事例 No.056 NCS&A 特集 「ソト」での学びで視野を広げる
(企業と人材 2016年4月号)


update:2016.12.10

記事の内容およびデータは掲載当時のものです。

プロジェクト活動で他部署社員が採用にかかわることで
社内の人脈を広げ、会社への理解を深める

ポイント

(1)業務の一環として、ビジョンの浸透、情報の共有、社員間の相互理解などを深める「+1PROJECT」に取り組む。

(2)「+1PROJECT」の1つとして、他部署、他職種を経験する「MyChallenge」を実施。2014、2015年度は、他部署の社員が採用活動に携わる「Let’s 新卒リクルーティング」を企画。

(3)人事部以外の社員が採用の面接・評価などを行うことで、会社への理解が深まり、他部署の社員とのつながりも広がる。

業務にプラスする活動「+1PROJECT」

NCS&A株式会社は、日本コンピューター・システム株式会社と株式会社アクセスが合併し、2014年8月に誕生した企業である。
ITシステムやITサービスの企画・提案・提供・運営・保守など、さまざまなITソリューションを提供。その豊富な経験と技術力は高く評価されており、クライアントは官公庁、金融、製造、流通など多岐にわたる。最近は銀行系、生保系、ノンバンク系などの金融市場、自治体・医療などの公共系、社会インフラ市場におけるシステム開発や保守事業にも力を入れており、新サービスの創出にも積極的だ。
同社の社是(創業の精神)は、「コンピューターは社会に奉仕する」である。そして企業理念として、「お客様とともに感動を創造するソリューションリーディングカンパニーとして、安心で快適な夢あふれる未来の実現に貢献」することを掲げている(図表1)。

図表1 企業理念と行動指針

図表1企業理念と行動指針

従業員数は約1,100人。その約8割がSE職で、多くはクライアント先企業でITソリューションの開発・運用などを行っている。
同社では10年ほど前から「+1(プラスワン)PROJECT」(以下、プロジェクト)という社内活動を行っている。もともと、2005年に日本コンピューター・システムで始まったもので、合併後もそのまま実施しているのだ。
これは、事業目標の達成とさらなる業績の向上をめざし、社内での「ビジョンの浸透」、「情報の共有」、「部門・社員間の相互理解」、「自己の役割確認」を進めていく活動である。そのために、社員一人ひとりにまで行きわたる活動を、業務の一環として実践することとしている(図表2)。

図表2 「+1PROJECT」の概要

図表2「+1PROJECT」の概要

最初は「社内コミュニケーション活性化委員会」と呼ばれていたそうだが、これでは目的やどんな活動をしていくのかが理解しにくいため、名称を社内公募した。そして、通常の業務にプラスする活動という意味で、この名称が選ばれたという。

チームに分かれて、さまざまな活動を企画・展開

プロジェクトの全体組織は図表3のようなものである。まず上部組織として、大阪・東京・名古屋の各地区から選出された管理職以上4〜5人、合計15人程度で「+1メンバー」を構成。代表取締役社長の松木謙吾氏を議長に(2015年より取締役執行役員常務・山口満之氏が議長)、月2回ほど会議を開催、活動プログラムの企画・立案などを行っている。
+1メンバーの下に、各地区の若手社員からなるCA(チェンジエージェント)がいる。CAは各地区10人程度で、希望者のなかから選出している。CAの活動期間は1年だが、全員が入れ替わると運営の継続性などに支障がでるため、毎年半分ほどを入れ替えながら活動を続けている。ただし、本人の希望があれば、CAを数年続けることも可能だ。
CAの主な業務は、+1メンバーが企画・立案した活動プログラムを運営・実行していくこと。また、各地区でのイベントを企画したりもしている。
さらにCAの下には、CAJr(チェンジエージェント・ジュニア)と呼ばれる、入社1年目の社員全員からなる組織がある。CAJrはCAと協力しながら、さまざまな企画の運営・実行をとおして、企業文化への理解や他部署の人たちとのつながりを広げている。

図表3 「+1PROJECT」の組織図

図表3「+1PROJECT」の組織図

プロジェクトでは、「共感する活動」、「参加する活動」、「共有する活動」のチームに分かれて、相乗効果が得られるようなさまざまなプログラムを企画・立案・実行してきた。
たとえば、「共感する活動」としては、入社4年目の社員と社長が対話する「とことんTalk」がある。入社4年目は会社や仕事に慣れ、次のステップに進む時期でもあり、ここで社長といろいろな話をすることで、会社や事業への理解を深めてもらおうと企画されたものだ。1回あたりの参加者数は4〜5人と少なく、文字どおり「とことん」社長と話すことができる。毎回、現場での悩み、仕事での苦労ややりがいなど、さまざまな話題が出る。社長からは、会社の理念や方針が語られるほか、過去の失敗談やプライベートな話が出ることもある。ここで出た内容は社内グループウェアで公開し、全社員で共有している。
ちなみに、経営層と対話するプログラムはほかにもある。入社8年目社員と常務が対話する「もっととことんTalk」や、事業部長と入社6年目の社員が企業理念・事業部方針について意見交換する「ValueTalk」などである。
また、「参加する活動」としては、年1回、地区ごとに開催している「全社事業方針説明会」やイベントなどがある。東京地区では、高尾山ハイキングやバーベキュー大会、ボウリング大会などを行っており、多いときは100人以上の社員が集まるそうだ。
また、クライアント先企業で仕事を行う社員には、クライアント先に経営層が訪問し、仕事の状況や課題、会社への要望など、現場の生の声を聞く「プロジェクト訪問」も実施している。
「共有する活動」としては、公式ウェブサイトでの活動報告や、表彰制度などがある。
管理本部総務人事部総務課長で、+1メンバーだった逸見明彦さんは、次のように話す。
「社外のクライアント先で仕事をしている社員は、会社との関係が希薄になりがちです。プロジェクトは、会社との関係を密にするというねらいもあります。地区イベントはだいたい春と秋の2回行っていて、参加は自由ですが、毎回多くの社員が参加しています」
このように、同社ではプロジェクト活動をとおして、社内のタテ・ヨコ、社員と社員をつなぎ、組織の活性化、高パフォーマンスにつなげているのだ。

人事部以外の社員が採用に携わる

そんなプロジェクト活動の1つに、「MyChallenge」(以下、チャレンジ)というプログラムがある。これは、部署にこだわらず広い視野をもって、いまの職場・職種以外の仕事にチャレンジする社員を応援するために企画されたものだ。
チャレンジでは、プロジェクトがスタートした2005年から、さまざまなチャレンジプログラムを実施してきた。たとえば、1日社長に同行して経営者の仕事を体験する「1日社長」や、上海にある子会社を訪ね、そこでの仕事を体験したり、現地社員の家に泊まって生活した様子をビデオレポートする「上海ウルルン体験記」などである。また、最新の技術を学んでもらうため、スマートフォンのアンドロイドアプリの開発を体験するプログラムも実施した。
そして、2014年度、2015年度のチャレンジプログラムとして行われたのが「Let’s新卒リクルー
ティング」(以下、リクルーティング)だ。これは、人事部門以外の社員が、新卒採用活動にチャレンジするプログラムである。
「若手から中堅まで幅広い層の社員から、『採用をやってみたい』という声が上がっていました。どんなことをしているのかよくわからないため、『面白そう』、『興味がある』と感じていたようです。そこで、チャレンジプログラムにすることにしました。プロジェクトが掲げるビジョン浸透、情報共有などの目的のほか、リクルーティング活動を体験することで、企業経営における人材確保の重要性も考えてもらえればという思いもありました」(逸見さん)
募集は大阪・東京・名古屋の各地区から1人。公募制で、業務と調整がつけば、だれでも応募可能とした。最初の年となった2014年度は、社内調整などもあり、7月31日〜9月4日に募集し、9月〜10月後半までの採用活動や内定者フォローなどに携わってもらった。募集にあたっては、全社員に案内を出し、応募の際には、部署名などの基本情報のほか、「チャレンジに向けての抱負」や「要望」なども書いてもらった。
2014年度の応募者(チャレンジャー)は5人。せっかくなので選考はせず、応募者全員を受け入れたそうだ。「やってみたい気持ちはあっても、業務との兼ね合いがつかず、諦めた社員もいたようです」と逸見さんは言う。
可視化・プラットフォーム事業部第一テクノロジー部の齋藤咲希さんは2014年度のチャレンジャーの1人だ。
「私は旧アクセスの出身です。合併してワクワクしていた反面、どんな会社になるのか、自分に何ができるのか不安もあったときに、プロジェクトとリクルーティングの募集を知りました。これは会社を知るいい機会なのではと思い、部署の先輩に相談して、思い切って応募することにしました。先輩もアクセスの出身ですが、『いい機会だから、やってみたら』と快く送り出してくれました」
このリクルーティングのプログラムを企画した背景には、合併後の社内の融合をさらに図っていきたいというねらいもあった。そのため、齋藤さんが応募してくれたことは、会社としてもうれしかったという。
応募にあたっては、業務に支障がないよう、上司や部署メンバーの了承を得ることを第一条件としている。その際、人事部門から管理職に話をとおすといったことはしていない。これは、やりたいことがあれば、自分で周囲と調整し、実現に向けて取り組んでいくことにも意味があると考えているからだ。
齋藤さんも業務との兼ね合いが少し不安だったそうだが、上司や先輩の後押しもあり、また、人事部門が候補日をいくつかあげ、そのなかから参加できる日を選ぶという形だったため、参加しやすかったという。

採用にかかわることで、会社の求めることを知る

齋藤さんがかかわったのは、会社説明会、一次面接、二次面接である。斎藤さんはSE職で、ふだんは銀行などの基幹システムを可視化するツールの開発や導入・保守を担当している。それまで採用はもちろん、そのほかの人事業務にもかかわったことはなかった。
会社説明会では、現場で働く先輩社員の1人として、学生に向けていまの仕事内容ややりがいなどを話した。
「人前で話す機会はそれまであまりなかったので、最初は緊張しました。でも、学生が目を輝かせて聞いてくれているのをみて、だんだんリラックスできるようになりました。私は文系出身なので、専門用語をなるべく使わず、わかりやすく話すことを心掛けながら、理系でなくてもSEになれること、ありのままの当社のよさを伝えたいと思っていました」(齋藤さん)
その後、入社した新入社員の1人から、「説明会で齋藤さんの話を聞いて、この会社で働きたいと思って応募しました」と言われたときはうれしかったと話す。
面接では、面接官を担当した。もちろん面接官の経験などないため、人事部門があらかじめ用意した質問事項のなかの1つを担当する形で、「どのように聞くか」、「追加で聞きたいことができたら、どのように掘り下げていくか」などのレクチャーを事前に受けた。とはいえ、かなり自由に質問もさせてもらったという。
一次面接はグループ面接で、学生4人に対し、面接官は人事担当者2人と齋藤さんともう1人のチャレンジャーの、計4人という形だった。
二次面接は個人面接で、通常は人事担当者の面接官1人と学生1人のところに、齋藤さんが加わった。二次面接では、行動特性やITへの関心、SEになって生み出したいことなどを中心に聞く。一次面接より深い内容になるため、準備して臨んだそうだ。
「評価もさせていただいたのですが、評価項目や評価基準をあらかじめ教えてもらって、他の面接官の方と話し合って決めるとはいっても、やはり責任の重さを感じました。でも、面接と評価をとおして、これからどのようなことが求められるのか、どういう点を会社は重視しているのかを知ることができたので、私自身大変勉強になりました。リクルーティングに応募したのもそこを知りたいと思ったからで、採用活動をとおして、会社が求めていることを再確認できたのは、大きな収穫でした」(齋藤さん)

▲人事担当者と一緒に一次面接に参加した齋藤さん

▲人事担当者と一緒に一次面接に参加した齋藤さん

学生には事前に、プロジェクトの一環で、人事担当者以外の社員が面接官として入っていることを説明していた。
「人事担当者ではない、年の近い先輩が入ることで、学生の方はリラックスして面接に臨むことができたようです。プロジェクトやチャレンジといった取り組みを会社がやっていることについても、よい印象をもってくれていました。その点では、会社のイメージアップにもなったのではないかと思います」(逸見さん)
2015年度は、5月29日〜6月24日に募集し、7〜8月の採用活動に参加してもらった。応募者は4人。2014年度と同じように、会社説明会や面接官などを担当したそうだ。
ちなみに、同社には「コミュニケーションポイント」というユニークな制度がある。3年前から行っているもので、プロジェクト活動など、社内のコミュニケーション活動に参加すると、ポイントを付与するというものだ。
ポイントは部署と個人それぞれに付与され、貯まったポイント数で、部署は半期ごと、個人は四半期・半期・通年ごとに表彰。ポイント数の多かった部署には賞金が、個人には自社株が副賞として与えられる。
リクルーティングについては、応募すると10ポイント、実際に参加するとさらに20ポイントがつく。

プロジェクト活動をとおして、全社的な視点をもつ

2016年度もリクルーティングプログラムは実施する予定だ。今回はスケジュールを前倒しして、採用活動の前半からかかわってもらうつもりだという。同社では、いわゆるリクルーターを置いていないため、チャレンジャーは採用活動の重要な戦力にもなっている。
では、リクルーティングなどで違う仕事、違う部署を体験することで、どのような効果があるのか。逸見さんは次のように説明する。
「日常の業務とは違うことを体験して、『視野が広がった』、『会社全体を見る視点がもてた』、『人脈が広がった』と話すチャレンジャーがほとんどです。部署内のコミュニケーションは活発でも、他部門の社員と交流する機会は少ないので、リクルーティングに限らず、プロジェクト活動をとおして交流を深め、全社的な目標を意識するようになってもらえればと思っています。
いまは業務の細分化が進んでいますが、社員一人ひとりが部分最適ではなく、全体最適の視点をもつ必要があります。自分の部署、自分の仕事という視点だけでは、会社は成り立ちません。全社員が1つの方向を向いていることが、企業にとっての強みになると思います」
プロジェクト活動やチャレンジへの参加には、経営層や人事担当者、他職場の社員、ほかのチャレンジャーとのつながりができ、終了後もそれが続いていくといったメリットもある。社内人脈の構築にも役立っているというわけだ。実際、日常業務で助け合ったり、意見を聞いたりといったことも、以前より広がってきている。
「プロジェクトやチャレンジは社員に広い視野と会社への興味をもってもらうための取り組みです。自分で手をあげて、違う部署、違う業務を体験することで、主体性を育む効果もあり、今後もさまざまな内容で継続していきたいと思っています。
リクルーティングについては、もはや人事部門の採用戦略に組み込まれているといっても言い過ぎではありません。もっと多くのチャレンジャーが手をあげて『新しい人を採用する』というよりも、『新しい仲間を探す』という視点で、積極的に参加してもらえるようになれば、社員の会社に対する関心はさらに高まると思います」(逸見さん)
以上、NCS&Aの「+1PROJECT」と新卒リクルーティングなどの「MyChallenge」について紹介してきた。社員間のコミュニケーションを深め、視野を広げ、新たな気づきを得て、それを業務で活かしてもらう。そのために、日ごろとは違う部署や業務を経験させることは有効だろう。

(取材・文/小林信一)


 

▼ 会社概要

社名 NCS&A株式会社
本社 大阪府大阪市
創業 1961年10月
資本金 37億7,510万円
売上高 147億円(2015年3月期 単体)
従業員数 1,125人(2015年3月31日現在)
平均年齢 39.1歳(2015年12月1日現在)
平均勤続年数 15.4年(2015年12月1日現在)
事業案内 システムインテグレーションの提供、ソフトウェアの受託開発、IT導入支援サービスなどのITソリューションサービスの提供
URL http://ncsa.jp/index.html
(左)
可視化・プラットフォーム
事業部
第一テクノロジー部
齊藤咲希さん
(右)
管理本部
総務人事部 総務課
課長
逸見明彦さん


 

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