した2017年の年間賞与の見通しは「ほぼ同額」が35.3%

グラフ2017年の年間賞与は、2016年に比べて「増加する」10.2%(前回13.0%)、「ほぼ同額」35.3%(同30.1%)、「減少する」12.6%(同15.1%)、「現時点ではわからない」40.7%(同41.1%)となった。2017年は2016年の結果に比べ、「ほぼ同額」が増え、「増加する」「減少する」が減ったが、どちらもわずかであり、大きな変化はみられなかった。


図表5 2017年の年間賞与の見通し

グラフ

 

(6)非正社員の処遇改善状況と2017年の見通し

2016年に非正社員の賃金を「増額した」企業は46.7%、2017年に賃金を「見直す予定はない」30.5%

グラフ非正規労働者と正規労働者間の処遇格差是正に向け、2016年12月に「同一労働同一賃金ガイドライン(案)」が示された。今後、非正規労働者の処遇改善が求められる企業が増えることが予想されるが、回答企業における2016年の賃金見直し状況と、2017年の見通しはどのようなものとなっているだろうか。
2016年の見直し状況をみると、「賃金を見直した」は、2016年では46.7%と、前回調査から6.7ポイント減少した。ただし経年でみると、2013年25.2%、2014年41.7%、2015年53.4%と増加傾向にあり、回答企業のなかには「既に見直し済み」との意見が散見された。では、2017年はどのような見通しとなっているのか。「現時点ではわからない」が35.3%で最も多く、「見直す予定はない」は30.5%、「賃金を増額する予定」25.7%と、前年と同様の傾向にある。


図表6 非正社員賃金の見直し状況と2017年の見通し

グラフ

 

(7)最低賃金の引上げと非正社員の賃金改定

最低賃金の引上げが「非正社員の賃金に影響があった」企業は46.1%

グラフ今回の調査では、最低賃金引上げによる非正社員の賃金改定への影響をたずねた。2016年の最低賃金は、全国加重平均で823円となり、2015年から25円の増額となった。引上げ幅は年々増加している。安倍首相は最低賃金を毎年3%程度引き上げることを表明しているが、企業の対応はどのようになっているのか。最低賃金の引上げが「影響があった」とした企業は46.1%、「影響がなかった」は51.5%であった。企業規模別にみると、企業規模が大きいほど「影響があった」の割合が高かった。


(8)正社員の採用

2017年入社者を「計画通り採用できた」は、前年を14.3ポイント上回る53.3%

グラフ2016年の新卒採用スケジュールは、経団連が広報開始時期を3月、選考開始時期を8月以降に後ろ倒しするよう会員企業に呼びかけた。その結果、採用活動は長期化し、2016年入社者の採用活動は企業、学生の双方で混乱が生じることとなった。このような事態を踏まえ、経団連は2017年入社者に対する採用活動解禁日を2カ月前倒し、6月1日に変更した。
調査の結果をみると、「計画通り採用できた」が53.3%と、前回調査の39.0%から14.3ポイント増加し、「想定以上の内定辞退者が出た」15.0%、「採用枠に達しなかった」8.4%はともに10ポイント程度減少した。


(9)今後取り組むべき働き方改革

8割超の企業が「長時間労働」の是正に取り組むと回答、「副業・兼業」に取り組む企業は2割

グラフ取り組むとされた働き方改革を回答の多かった順にみると、「長時間労働の是正」82.6%、「非正規雇用の処遇改善」35.3%、「外国人材の活用」31.7%、「65歳までの定年延長」24.0%、「副業・兼業といった柔軟な働き方」20.4%と、長時間労働の是正に取り組む企業は8割を超えた。企業規模別にみると、取り組む意向は大企業で高く、全体では2割程度だった「副業・兼業といった柔軟な働き方」も4割を超える回答となっている。


(10)配偶者手当の支給状況と支給要件

配偶者手当のある企業で「見直す予定」は2割、現状の支給要件は「配偶者の年収が103万円以下」が5割

グラフ配偶者手当の支給状況は「配偶者手当はない」企業は23.4%、「配偶者手当を見直す」18.0%、「見直す予定はない」58.1%であった。「配偶者手当のある企業」(見直す予定+見直す予定はない)を100とすると、「見直す予定」は23.6%となる。
配偶者手当の現在の支給要件は、最も多かったのが「配偶者の年収が103万円以下」の51.2%が過半数を占めた。


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※ 詳細データは「賃金事情」2017年2月5日号にて掲載しています。

 

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株式会社産労総合研究所「賃金事情」編集部   担当:伊関、黒田、境野
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