労災レセプト請求のオンライン化に向けて 労災レセプト電算処理システムの
導入から請求まで インタビュー:
厚生労働省 労働基準局 労災補償部長 安藤よし子氏 に聞く


update:2014.03.24

この記事は「医事業務」2014年3月15日号に掲載されました。

労災レセプト電算処理システムの全国稼働
医療機関における対応ポイントは?

平成26年1月14日、労災保険指定医療機関等において、労災レセプトのオンライン請求ができる「労災レセプト電算処理システム」が稼働しました。そこで、編集部では厚生労働省 労働基準局 労災補償部長 安藤よし子氏に、全国稼働に伴うシステム導入から請求までの流れを中心にお話をお聞きしました。


労働基準局労災補償部の業務と役割、位置づけは?

厚生労働省は、ご承知のように2001年 (平成13年) 1月の中央省庁再編により、旧厚生省と旧労働省を統合してできた行政機関です。労働基準局は厚生労働省の内部部局に位置し、その中に労災補償部があります。
労働基準局は、基本的に働く人の労働条件や安全衛生を確保するための業務を担っている部署です。具体的には各都道府県の労働局と、その下部組織として労働基準監督署があり、労働者が仕事でけがをしたり、病気になったりすることがないよう、適正労働条件や職場環境を実現していくために、事業主に対する指導等を行っています。
それでも、不幸にして労働災害に遭ってけがをしたり、仕事のために病気になったりしてしまった場合には、やはり事業主の責任としてしっかり補償してもらわなければなりません。その補償を行う制度として、労働者災害補償保険制度というものがあります。
労災補償部では、この労災保険制度の管理運営、そして、労災保険と雇用保険の2つを合わせたものを労働保険と呼んでおりますが、労働保険の適用、保険料徴収、さらには被災された労働者の職場復帰支援などを主な業務としています。
労災補償部は、労災保険制度全体の企画立案を行い、制度の運営の仕方のルールを決め、それに沿って労働局や労働基準監督署は業務を行っています。また、労働基準行政を行うのに必要な業務システムやネットワークの維持管理という仕事もあります。

労災レセプト電算処理システムの試験稼働から全国稼働までは、どのような流れになっていますか?

各医療機関では、すでに健康保険についてレセプト請求のオンライン化が進んでいることと思います。この流れの背景には、政府全体でIT化を推進しようという長い取り組みがあり、健康保険も平成18年からオンライン請求ができるようになりました。労災保険は、それに少し遅れて平成19年に有識者による検討会を終え、報告書を取りまとめて、労災レセプトについてもオンライン化を進めていこうということになったのです。
各省庁には業務・システム最適化計画というものがあり、労災保険給付業務について平成18年に作成したものを平成23年に改定しました。この計画のもとで労災レセプト電算処理システムの開発も平成23年度から進めていく形になりました。その後、システムの開発を進めて平成25年9月から試験稼働を始め、平成26年1月に全国稼働がスタートし、平成26年2月診療分の請求から、電子レセプトによる請求が可能となりました。
なお、試験稼働については、本省との距離や労働局の規模を勘案して、群馬・東京・神奈川の3労働局管内において実施したところです。

現状の紙レセプトの請求における問題点は?

紙レセプトの場合にはいくつかデメリットがあるということは否めません。特に書き間違いや見落としなどのチェックは手作業になりますし、紙レセプトを郵送もしくは持参しなければならないためにタイムラグが生じるため、請求に時間がかかります。
持参する場合には受付窓口の時間的な制約があるうえ、郵送や持参する途上で紛失する危険性もあり得ます。また、誤送付することがあるかもしれません。これは、個人情報の漏えいにつながる非常に大きな問題になりかねないリスクです。
行政機関側でも手作業になるため、審査業務の中でも、例えばコピーを取ったりするなど、作業負荷の合理化に一定の制約があるのは否めないところでしょう。

実際に査定・返戻を受けた時の通知は、オンラインで詳細が分かるのでしょうか?
今後の普及の目標は?

オンライン請求をしていただくと、振込額決定の通知とともに、査定した増減点の情報が電子的に提供されることになるので、査定の中身についての分析が非常に楽になり、業務のクオリティーを上げることにもつながるかと思います。
これからの普及目標としては、健康保険の場合はすでに原則義務化されていますが、労災保険の場合はそうではないという違いがあります。医療機関など利用者の方々の利便性を考えて、健康保険で使用されている端末を使える形にしていることなどを考えると、労災レセプト電算処理システムの利用度や目標値は、健康保険の普及率というものを見据えて考える必要があるでしょう。ただ、一方で、それを超える目標設定というのは少し難しいかと思っています。
健康保険の電子レセプト普及率は平成25年12月現在、オンライン請求について7割(70.8%)という数字が出ています(レセプト件数割合)。そこで、この程度の普及率を平成29年3月までに達成したいと考えています。
平成26年2月請求分から全国稼働となっておりますが、1月14日からシステムが稼働しており、確認試験などが行える状況になっています。
オンライン請求の期間は毎月5日から10日までの間ですので、全国稼働としては2月5日から10日までの請求期間にデータを送信していただくのが最も早い請求分になります。また、平成25年6月診療分以降の請求が対象となります。

現状の紙レセプトと、今後の電子レセプトにおける受付、審査、支払いの事務の流れはどう変わりますか?

電子レセプトになっても医療機関の請求の流れは基本的に変わらず、一定の場合には、請求期間が延長されます。具体的なオンライン請求開始までの手続きは図表1をご参照ください。

図表1 オンライン請求開始までの手続き

毎月1日から4日まではシステムは停止しており、5日から月末までの期間、システムは稼働しているのですが、請求期間は5日から10日までになっています。その期間に請求してエラーになったものは、12日まで受け付けられるのがオンライン請求をする場合のメリットです。
つまり、本請求は10日までに行っていただく必要がありますが、エラーとなった修正分については、12日の21時までに送っていただければ、その月の請求分として受け付けられますので、迅速な支払につながるメリットがあります。
また、ヘルプデスクを設置しており5〜7日、11日、12日については8時から21時まで、8〜10日までは24時までお問い合わせを受け付けていますので、不明な点がありましたらお気軽にご利用ください。


ホームページ以外に何か各医療機関へ広報活動はされていますか?

厚生労働省からは日本医師会や各関係団体に協力要請を行っています。指定医療機関などには、振込通知書にリーフレットを同封して送っています。今年度中にはすべての労災指定医療機関に対して、オンラインの参加届出書を同封した利用勧奨文書を送る準備をしています。
各労働局からも労災レセプトの請求件数の多い医療機関を中心に個別訪問し、勧奨することにしています。労働局から職員が訪問した場合には、ぜひ前向きにご検討をお願いします。
厚生労働省と労働局では平成29年3月までを普及促進強化期間として設定し、集中的に利用勧奨することとしています。オンラインまたは電子媒体による請求をしていただくにあたっては、各医療機関で使用しているコンピューターシステムの改修が必要になります。そこで、各医療機関が必然的にシステムを改修する「診療報酬改定」の時期を捉え、当面は平成26年度と平成28年度にターゲットを置き、利用勧奨していきたいと考えています。
労災レセプト電算処理システムでは、先ほど申し上げた受付時間の延長などに加え、平成28年3月診療分までは3点の電子化加算をつけられるようにするなど、いろいろなメリット(図表2)をご用意していますので、少しでも早い導入を検討していただければと思います。

図表2 労災レセプト電算処理システムのメリット

システムの導入で医療機関側が特に気をつけたほうがいい点は何ですか?

労災レセプト電算処理システムを利用するには、基本的には労災保険指定医療機関等であり、健康保険についても電子化対応している環境があるということが必要です。健康保険で使用している端末を使って、労災レセプト電算処理システムを利用できる仕組みになっているためです(図表3)。
まず、労働局に届出書類を出していただくと、1〜2週間後に、ユーザーIDやパスワードが入ったユーザー設定情報が郵送で送られてきます。
そのユーザーID等を使って、今、健康保険でお使いの請求用パソコンにセットアップしていただき、レセプトコンピューターがうまくつながっているか、労災レセプト電算処理システムの記録条件仕様に沿ってデータがつくれるようになっているかなどについて、確認試験をしていただいたうえで、本請求に臨んでいただくという流れになります。
具体的には、ホームページにセットアップマニュアルを掲載しておりますし、必要な情報も公開していますので、それらを参考にしていただきたいと思います。
労災レセプト電算処理システムは、基本的には健康保険と同じような環境で使っていただけるように工夫しています。オンライン請求の場合、新たな送信用の設定が必要になりますが、健康保険と同じネットワークや電子認証を使うこととなっていますので、基本的に追加費用もかかりません。
ただし、労災保険には労災保険独自の請求方法や算定基準があります。電子レセプトの作成方法についても健康保険と違うところがありますので、データの規格や記録方式などを含めて、ホームページに公開している内容を確認していただきたいと思います。
また、療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号)やアフターケアなどについては、これまでどおり労働局に紙で提出していただく必要があります。

図表3 電子レセプトのオンライン請求と電子媒体請求等の流れ

査定、返戻は医療機関にどのように通知されますか?

医療機関への通知に関しては、オンライン請求になっても振込通知書は引き続き郵送でもお送りします。大まかな査定結果については振込通知書に書いてありますが、オンライン請求の場合はシステム上で詳細な査定結果、理由、支払額を確認でき、ダウンロードもできます。電子媒体の場合には増減点連絡書という形で、大まかな結果の郵送となりますので、オンライン請求のほうがメリットは大きいといえます。
また、本請求の前にオンラインでチェックすることができますので、精査をしていただいてから本請求ができるのは、オンライン化のメリットです。オンラインの場合には、随時チェックができますので、この点では、電子媒体よりもオンライン化していただいたほうが、メリットはかなり大きいといえます。

セキュリティは安全ですか?

先ほど申し上げたように、ネットワーク回線自体が社会保険診療報酬支払基金・国民保険中央会が運用しているものですので、セキュリティーは万全ですし、データのSSL暗号化も行っています。この点でもオンラインのほうが電子媒体よりもセキュリティー対策としてのメリットが大きいところです。電子媒体の場合は、その電子媒体を労働局に持ってきていただく、あるいは送っていただくことが必要になります。

オンラインシステムの導入にあたって、システム業者から提示される改修費用が高額だという病院側の意見もありますが、医療機関にはどのようなインセンティブがありますか?

オンライン請求に使うネットワーク回線については、健康保険について電子レセプト化しておられる場合は、その回線を使えますので、基本的にその部分の追加費用はかかりません。システム改修費用については、その病院の規模等によって変わってくると思います。保守契約の範囲内に入れてもらえるようなケースもあると聞いていますので、まずは各システム業者に確認していただければと思います。
また、労災レセプト電算処理システムでは、レセプト1件あたり3点の電子化加算を設けています。この電子化加算の3点は、薬剤費レセプトは対象外となりますが、初・再診、入院・外来でもすべて算定できます。これで全体の改修費用をカバーするのは難しいかもしれませんが、平成28年3月まで算定できますので、早く導入していただくほどメリットは大きくなります。
それ以外の導入メリットとして、「査定結果が詳細に分かる」「事前にデータ不備が機械チェックできる」など、人の手間もかからなくなり、さらに受付時間の延長やセキュリティ対策というメリットもあります。
先に健康保険がオンライン化されており、労災保険も同じような形で扱えるようになれば、事務的な手間が少なくなると考えられますので、そのような利点を多面的にお考えいただけたらありがたいと思っています。

公務災害の取り扱いは?

公務災害関係については、労災保険とは別の制度になり、主務官庁も異なります。

最後に医療機関に対するメッセージをお願いします。

試験稼働を行った時、参加医療機関から「紙レセプトの記載チェックや請求書の編綴作業といった紙を扱うことによって生じる作業がなくなったことが大きかった」「請求前に点検を行えるので事前に不備の項目を把握することができて本請求がより正確な形となった」「診療行為ごとの算定結果がすぐに分かり、査定分析がしやすい」という声が寄せられました。業務処理やセキュリティ上も、オンライン請求の場合は特にメリットが大きくなりますので、そこを勘案してぜひご検討いただきたいと思います。
労災レセプト電算処理システムが普及すれば、医療機関にとっては的確な診療費の請求や迅速な給付に結びつくと思いますし、行政機関としても業務の効率化と業務の質の向上が同時に図られることになります。ひいては労災保険財政に好影響を与えるかもしれません。国民負担も少なくなる可能性を考えると、これは進めていかなければいけないと思います。少しでも多くの皆さまにメリットを実感していただけるように努めますので、ご理解いただきたいと思います。

 

参考資料(PDF)のダウンロード

労災レセプト電算処理システムに関するよくあるご質問(FAQ)
印刷用PDFのダウンロード

 

参考資料

労災レセプト電算処理システムに関するよくあるご質問(FAQ) 厚生労働省ホームページより抜粋
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/rousai/rezeptsystem/

 

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